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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case1 真意無き自殺
13/720

#12

今回は月末という訳で2本連続掲載です

 事件から1日が過ぎ学園内では生徒達は普通通りの日常を過ごしている。勿論、あんな殺人事件が起きてすぐの為かまだ不安に思っている生徒は多い。それでも生徒の不安は和らげるため日常通りの生活をして生徒達の不安を払拭しようと校長は指示している。

「旧校舎のカギはここで管理しているんですね」

「悪霊の噂もあってむやみに生徒が手を出せないようにするためにそういしてるんだ」

 午前の警備を終えた圭が橘と警備員室で会話していた。この警備員室では旧校舎のカギを全て管理している。一連の悪霊の噂から学校は旧校舎を使用しなくなってから旧校舎のカギの管理を警備員室に一任している。

「これって、先生方が使用する場合でもここに来ないといけないんですね」

「そうだな、それにこの管理ノートに記入する必要があるから。それによって誰が旧校舎に行ってるか分かると言う訳だ」

「このカギって全部、純正のカギですよね」

「いや、物理室のカギは10年前に無くなってね。今は合鍵だ」

「へーえ、あっ、本当だ」

 圭は物理室のカギを見てすぐに合鍵だと分かった。合鍵と純正のカギを見分ける方法は裏の鍵番号である。純正のカギであれば桁数が多いのだが合鍵の場合はそもそも鍵番号が存在しない。一応、裏面に数字などが書かれているがこれは商品番号であり純正のカギとは違い桁数も少ない。一般人から見ればどちらも同じようにも見えるが実際には大きな違いがある。

「あれ?これって」

 圭は物理室のカギを見た後他のカギも見ていたがあるカギを見た時手が止まった。社会科資料室のカギである。その理由は社会科資料室のカギが合鍵だったからである。先程の橘の話からすると合鍵が作られたているのは物理室である。となれば何故社会科資料室のカギも合鍵なのか?

「合鍵は物理室だけですよね?」

「ああ、間違いない」

「もしかして」

 圭はある推測をした。圭は橘の目がこちらから離れたのを見てすぐに物理室のカギとポケットに入れていた別のカギと交換した。それを密かに行った《おこな》後警備員室に内線電話が鳴る。

「はい、こちら警備員室。和泉くんですか?はい、居ます。ハイ、ハイ、えっ、分かりました。昼休みですね。分かりました。伝えておきます」

 橘が電話の応対を終えたゆっくりこちらの方へ近づいて来る。

「何ですか?」

「和泉くん。今日、昼休みに理事長室に行ってくれ」

「えっ?」

「おそらく、昨日ことだろう」


 昼休み、圭は言われた通り理事長に来ていた。理事長室はかなり広く、流石は100年の歴史がある学校のボスの部屋と言う感じである。壁には歴代の理事長の写真が飾られている。とは言ってもこの学校は一族経営であるため写真に映っているのは現理事長のご先祖に当たる人達と父親である。正面には大きな机と椅子があり理事長はそこに座っていた。

「君は何故自分がここに呼ばれたか分かっているか?」

 修學高校理事長。森本健吾理事長は太く鋭い声で圭に問いかける。

「まあ、それなりには、昨日ことですよね?」

「君は昨日警察に捕まりかけたそうだな、それだけでなく警察の捜査に口を挟んだようだね」

「はぁ、あの刑事チくったな」

「1件目は君にも非があるが向うにも非があるから仕方ないが、2件目に関しては明らかに君の方に非がある。刑事さんから捜査妨害するならあの場で逮捕していたと忠告されたよ。君はウチの学校の看板に泥を塗る気か?」

「別にそんな思いは無いですよ。僕はただ疑問に思ったことを言って捜査の協力をしたいと思ったんですけど、あの刑事さんにはそう思われていないようですね」

「だからと言って君は一般人だ。事件は警察に任せておけばいい。我々学園の人間は何事にもおくすることなく。事態を落ち着かせることが重要なんだ。それに君は1年前の自殺した生徒のことや変な噂についても生徒や教員に聞きまわってるようだな」

「それは・・・」

「彼女の死は私達にとって非常に心苦しいことだった。しかし、それだからと言って生徒達にいらない不安を持たせるのは非常に危険なことだ」

「それは誰の為に言ってるんですか?」

「何が言いたい」

 圭の鋭い口調の問いかけに理事長の森本は目を尖らす。

「それは誰の為の意見ですか、生徒の為ですか?学校の為ですか?それとも面倒なことをされて自分の評判を落としたくない貴方の評判を守る為ですか?」

「君には関係無いことだ、どうであれそれが生徒の不安を払しょくしているのならそれに問題でもあるのか?」

「いいえ、ただ・・・・それで生徒達は納得するんですかね?確かにここは私立ですから学校が潰れてしまっては元もこうも無いです。それでも学校の主役は生徒じゃないですか?あまりにも彼女の自殺に無関心なのも人としてそれで良いのかと思いまけど」

