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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case1 真意無き自殺
2/667

#1

「ハァ、ハァ、ハァ」

「これに書けば・・・」

 部屋の明かりを付けず自分の机にあるスタンド電気を付けただけの暗い部屋の中で1人の女学生が封筒を開け中から何かを取りだそうとしていた。その中にはまたひとつ封筒が入っていた。しかし、その封筒は先ほどのどこにでもある封筒と違い黒一色で表には『黒猫探偵社』という名前と猫のマークがはいっている。中を開くと同じ黒い紙が2種類入っていた。1つは大学ノートのような書体の紙が上部に依頼作成書と書いてある。もう1つは長々と文章が書いてある。おそらく説明書のようだ。

「お姉ちゃん・・・」

 彼女はここの至るまでの経緯を思い出していた。



 彼女の名前は桜井雪子。都内の高校、修學高校に通う2年生である。修學高校は創立100年を超える都内でも歴史ある高校として名前が知れている。雪子はミステリー研究会に所属している。名前の通り幽霊や心霊現象などの現実で不可解なことについて調べる部活である。そんなこともあって一部生徒からオカルト同好会何て呼ばれている。勿論、彼女はそんなこと気にしていない。そんなことより彼女が気にしているのは自分の家族のことである。雪子の家族はみんな死んだような目をしている。朝起きても誰も目も合わせないし、挨拶もしない。父と母も会話どころかお互い目を合わせようともしない。雪子が寝ている時も父と母はいつも喧嘩している。父が仕事ばかりで家の事は何もしてくれないとか、雪子が姉に比べて成績が悪いとか。そう言うと母は必ず「春海のことは関係ないでしょう。もう、いないのよ。あなたはいつまで春海のことばっかりなの」と言い大喧嘩になる。


桜井春海。『お姉ちゃんは私より2つ上で同じ学園に通っていた。お姉ちゃんは学業優秀の生徒会長で誰からも慕われていた。将来は弁護士になることを目指しており、一流大学の進学を目指して勉強していた。そんな姉の事を私や家族は非常に愛しており姉の大学受験を家族みんなで期待していた。まさに我が家の宝だった。しかし、そんな姉はもういない』

 去年の9月。姉はいきなり行方不明になった。学校を出た後いつも通っている塾に来ておらず不審に思った塾の職員が母に電話したが帰っておらず深夜になっても帰ってこなかった為すぐに学校と警察に連絡した。懸命の捜査の末に翌日の正午に学校の最寄り駅の雑居ビルの屋上から姉の鞄と靴が発見された。その下の路地から姉の死体も発見された。警察は姉の死因や鞄の中から遺書が発見されたことから自殺と断定した。

「お姉ちゃんが自殺、そんなウソよ」

 雪子を含めた家族全員がそう思った。家族全員が深い絶望と悲しみを感じた。さらにその後姉の遺書を読んでさらにその思いが深まった。『苦しいよ、もう、ダメ・・・耐えられない。父さん、母さん、雪子、ごめんなさい』姉の自殺は私達家族が掛けていた期待が重荷になっていたと分かった時彼女達は自分達の罪の念、そして姉が居なくなったということで心に穴が開いてしまい、桜井家は完全に壊れてしまった。

 しかし、雪子自身は姉の自殺が信じられなかった。姉は成績優秀で友人関係も良好だった。中には姉が優等生なことを嫉んでいた生徒もいたが彼ら自身も姉の死に非常に驚いていた。それに遺書にも不可解な点があった姉はかなりの機械音痴でパソコンに至っては説明書を読んでも電源が付けられない程である。そんな姉がどうやって1人でワープロを使って遺書を書けるというのだろうか?家にはパソコンは雪子が持っているノートパソコンしかない?でも、姉はそのノートパソコンには絶対に触らないし、触った形跡も無かった。この事を警察に話した。しかし、警察は自殺する数日前に姉の友人と一緒に学校のコンピューター室に入っていく様子を他の生徒が目撃している。実際、姉と一緒にコンピューター室に行った友人にも同様の証言が取れた。雪子の中で思っていた疑問も見事に論破され私はいつしか姉の自殺を受けいれて生活するようになっていた。








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