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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case1 真意無き自殺
5/676

#4

「来た」

この1週間、雪子はまるで子供がサンタのプレゼントを心待ちにしている時の気分であった。彼女が手にした封筒には見覚えのある猫のマーク、あの探偵事務所からである。雪子は中を開けて確認した。



 このたび黒猫探偵社にご相談いただきありがとうございます。このたび桜井様の依頼を社員全員で厳正に審査した結果。桜井様のご依頼を受けるという判断に至りました。したがいましてご指定の日時と場所で依頼についての細かい説明や依頼料に関するお話をしたいと思います。

日時 5月17日 日曜日 午後1時

場所 TOYOシネマ新宿内ロビー

*依頼料に付きましてその場にて提示しますので前もって依頼者がご持参する必要はございません。                                          黒猫探偵社

 以上のことが記されていた。最初から何か変なところがあると思っていたが、会って説明する場所が多くの人で賑わう映画館とはまた趣向の分からない事務所である。この猫のマークといい、いったいどんな連中なのだろう。彼女は待ち合わせ日の17日は明後日であることを確認しその手紙をそっと自分の机の中に入れカギを掛けた。










 警視庁。多くの人は勘違いしていると思うが警視庁は警察官の中で優秀な人材が務める場所と思っているが、実際は県警と同じそれぞれの都道府県をまとめる機関のひとつに過ぎないのである。しかし、『首都東京の治安を守る』という名目のため他の県警と階級の差やエリート警官というイメージが生じてくるのである。勿論、他の県警から出世という形で優秀な警官を引き抜くこともよくある。

「いやいや、わざわざ遠い所からありがとうね。えっと前田君は以前、沖縄だったね」

「はい、そうです」

「あっちは大変だろう。暑いし、台風も多いし」

「そうですね。最近は国の基地問題のあおりでそれに伴う活動家が活発でそれに伴うデモや抗議が多くて大変でした」

 警視庁の廊下を2人の警官が歩きながら会話している。1人は長年警視庁に勤めている中年の男性。もう1人はまだ20代後半で話を聞く限り地方の県警から引き抜きで警視庁に配属になったらしく、若干浮足立っているように見える。

「あの、僕が入るその・・・」

「ああ、ゴメン。まだ、説明してなかったね。君は今日からこの捜査本部に所属することになってるよ」

 説明していた先輩刑事が前田に読んでいた書類を手渡した。

「復讐探偵関連事件対策本部・・・これってあの噂になっているやつですよね?」

「さすが若者は情報に敏感だね。つい先月立ち上がったばかりの捜査本部だから人材不足で困ってたらしく、君のような優秀な若手刑事が必要ということだ」

 先輩刑事と前田は書類を見ながら目的の捜査本部に向かっている。

「あの・・・・」

「さあ、前田君着いたぞ。後の詳しいことは捜査本部主任に聞いてくれ、それじゃあ、私は」

「はい、ありがとうございます」

 前田は先輩刑事に一礼をして『復讐探偵関連事件捜査本部』の前に立ちノックした。すると扉すぐに開き中から1人の男性が現れた。

「君が前田巡査部長かい。待ってましたよ」

 捜査本部は4つの椅子と机が並んでおり他の刑事達がそれぞれの職務をこなしていた。奥には主任刑事の大きな椅子がありそこで主任刑事と思わしき人物が座っていた。

「主任、前田刑事が到着しました」

 呼ばれると主任は見ていたファイルを手放し前田刑事をじっと見ていた。

「このたび、沖縄県警から参りましたまえ・・・」

前田真治まえだしんじ巡査部長。年は27、独身、家族構成は父と母に妹が1人、沖縄県警では卓越した情報収集と捜査力で多くの事件を解決、射撃は沖縄県警内でもトップ、柔剣道もトップ、なかなか優秀じゃないか」