 理事長は圭の意見に黙って聞いていたが一息してメガネを外した。

「なかなか面白い事を言うな君は、用件はそれだけだ。すまない昼休みの時間に」

「いいえ、このたびはすいませんでした」

 理事長に頭を下げて圭は理事長室を後にする。理事長室を出るとそこには七宮悠、冴島透、瀬川茉莉がいた。

 3人はそれぞれ新聞社の職員として学園の取材ということになっている。透はグレーのパンツスーツ、悠と茉莉は黒のスーツにスカートというスタイルで伊達メガネを付けている。普段は仲間の4人だが今は他人である。その為圭はお客様として3人に頭を下げて横を通ろうとする。

「ギィ」

 3人の横を通過しようとした時すぐに透に足を踏まれた。

「話は帰ってから聞かせてもらうから覚悟しなさい」

 そう言うと足を外して圭を立ち去らせる。

「相変わらずね圭は」

 茉莉は悠と透に話しかける

「本当にいい加減学習して欲しいわ」

「今はその話は止めましょう。それよりこれからは悠貴方よ。いつものように強く相手に問うような真似はしないでよ」

「大丈夫よ」

「初めまして。私達は東京新聞の坪井です」

 透は坪井裕子という偽名を使い。その名刺を理事長に手渡す。ちなみに悠は小林香菜、茉莉は山本玲奈という名を使っている。

「いや、こちらこそ」

 先程までの圭と話していた時と違い笑顔もこぼれている。

「まず、先日は殺人事件があったばかりだというのに取材をさせていただきありがとうございます。生徒さんが亡くなってしまったことはお悔やみ申し上げます」

「いいえ、我々としても早く平和日常を取り戻す為にも普通に学校生活を送れるよう教員、生徒が皆それぞれ前を向いて生活していますから」

「それは本当にみなさんの意志ですか?それは貴方が学校の評判に関わるからことを大きくしないようにする為に無駄な詮索や追及を生徒や教員がしないように貴方が命令しているんじゃないですよね?」

「どういう意味かな?お嬢さん」

 悠の発言に先程まで笑っていた理事長室が顔を曇らす。

「ちょっと・・・・小林さん。すいません、彼女はちょっと疑り深くて後で厳しく注意しますので申し訳ありません」

 透が誤ったことで何とか取材打ち切りにはならなかったがかなり印象を悪くしてしまった。そこで茉莉が話題をすり替える。

「この学校は今年で創立107年になる訳ですよね。それだけに培われてきた歴史というものが凄いですね」

「それほどでも。わが校は勉強もスポーツもそれほど素晴らしい成績を出してる訳ではありませんが生徒それぞれが自由な発想で学校を盛り上げてくれているのは非常に有り難いです。それもあってか吹奏楽部や合唱部や新聞部など文化系の部活は非常によい成績を残してますね」

「吹奏楽部は昨年惜しくも全国コンクール銀賞でしたが、去年まで2年連続金賞。合唱部も昨年は全国コンクールで金賞。新聞部も優秀賞とかなりの好成績ですが、これも学園の校風によるものなんですか?」

 この学校では儒教の思想を精神に教育を行っている。私立の高校らしく自由な校風でも人気が高い。

「ありがとうございます。それも確かに大事ですが、生徒や顧問の先生の努力による賜物たまものだと思います」

 茉莉の会話によって理事長は再び笑みを取り戻した。先程までのピリピリムードも無くなってきていた。ここで透がある話に持って行こうとする。

「特に新聞部の方は優秀ですよね。昨年のミステリー研究会との合同発表の記事も非常に高い評価でしたね」

「いや、彼らはこの発表会に向けて遅くまで調査していましたからね」

「それだけに今回の事件や去年の桜井さんの件は残念ですね」

「桜井さん?そんな事件もありましたね」

 この発言に流石に悠は飛びつかざるおえなかった。

「覚えていないのですか?昨年自殺した桜井春海さんのことです」

「覚えていますよ。彼女は優秀な生徒でした。あの時は非常に学園内の空気が淀んでいました。しかし、このまま雰囲気を続けていけば生徒達に悪影響になると私が率先して前を向いて進んで行こうと生徒に言ったんです」

「それは彼女の死を蒸し返して学園の評判に影響が及ぼさないようにするためですか?」

「どういうことかな?」

「普通はこのような自殺の場合、まず被害者の学園内における交友関係を調査します。次に彼女の身辺調査を行います。しかし、生徒の間で噂になっている彼女を嫉んでいるという生徒からは何も聞かず、それだけで学園内の調査を打ち切ったわけですか」

 この内容は事前に和と茉莉の調査によって分かった内容である。

「君はそんな事を聞いてどうなるのかね?もう、捜査は終了してるのに何の意味があるのかね?そんな事をしても遺族は苦しむだけではないかな?」

「それは貴方が決めることではなく遺族自身が決めることです。大事だいじな人を失うというのは当事者以外人間には分からない心境です。それは時間の流れだけでは絶対に解決しないものです。特に貴方みたいに自分の利益だけ・・・・」

