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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case6 いたずらの範疇
178/676

#2

 依頼者が帰った後に4人は今後の捜査方法についての会議を行った。咲の調べによって今回の捜査対象となる学校の名前が判明した。『西風学園』東京都内にある中高一貫校である。歴史はそこまで古くは無いが、全校生徒は1200と都内でもトップ3に入る生徒数である。都内に住んでいる人間でこの学校名前を知ら無い者はいなく、名前を聞いた4人は少し驚いた。

「西風とは意外な場所だな。相当陰湿ないじめが行われてるから頭の悪い私立高校か賢くない公立の高校かと思ったけどな」

「そういう言い方は失礼よ。忘れたの?私達の学校も私立の一貫校だったけど、いじめとかあったでしょう?」

 圭の言った言葉に対して透が自分達の通っていた学校の事を思い出させていた。悠、圭、透の3人は同じ私立の一貫校の出身である。学力的には高い方では無かった、毎年東大や早稲田、慶応に合格する生徒が数名居るなど都内でも有名な高校だ。そんな学校で大なり小なりいじめは目撃されていた。

「それに九十九圭という学校の歴史に残る問題児もいたものね」

「それは俺の事を言ってるのか?」

「想像にお任せするわ」

 悠の言葉に対して少し圭がムッとした表情をして睨むが、悠はそんな事をまったく気にしていない様子で笑みを浮かべながら答えた。

「それで今回はどうする?また、俺が警備員さんにでもなって学校の中に入るのか?」

「いや・・・今回はその方法だと生徒と距離が離れ過ぎているわ。それだと生徒の中に深く入り込んで情報を手に入れることが出来ないわ。あまり警備員が生徒と近づき過ぎても学校に不信感を持たれるからね」

 透としては以前の依頼の際に取った圭を警備員として学校内に侵入させる方法は今回の場合は不向きであると考えた。前回と違い今回は生徒の声が大きな証拠となる可能性が大きい。しかし、警備員という立場だとその証言を引き出すのに限界がある。

「今回は生徒との距離が離れてなく且つ生徒に寄り添える立場の人間でないと難しいわ」

「簡単に言うなよ。いくら何でも先生は無理だしな・・・保健室の先生ってのも無理があるしな」

「九十九君には1番似合わない職場よね。彼に手当てさせられる生徒は気の毒でしかないわね」

「悪かったな。俺に手当ての才能がなく・・・」

 圭は悠の揶揄いに対して軽く受け流した。

「俺の場合は保健室の先生でも生徒の相談を聞く方が得意だからな」

「それって本来保健室の先生がやる事じゃないと思うけど・・・」

 咲が圭のセリフに対してすぐさま突っ込んだ。

「相談を聞く・・・カウンセラー」

 圭の言った相談という言葉に透は何かひらめいたようだ。

「透ちゃん?」

「何か良い案が思いついたようね」

「ええ・・・ただ、今回は1人協力者が必要になるわ」

 透が言う協力者がどのような人物か圭はこの時は分かっていなかった。












「なるほどね・・・・それで私に協力ね」

 2時間後、事務所にある人物が訪れていた。ウェーブを利かした亜麻色のロングヘア―の女性はゆったりとソファーに座って悠達の話を聞いていた。その手には紅茶の入ったカップを持っていた。彼女の名前は春。黒猫探偵社の協力者でカウンセラーの仕事を行っている。

「貴方の本職なら丁度良いし、圭の捜査にも大きく役立てるでしょうしね」

「それに九十九君がバカしないようにする為のお目付け役になるしね」

「うるせぇな・・・俺がいつバカな事しでかしてるんだ?」

「毎回の事でしょう?それで私や悠にどれだけ気苦労掛けてるか分かってるのかしら?」

 圭は悠の言った言葉に対して否定する発言したが、透が圭の行動でどれだけ自分達が苦労をしているか圭に言い返した。

「まあ、私としても良い勉強になるでしょうし・・・それに九十九圭のお目付け役として行けば彼の色々な面が拝められるでしょうからね?」

 そう言って春は圭の方をじっと見つめていた。圭はその視線に耐えられなくなってすぐに春から目をそらす。

「ウフフ・・・・相変わらずの照れ屋さんね」

 春の様子を見て他の3人はヤレヤレというような表情をしていた。

「じゃあ、九十九圭の使い方は私の自由にして良いのよね?」

「ええ・・・どんなに扱使っても構わないわ。いっそのことそのまま貴方の部下にしても良いわ」

「それはお断りかな・・・・」

「かわいそうね九十九君。貴方はどこに行っても役立たずというイメージみたいね」

「悠・・・お前な」

 圭は自分の事を散々罵倒している悠に対して短く怒りを出すような言葉をぶつけた。

「じゃあ、後は私の方で手続きを進めておくわね。日時が決まったら貴方の方に連絡すれば良いかしら?」

 春は手続きが終了したらその旨を透に連絡して良いか尋ねた。

「ええ・・・お願い」

「じゃあ、3日以内には連絡すると思うから。咲ちゃんまたね」

「またね春ちゃん」

 春は最後に咲に手を振って挨拶をして事務所を後にした。

「圭は好かれてるのね春に」

 透は疲れた表情をしている圭に対して尋ねる。

「別に好きで好かれてる訳じゃねえよ」

 圭は嫌そうに答える。

「でも、何で春ちゃんてあそこまで圭ちゃんに固執してるんだろうね」

「彼を見ていて面白いからでしょう。九十九君みたいな人間はなかなかお目にかかれないものね」

「それはどういう意味で言ってんのか?」

「貴方のご想像に任せるわ」

 圭の質問に対して悠は軽く受け流した。

「今は春の返事を待ちましょう。いつものようにキツイ問いは絶対にしないようにね。特に今回は相手が高校生なのだから問題を起こすと何かと面倒なのは貴方もよく分かってるしょう?」

「分かってるよ」

 透が言っているのは前に彼らが扱った修學高校の依頼である。この依頼は自殺した姉の真実を暴いて欲しいという物であり。その際に圭は鳴海和なるみかずと共にこの学園の警備員として潜入し依頼の解決に当たったが、少しばかり派手な行動をしたためにこの学校の理事長から目を付けられてしまった。そういった面倒事は圭自身もこりごりだと思っており、今回はそういった行動はなるべく控えようと思っている。

「それと態度の悪い生徒がいても絶対に手を出さないこと。どんな理由があっても手を出したら圭の負けよ、分かってるわね」

「そんな事言われなくても分かってるよ。お前は俺の事をバカにしてるのか?」

「私だってこんな事言いたくないわよ。でも、貴方の場合は口頭で注意しないと何をしでかすか分かった物じゃないでしょう。本音を言うと口で注意したからといって圭の場合は変化があるとは限らないけどね」

 透の言葉に圭は返す言葉が無かった。正直に言えば彼女の言っている事は当たり前の事であり、圭自身も分かっている事である。しかし、分かっていながらもその過ちをしてしまい透達に心配を掛けてしまっている事が彼にとっては大きな悔いとして残っている。

「そこまでにしてあげましょう。これ以上言うと九十九君が泣いちゃうでしょう」

 ここで悠が透にこれ以上言うと圭に堪えてしまうのでこの辺で止めるよう促した。

「分かった。まあ、兎に角気負付けるように」

「ああ・・・」

 圭の返事を聞いて透は自分の椅子に戻りそれまでにしていた自分の作業に戻った。


次回の投稿は10月3日を予定しています

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