表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case2 動物は家族
31/676

#5

「これが動物病院ね・・・・」

 黒猫探偵社の3人が訪れていたのは今回の潜入取材捜査のターゲット井領動物病院である。この病院があるのは東京港区の白金台。白金台は東京都心では有名な高級住宅街でありながらも庶民的な雰囲気も兼ね備えた地域であり最近人気も高まっている。

「外観だけ見ると動物病院と言うよりは個人の富裕層向けのマンションって感じね」

 圭と悠がそれぞれ井領動物病院を見ての素直な感想を述べていた。この動物病院の外壁はレンガ造りでさらに3階建てであり、病院名の文字も金色という趣味の悪さ。普通はこんな見た目の動物病院はおろか病院すら見たことない。

「2人ともいつまで眺めてるの?時間が勿体ないわよ?」

 そう言って透が病院のドアの前にあるインターホンを押した。3人が訪れた木曜日は大抵の病院が休みになるのが多い日である。井領動物病院も今日はドアの向こう側にカーテンが掛かっている。

「こんにちは、毎朝出版ものです」

「すいません、先生はまだ往診から帰っていなようでして。中で待たれますか」

「ありがとうございます」

 透がお礼を言った後ドアが開き中から1人の女性獣医が現れた。

「どうぞ」

 3人は彼女に言われ病院の中に入って行く。

「先生はもうすぐ帰ってくると思いますので、ここでお待ちください」

 3人が案内されたのは待合室であった。動物病院なのか普通の病院に比べて広く感じた。

「失礼ですが、貴方は?」

 透が自分達を案内した女性に質問する。

「私はこの病院の獣医 狩野かのう恵梨香えりかと言います」

「この病院に勤めて何年になりますか?」

「今年の春で2年になります」

「貴方は井領先生についてどう見てますか?」

 次に質問した悠は先ほどの透と違って少し棘のある質問である。

「えっ・・・・?それは良い先生だと思います。診断に来るペットの家族の評判も良いですし。なにせ先生は動物好きですから」

 狩野の答えに若干詰まりがあるのを圭は見逃さなかった。

「それは本心ですか?」

「どういう事ですか?」

「先程の貴方の回答だと普通はすぐに出てもおかしくない答えだが、彼女が質問した時に少し変な間が空いてしまったこれがどうしても僕は気になって?本当は・・・・」

 さらに圭が続けようとしたが透が止めた。

「すいません。彼の悪い癖で・・・」

「いいえ、先生が戻ってきたらお知らせします」

 そう言って彼女は診察室の方に戻って行った。彼女が診察室に戻ったのを確認して透は圭の質問を止めるために圭の左下腹部を抓っていたがそれを放した。

「透。何の真似だよ?」

「それは私のセリフよ。彼女にあんな質問するなんて、自分の立場分かってるの?」

「分かってるよ。だからって抓ることないだろう。クソ、痛かった」

「その痛さで済んだけ良かったと思いなさい。まったく先が思いやられるわ」

「だから私は九十九君を連れてくることに反対したのよ」

「何だよ。お前ら」

「それと、今の私の名前は筧恵美かけいえみ、悠は東春子ひがしはるこ。そして貴方は・・・」

「和泉康太」

「間違っても透とか悠と言わないようにね」

「分かってるって。昨日からその話は何10回聞いたと思ってるんだ」

「分かってるようだったら。こんなこと言わないわよ」

「筧さん。病院の中は静かに」

 透と圭の間に悠が割り込んだ。

「ごめんなさい」

「怒られてやんの」

 小声で圭は言ったがそれを透が聞き逃すはずもなく怒りのエルボを圭の脇腹に決める。

「ガハ」

 そのまま圭は誰も座っていない右側のソファーに倒れ込む。

「次にそんな態度を取ったら本気で殺すわよ」

 圭を睨むように透が言った。そんなやり取りの後外から車の音がして病院に近づいて来るのが聞こえた。

「戻ってきたのかしら?」

 透が悠に聞く。

「病院が休みなのに車が近づいてくると考えるとそれしか無いわね。タクシーにしては音が騒がしいし」

「外車かなにかのオープンタイプの高級車だろうな」

 ソファーに倒れ込んでいる圭が音を聞いただけで車の種類を当てようとしていた。

「音を聞いただけでそこまで予想するなんて。流石は機械オタクの九十九君ね」

「別にオタクじゃねえよ」

「お待たせしました。先生が戻ったみたいです。すぐに取材を準備をします」

 狩野は3人に告げてまた診察室に戻った。それから数分経った後診察室のドアが開き。狩野が3人を診察室に招き入れる。

 3人は診察室の奥にある院長室に招かれていた。そこには既に井領が椅子に座っており、その前には3人用の椅子が置いてあった。

「このたびは取材にご協力いただきありがとうございます。私は毎朝出版記者筧恵美です」

「こちらこそ、お忙し中お越しいただきありがとうございます。先程は私の往診が遅くなってすいませんでした」

 井領は悠達に頭を下げた。往診から帰ってそのまま席に着いたのか上に白衣を羽織っておらず、シャツにネクタイという格好であった。

