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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case10 姿なき依頼者
402/676

#72

「なるほど・・・・突然、宇佐美が金曜日の午後に予定が埋まった訳なのね」

 悠は一昨日に突然、宇佐美から「金曜日の午後は予定を入れないでくれ」と指示していたのである。悠はその予定の詳しい内容を聞こうとしたが、それに対しては宇佐美は何も答えなかった。

「それにしても人体部門の石上って男は相当なクズなようね。実力で勝てる自信が無いから汚い手を価値にいく・・・典型的な悪役のやり方ね」

 悠も圭と同様に石上のやり方に対して呆れている様子であった。

「一応、井上の方は説得して薬品のすり替えによる妨害を止めるようにしたけど、どうなるかは・・・」

「そう・・・」

 圭の発言から最終的な結果は井上本人に委ねられたという事を悠は読み取った。

「言うのか?」

「何を?」

「この事を透に報告するのか?」

 圭は聞くのは無駄だと分かっていながら悠に対してこの話を透に教えるのかと聞いた。

「当たり前でしょう?」

「俺がした事もそのまま話すのか?」

「さあ・・・どうかしら?」

 悠は圭の問いに対して薄っすらと笑みを浮かべて意味深な発言をして誤魔化そうとした。

「頼む。今回だけは見逃してくれ。昨日の今日でこんな大事を起こしたなんて透に知れたら俺が本当にクビにされかねない」

「確かにね。透が冗談で脅すような事をする人間ではないわ。正直に言って今回の依頼を解決するのに九十九君が居なくなってしまうのはかなり痛手になるわ」

 悠は透が冗談でクビにするというような発言をする人間ではないという事はよく知っていると告げ、さらに今回の依頼において圭が居なくなってしまうのは具合が悪いと思っていると答えた。

「じゃあ・・・・」

「今回だけは見逃してあげる」

「恩に着るよ」

 圭は悠が今回だけは見逃すと答えた事に対して素直に感謝している伝えた。

「ただし、1つだけ条件があるわ」

 悠は今回見逃す条件を1つあげた。

「な・・・・何だよ?」

「それは・・・・」






「ホラよ、ご指名の物を購入してきたぜ」

「遅かったわね。まあ、頼んだ物をちゃんと買ってきたから良しとしましょう」

 悠が圭に出した条件は彼女の指定した物を買ってくるという物だった。簡単に言えばパシリである。悠が指定したこの街にある人気のスイーツ店のお菓子であった。その量は1人の女性が1日で食べる量にしては多過ぎである。

「お前・・・・まさか、これを今日1日で食べるつもりじゃないだろうな?」

「バカ言わないで、今日食べるのはせいぜい生菓子くらいよ日持ちする物は後回しで十分よ」

 悠は今日食べるのは日持ちしない生菓子だけで、日持ちするお菓子は後で食べれば良いと答えた。

「それでも多いと思うけど?」

「貴方は食べないの?」

「良いのか?」

「使いパシリをしてくれたお礼よ」

 悠は圭が自身の使いパシリに答えてくれたお礼としてこのお菓子を食べても構わないと答えた。

「やっぱり、パシリをさせるのが目的だったのか」

「文句があるなら食べなくて良いわよ」

「1つだけもらう」

「どうぞ」

 圭は1つだけもらうと答えた。その後、悠が紅茶と日本茶を入れて2人で夜のティータイムを楽しんでいた。

「お前は本当に甘い物が好きなんだ」

 美味しそうにお菓子を食べる悠に対して圭が声をかけた。

「頭を使う職業に就いてる人間は糖分を接種する事は重要な事よ」

「なら、そんなお菓子じゃなくてバナナとか果物で良いんじゃないか?」

 圭は糖分を接種するならこんなお菓子ではなく、果物でも良いのではないかと告げた。

「確かにそうね。でも、これにはもう1つの重要な意味があるのよ」

「もう1つの重要な意味?」

「日頃のご褒美よ」

 悠はお菓子を食べるもう1つの意味は日頃のご褒美という意味も込められていると答えた。

「ご褒美ね・・・・」

「貴方にもそういうご褒美が欲しいと思う時があるでしょう九十九君?」

「それは否定しないけど・・・・とはいえ、お前を見てると羨ましいよ。それだけ食べてもそのままだからな」

 圭は悠が誰でもご褒美を欲しいと思う事があるだろうと告げた事に対してそれは否定しないと答えた。その一方でこれだけ食べてもまったく太らない悠の事を羨ましいと思っていると告げた。

「若いからね」

「理由になってないぞ」













「本当に世の中には色々な大人が居るものね。とはいえ、その男がやろうとしている事は研究者として失格の行為なのは間違いないわね」

 悠は透に圭と井上のやり取りを報告した。勿論、この情報を聞きだすにあたって圭が井上を怒らせたという事は彼女に話さなかった。

「ええ・・・彼らや二宮先生がやっている事は決して許される行為では無いわ。ただ、それ以上に石上がしようとしていた行為は許される物ではないわ。だけど、九十九君が説得してその部下に悪事に染めないようにしたみたいだけど」

「そう・・・・でも、少し引っかかるわね」

 透は悠の話を聞きながら少し引っかかる事があると告げた。

「何が引っかかるの?」

「圭がその話を運良くたまたま聞けたって所よ。それと、彼の言葉に素直に相手の井上って研究員が答えた事よ」

 透は井上がその悪事に手を染めようとしていた事をたまたま発見し、圭の言葉に井上が素直に従い、悪事から手を引いたという話がどうしても信じられないようであった。

「彼の事だから井上って人を怒らせて一悶着あったのかと思ったのだけど?」

「私も最初はそう思ったけど、昨日貴方に言われた事が相当堪えているみたいよ」

 悠は自身も最初に聞いた時は半信半疑だったが、圭が透に昨日言われた事をかなり気にしていたと告げた。

「圭も学習するって事は出来るのね」

「流石に昨日怒られた事をまたする程彼は愚かではないわ」

「そうよね・・・・もし、同じ事をしていたら本当にクビにして東京に連れて帰っていたわ」

 やはり透は本気で彼が約束を守らなかったクビにするつもりであったようである。

「私としてもあんな彼でも居なくなったら色々と大変になるから助かったわ」

次回の投稿は5月7日を予定しています。

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