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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
 
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3人だけのお楽しみ

 黒猫探偵社では料理は圭が担当している。それは圭が1番作るのが上手いというのがある。ちなみに悠も作ることは可能なのだが面倒だと言って圭に任せきりにしている。その為、圭が居ない時のお昼ご飯は彼女達にとって悩みの時間になるはずだが・・・・

「今日は何食べる?」

 午後12になり咲はニコニコしながら透に尋ねた。

「悠は何かご希望は?」

 圭の居ない時の昼食はいつも出前を取っていた。彼女達が出前を取る理由は簡単で外に出るという手間が省けるというのが1番の理由である。他の理由は圭が作らないような料理が食べられるというのもある。圭が作る料理はどれも絶品ではあるが、よくあるような家庭的な料理だけでどうしてもマンネリが生まれてしまう。

「昨日はそばだったから・・・洋食が良いわね」

 悠の言葉を聞くと咲は自分の机の中にある洋食を出す出前の店のメニュー表を取り出した。

「王道のピザから変わり種のインド料理まで色々あるよ」

「今の時代色々あるのね・・・」

 透は沢山の店のメニューを見せた事にこんなに多くの店が存在しているのかという事に驚いていた。

「インド料理なんて面白そうね・・・・」

 悠はインド料理に惹かれていた。

「カレーなんて圭に作ってもらえば良いじゃない?」

 透は悠がインド料理を選んでいる事に少し否定的だった。

「何言ってるの?日本のカレーと本場のカレーは全然違うのよ。たまには本場の味を体験したいと思わないの?」

「でも、本格的なカレーなら圭ちゃんだって作れるんじゃないの?」

「バカね。たとえ九十九君が料理の腕が一流とはいえナンまでは自家製で作れないでしょう?こういうのは本物の食べるのが1番なのよ」

「それは言えてるわね・・・・」

 透は悠の理由を聞いて少しばかり納得しかけている。

「ちなみに透ちゃんは何がご希望なの?」

「私はこれ」

「ハンバーガー?」

 悠は咲に見せたのはハンバーガー専門店のチラシである。勿論、日本中どこにでもあるチェーン店の物ではなく自家製で作っている店の物である。

「なんか美味しそうなじゃない。ほら、この絵・・・食欲をそそられるでしょう?」

 悠にもチラシを見せて意見を尋ねた。

「悪くは無いわね・・・ただ・・・私としてはどうしてもカレーは譲れないわ」

「随分と強情ね」

 悠は透の意見には賛成をしつつもカレーが食べたという意見は変わらないようだ。一方の透も退くつもりはさらさら無いようだ。

「ねえねえ、私の意見も聞いてよ」

 咲は自分だけ意見を聞いてもらえていないので少し不満のようだ。

「咲は何が食べたいの?」

「ピザ!!」

「却下!!」「却下!!」

 2人は咲の意見を聞くなり即却下というセリフを言った。却下と言われた咲は残念そうな顔をしていた。

「咲の意見は却下したけど、さて・・・ハンバーガーとカレーどちらにするかしらね?」

 透は改めて2人にどちらが良いか尋ねた。勿論、悠は自分の意見を曲げる気はさらさら無いのでこのままやっても永遠に決まらないというのは彼女も分かっていた。

「このままやっても埒が明かないわね・・・ゲームで決めるというのはどうかしら?」

「ゲーム?」

 悠の突然の発言に透は一瞬彼女が何を言っているのか理解出来ていなかった。

「その方が手っ取り早いでしょう?九十九君や咲と違って私と貴方ならゲームの実力も拮抗しているから丁度良いじゃないのかなと思ったのよ」

 悠がゲームというのを提案した理由は2人の実力が拮抗しているのでそれが丁度良い物であると考えたからである。

「なるほどね・・・良いわ貴方の提案を受け入れるわ。ただし、やるからには恨みっこ無しよ。それは良いわね?」

「勿論よ。ただし・・・・勝つのは私だけどね」

 悠は透が自分の意見を聞き入れたの事に対してあくまでも勝つのは自分であるという事を告げた。

「それでどんなゲームで決めるの?」

「ブラックジャックなんてどうかしら?」

「ブラックジャック?」

 ブラックジャック。勿論、あのもぐりの医者が活躍する漫画ではない。ここで言うブラックジャックはトランプを使ったゲームの1つである。カードの合計を21に近づけた方の勝ちという単純な物である。

「勝負は1回だけ。負けても恨みっこナシ。良いわね?」

「問題無いわ。じゃあ始めましょうか」

 透の言葉と共に2人は依頼者が来た時に使うソファーに移動した。その後、咲がトランプを持ってやってくる。ケースを開けてカードを入念にシャッフルし、2人に2枚のカードを渡した。2人は2枚のカードを手に持ち考えを巡らせていると最初に悠が声をあげた。