 彼が言う前にこの主任刑事が全部言いたい事をいってしまい、何もしゃべれなかった。

「私はこの捜査本部の主任の新島麻衣にいじままいだ。前田、君の加入を歓迎する。さっそくだが仕事に取り掛かってくれ」

『女?』彼は捜査本部主任が女性刑事であるの少し面喰ってしまった。

「あの、ちょっといいですか?」

「何だ、私も独身だが残念だがお前は私のタイプじゃないし、好意は芽生えていないぞ」

 何を言ってるのかと前田は思ってしまったのか、若干顔が赤くなってしまった。

「違いますよ。この書類に書かれている人数何ですけど?5人って言うのは俺を含めてじゃないですよね?」

「そうだ、お前を含めて5人だ。なんせ先月出来たばかりの捜査本部でなかなか良い人材を回してくれないのだよ。おまけに上の年寄り連中のにはうちの捜査本部のことを良く思ってない連中も多い、いつ解散になってもおかしくない部署だよ。まあ、君を含めた4人は私が直接選んで引き抜いている訳だ」

「そう・・なんですか」

 前田はまるで自分が左遷された気分に感じた。

「すまないな、心配させて。上の連中はこんな都市伝説みたいな話で捜査本部が出来たことが納得できないんだよ。だが、安心したまえ、うちは警察庁直々に設置が決まった部署だからな」

「警察庁がですか。何でまた?」

 前田は新島刑事から出た言葉に驚かされた。警察庁は日本の警察組織を束ねる組織で時には警察庁から警視庁の出向してくる連中もいるが優秀な人材が多いのは確かだ。

「まあ、そのへんはいずれ説明するとして。お前の良き仲間となる者達を紹介しよう。全員、起立!!」

 その言葉に全員が作業を辞めて起立した

「まず、君を出迎えてくれたそのメガネくんが八嶋警部補だ。次に私の右前にいるのが体力バカの権藤巡査部長。彼は君と同期の人間らしい仲良く出来そうじゃないか?」

 そう言われると八嶋刑事が改めて名乗り俺と握手をした。権藤巡査部長は何ですかと?笑いながら言っていた。

「最後に君が座る席の前にいる不愛想な女子が羽賀警部補だ。これで全員だ」

 新島刑事の言葉通り羽賀警部補は顔色1つ変えず頭を下げて再び自分の作業に入った。

「ちなみに八嶋と私は同じ警察庁。権藤は広島県警、羽賀は神奈川県警だから。前田は完全な田舎者刑事になるな」

 ちょっとこの発言にはモノ申したかったが、そんな暇が無かった。

「さっそくだが、お前にも復讐探偵を捕まえるべく力を貸してもらうぞ」

 今までの和やかムードから新島刑事の目が締っていた。

「それなんですが・・・」

「そうか、お前は沖縄だからあんまり詳しくないのか。おい、八嶋説明してやれ」

「はい、じゃあ。前田刑事こっち」

「はい」

 新島刑事に命令された八嶋刑事は彼を自分の椅子の場所に連れて行く。ちなみに八嶋刑事の椅子は彼の椅子のすぐ隣だった。八嶋刑事は着くと棚の中にある1つファイルを彼に差し出した。

「まず、これを見てごらん」

前田刑事は指示されるままに中を見た。そこには多くの人の顔写真と説明文が書かれていた。

「これは?」

「これは復讐探偵が今まで始末した連中のデータだ。何か気付くとこはあるかい?」

 前田刑事はファイルを見ながら八嶋刑事の言いたいことがすぐに分かったここに載っている連中は全員何かしら罪を犯している。殺人、窃盗、中にはかなり大犯罪を犯している連中ばかりだ

「犯罪者ばかりじゃないですか」

「そう、彼らは僕らが逮捕できなった奴らを始末してるんだよ。僕らに取ってはいい気分はしないよね。でも、これが全員じゃないんだ。中には僕らの捜査の対象になっていない奴まで始末している例もある。今はその被害者の身元や事件内容を僕ら全員で調べているいう最中だよ」

 前田刑事は恐る恐る聞いてみた。

「この復讐探偵って去年からですよね。いったい今までどれくらい人を奴らが殺してるんですか」

 八嶋刑事は冷静に見えるが目の奥は非常に恐ろしい。

「詳しくは分からないけど40人は殺されてるね」

 1年間に40人!!彼は自分が配属されたところがとんでもなく恐ろしい場所だと改めて実感した。そしてこの復讐探偵がただの探偵でないことも。





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