「随分、熱心なんですね。今日は木曜日ですし、本来であれば病院は休みのはずですけど」

 悠が井領に問いかける。

「まあ、呼ばれれば行くのが私共の仕事ですし。本来病院というのは休めない仕事ですから」

 まさに優秀な医者が答えそうな模範解答である。

「それに、私は動物が好きなんです。だからこうやって獣医という仕事に携わっているというのは私にとっては非常に幸せです」

 獣医という仕事をしている人であれば言いそうな答えだがこんな人気抜群の獣医が答えればそれは人気も出る訳である。

「この動物病院は有名会社の人だけでなく芸能人や政治家なんかも通い詰めているらしいですがそれについては先生自身どう思っていますか」

「私の評判や腕を聞いてそんなすごい方が来ていただいのは非常に光栄です。しかし、そのせいでうちの病院は金持ちや有名人以外はお断りの病院なんていう風に世間の人に捉えられてるのは残念です。私としては多くの動物を飼ってる人の助けになりたいんです。家族としてはペットは家族の一員として当然ですから」

「本当に素晴らしい意見ですね」

「あの1つ良いですか?」

 圭が井領に質問する。

「何でしょうか?」

「来週の土曜日の予定は・・・ボランティア講演ですか?」

「そうです。毎月1度はこういった講演会や講習に参加するようにしているんです」

「人気者は辛いっすね」

「いえいえ」

「へえー、先週はゴルフだったんですか?」

「良く見えますね」

 井領の右上の壁に掛けられている予定表には1カ月のスケジュールが記されている。圭達のいる場所からだと普通は何か書いてあるか程度しか普通は見えない距離である。

「仕事柄目は良い方なんで」

「獣医学会の人達の付き合いですよ。こういった関係の構築は我々の業界に取って必要なことなんですよ。特に私みたいな若い医者は大変でして」

「まあ、よく政治家なんかもゴルフ場を利用して大事な話をするってのを聞いたことがありますし、先生もそういった輩には注意しないとね。というよりは自分がその話の中心になってるんじゃあ・・・」

 圭の余計な話を続けられる前に透は彼の足を踏んで止めた。

「すいません。彼が失礼なことを言って」

「いいえ、大丈夫ですよ」

 圭の失礼な態度にも井領は表情を崩すこと無かった。

「実は今回の取材ではもう1つ聞きたいことがあります。実は最近動物の違法販売している業者又は個人のいるみたいな何です」

「知ら無かった。そんな人が居るんですか」

「ええ、残念ながら噂はあります。中には条約禁止されてる動物まで売り買いされている情報もあります。恐らく余程強力な組織が大本に居ると思います。ですが、この違法取引には普通の犬や猫も含まれています」

 透の話の後今までずっと黙っていた悠が話だした。

「私の予想では犬や猫といった小動物は恐らく組織以外の別の人間が手に入れてると思います。そして、それが行える人間はペットショップ店員、獣医、ブリーダーといった人材が候補に上がります。彼らなら動物と触れ合える機会は多いですし」

「それが私一体どいう関係が?」

「先生でしたら、どういう方法で患者からペットを奪いますか」

「何を言っているんだ・・・・君は」

 悠の発言に驚いた井領、それは横で離れた位置から聞いていた狩野も同じだった。

「ですから、私は今回の事件の犯人の可能性がある人間と同じ仕事の井領先生に同業者として意見を聞きたいです」

「何故それが私なんですか?」

 今度は圭が井領に話しかける。

「別に僕らは先生が犯人だとは考えてません。ただ、先生の病院は有名人や政治家など多くの富裕層がいらっしゃている病院ですから。もし、犯人だったらこんな病院は良い見世物小屋になっていますよ」

「何を・・・・」

「恐らく犯人ならこの病院はの動物を何らかの方法で家族とペットを放した後に買い手側に売っていると思いますが、先生の意見はどうですか?」

「・・・・もう、良いですか」

 圭の問いに答える訳も無く井領は立ち上がった。

「君達の言ってる事はもしかしたら本当に行わている行為ならそれは断じて許される行為ではない。僕には彼らの考えていることは分から無いし、そんな事をやろうと思わないし、考えるだけで気分が悪い。それに君はまるで私を犯人と思っているのではないかな?」

「・・・・・・・」

 悠は何も言わなかった。彼の意見を否定すればその場を丸く収めることが出来るがしなかった。悠としては井領が怪しいという自信があるのか。

「すいません。彼女は私から厳しく言い聞かせておきますから」

 悠が取りなさないから透が代わりに行った。

「こちらこそ、いきなり取り乱して。申し訳ない」

 井領は椅子に座って3人に頭を下げた。

「取材はここまでです。お付き合いいただきありがとうございます」

「いえ、こちらこそ。狩野君、3人を玄関まで見送ってくれたまえ」

「はい、先生」

「ほら、帰るわよ2人とも」

 透に促されて悠と圭は立ち上がった。2人は透に付いて診察室を出て行くが圭だけは井領の方をずっと見ていた。

次回の投稿は11月18日を予定しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