「咲・・・1枚追加」

 悠の声を聞いて咲がカードを1枚渡す。

「私も1枚くれるかしら」

 同じく透もカードを1枚追加してきた。

「悪いけどもう1枚くれるかしら?」

 間髪入れずに悠が次のカードの追加を要求した。カードを受け取った悠はそのままカードを机の上に裏のまま置いた。これはカードの追加は要らないというアピールだ。

「透ちゃんは?」

「私もこのままで良いわ」

 カードを配布を修了し、勝敗を決める時間になった。まずは透がカードを机に置く。

「ジャスト21・・・ブラックジャックよ」

 開かれたカードの数字は8、3、10で丁度21であった。

「悠ちゃんは?」

 咲に尋ねられた悠はニヤリと表情を浮かべた後にカードを裏返した。

「私もブラックジャックになったわ」

 悠は透より1枚多い4枚でありながらも6、、9、5、1で見事21にしてみせた。

「ギリギリ21・・・・相変わらずね悠の運の強さも」

「運も実力のうちそういう物でしょう?」

 悠は透の言葉に対して表情を変えずに冷静に答えた。とはいえ、口調からは勝ち誇ったような感じを受け取れた。

「それで・・・これで終わりって訳にはいかないでしょう?」

「勿論・・・次で白黒決めてあげるわ」

 急遽決まった2戦目の準備が始まった。先程と同じように咲が2人に2枚のカードを配った。そして、さっきと同じようにそれぞれ3枚目のカードの追加を要求した。

「透ちゃん・・・4枚目の追加は?」

「私はこれで良いわ」

「悠ちゃんは?」

「もう1枚追加で」

 先程と同じように4枚目のカードを要求した悠は咲からカードを受け取った。しかし、その態度は最初のゲームとはまったく違っていた。悠は4枚のカードを確認するとそのままカードを投げ捨てるように机の上に置いた。

「どうしたの悠ちゃん?」

「良いから早く結果を・・・・」

「あっ・・・うん。透ちゃん開けて」

「私は3枚で19よ」

 透は自分のカードを表にして2人に見せた。

「悠ちゃんは?」

「25・・・・」

 悠は4枚のカードを表に返した。4枚の合計は25。ブラックジャックのルールではカードの合計が21を越えた時点でそのプレイヤーの負けとなってしまう。

「残念だけど・・・今回は私の勝ちのようね」

 透は自分が勝ったという事で勝ち誇ったような笑みを浮かべて悠の方を見た。

「ええ・・・貴方の食べたい物を好きなだけ頼んだら良いわ」

 悠はそう言い残し席を立ち2階に上がって行った。

「完全に悠ちゃん機嫌を損ねちゃったね」

「大丈夫。1日経てば機嫌が良くなるわ」










「なあ・・・咲」

「うん?」

 仕事から戻った圭は咲に質問していた。

「何かさっきから悠の様子をおかしくねえか?」

「ちょっと今日色々あってご機嫌ナナメなんだよね」

「何かあったのか?」

「それは本人に聞かないとどうにも・・・」

 咲は勿論、悠の機嫌の悪い理由は知っているが話さなかった。それはあの楽しい時間が圭に内緒の時間であるからである。

「そうか・・・・」

「どこ行くの?」

 圭は椅子から立ち上がってどこかへ向かおうとしていたので咲が尋ねた。

「直接本人から聞きだすんだよ」

「無理だと思うよ・・・多分追い返されるのがオチだ思うけど」

「そんなのやってみないと分かんねぇだろう」

 圭はそう言い残して悠の部屋に向かった。咲は止めようとしたが、どうせ止めても無駄だと思ったのでそれ以上は何も言わなかった。

「オイ、悠」

「入るならノックぐらいしなさい。貴方は相変わらず非常識ね」

 部屋に強引に入った圭に対して悠はひと言告げた。部屋の中では悠が自分の机に座って本を読んでいた。圭が入って来たというのに彼にまったく見向きもしなかった。

「お前・・・今日何かあったのか?」

「有ったとしても九十九君には関係無い事よ。放っておいて」

 圭はこの言葉を聞いて何か感じ取ったようだ。

「お前・・・何か負けただろう?」

「はぁ?何言ってるの?」

 悠は圭の言葉を聞いて声をあげた。その声は少し裏返っており動揺の色が隠せなかった。

「その態度・・・どうやら図星のようだ」

 圭は自分の予想が正しかったと確信したようでニヤニヤしながら悠の方を見た。

「それで・・・何の勝負で負けたんだ?」

「貴方には関係無いって言ってるでしょう!!その気持ちの悪い顔でこっちを見ないでくれるかしら」

「何だよ別に言ったて減るもんじゃねぇんだからよ。ほら、素直に言ってみろよ」

 圭が悠の頬に指でツンツンした瞬間に悠の怒りが爆発した。自分の頬を触っていた圭の指をあり得ない方向に捻じ曲げた。

「イテ!!!悠・・・何しやがる・・・うぉ!!」

 圭は捻じ曲げられた指を押さえて悠に対して文句を言おうとしたが彼女に自分の襟を掴まれて部屋の外に追い出された。

「次に同じようなマネしたら命は無いわよ。分かったわね?」

 悠はそう言って部屋のドアを力強く締めた。追い出された圭はただその場に座り込むだけしかなかった。

「圭も長い付き合いなんだから少しは察してあげなさい」

 毎日嫌と言う程聞いている声の主の方に圭は目を向けた。そこには透が立って圭を見下ろしていた。

「良いじゃねぇか・・・俺の知的探求心が欲しているんだよ」

「そういうバカな事外で絶対に言わないでよ。それより・・・あの悠態度を見て貴方も原因は薄々分かってるでしょう?」

「ああ・・・」

「あの子が負けず嫌いだって言うのは圭だって昔から知っているでしょう。あいう時はそっとしておいてあげるのが1番なのよ」

 透の言う通り次の日の朝になれば悠の機嫌はすっかりいつも通りに戻っていた。そして、透は次の時は悠に好きな物を選ばせる権利を譲ろうと決めていた。




3人だけのお楽しみFin




次回の投稿はまた1か月後の9月24日になります。時間は掛かりますが必ずいい作品にするのでお楽しみにして下さい

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