 これ以上悠に余計な事をしゃべられる前に透は悠の腕をおもいっきり握っていた。その威力は先程圭が足を踏まれていたが、それに匹敵する威力である。

「2度もすいません。そろそろ新聞部の方に行かないといけないので私達はこれで」

「時間を取らせて悪かったね」

 3人が理事長室から新聞部との取材場所の応接室に向かいながら話していた。

「流石に私もヒヤヒヤしたわ。あのまま透がめずに悠が話し続けていたらあの理事長本気で怒ったでしょうね」

「それでもあそこまで力入れる必要なかったと思うけど。本当に骨が折れると思ったわ」

 悠は透に握られた場所を今もさすっている。

「だったら1回で言われたことは守りなさい。貴方も圭と変わらないわね」

「私は九十九君と違って言えば分かるから一々《いちいち》体で教える必要は無いわ」

「なんだかんだ言ってもあなたと圭はよく似てるわね。その言い訳も」

「それは聞き捨てならないわ。間違っても九十九君にその話をしないでよ。彼が調子に乗るのが鼻に付くから」

「ハァ、まったく」

「本当に子供と母親みたいね」

 2人に聞こえない声で茉莉が笑っていた。





 3人が理事長室でインタビューをしていた頃に九十九圭は旧校舎にいた。彼は物理室の前で足を止めた。先程すり替えた物理室のカギをポケットから取り出し物理室のカギ穴に差し込む。

圭の推測が正しければこの物理室のカギは偽物である。偽物のカギであれば差込口に入らない。入ったとしてもカギの形状が合わない為回すことが出来ないはずである。

「やっぱりか」

 圭はカギ穴に差し込んだがカギは右にも左にも動かなかった。これでこのカギが物理室のカギで無いことが立証できた。勿論、ここまでは圭の推理通りである。そして圭はこのガキの本当の場所である教室に向かう。

 社会科資料室。それは先程圭が何気なく見ていたカギの中で見つけたもう1つの合鍵であった。本来この旧校舎のカギは物理室のみ合鍵が作られていると橘は話していた。だったらここにある社会科資料室の合鍵は?なぜ物理室しか存在しないはずなのに2つあるのか?そう考えることで圭はある推測をした。それはカギのすり替えである。そして、先程物理室で開けることの出来なかったカギはもう1つの合鍵の部屋社会科資料室のカギだと彼は考えたのだ。

 社会科資料室に着いた圭はその合鍵をカギ穴に差し込むとしっかり奥まで入りそのまま右に回すとガチャという音がした。彼の予測通りだった。そのまま扉を開け中に入ろうとしたが誰かが2階に上がってくる音がしたのですぐさまカギを閉めてその場を離れようとした。階段から上がってきたのはこの学校の社会科教師でミステリー研究会の顧問畑中であった。

「君は確か警備員の・・・・」

和泉いずみです」

「そうだったね。警備ですか?ご苦労様です」

 そう言うと彼は警備員室から借りた社会科資料室のカギを取り出した。勿論、このカギは社会科資料室のカギでは無いため開けることは出来ない。一体どうするのかと圭は気になっていたが畑中が周りを気にしているのでその場から離れ彼の見えない場所からのぞいた。すると彼の袖からもう1つのカギが出て来た。これが恐らく本物の社会科資料室のカギであろう。それを使い素早くカギを開けて中に入った。

 畑中が入った後圭は階段近くまで移動した。先ほど畑中の視線の入らない場所に移動し入る瞬間を動画で残しておいた。圭はその動画を確認し生物室に向かって行った。









 新聞社に扮した3人は新聞部との取材場所の応接室を目指す。

「悠、今度は大丈夫かしら?」

「当然よ。いつまでも子供扱いするのはよして」

 透が悠に再び忠告して中に入る。中には新聞部の部長の中田憲と副部長の糸原望とミステリー研究会の部員として彼女達の依頼者桜井雪子が座っていた。

「本日はお招きありがとうございます。まずは先日の事件について私達からもお悔やみ申し上げます。特にそちらのミステリー研究会の皆さんは・・・」

「すいません」

 雪子は軽く頭を下げてお悔やみをした3人に礼をした。

「まず新聞部の皆さんは昨年発表された記事の評判が非常に高く我々の業界でもかなり注目している人は多いです」

「ありがとうございます。我々新聞部だけでなくこちらのミステリー研究会の協力もあってです。前回は彼女達の力によるものが大きいと思います」

 新聞部部長の中田はかなり謙遜けんそんしていた。

「今年もミステリー研究会と共同で発表される予定ですか?」

「はい、そのつもりです。私達がこの学園のある立川市の歴史とミステリー研究会が学園の悪霊のことについて記事を書くつもりです」

「そうですか。ですが、ミステリー研究会の皆さんはその悪霊に関わったことで部長の柏木美琴さんが亡くなったという噂が出ていますが」

 ミステリー研究会の部員にとっては今1番聞きにくい質問だがあえてこの質問しようと透は考えていた。

「いいえ、それはただの噂だと思います。今回の事を調べるのもその日に決まった訳ですし、本格的な調査も始めてませんでした。それに柏木先輩は・・・・」

 雪子の何か隠している様子に悠が反応する。

「何か気になることでもあるんですか?」

「いいえ、別に何でもないです」

「それならいいです。ただし、気になることがあるならすぐにでも警察に情報提供するのが良いと思います。取り返しがつかなくても遅いですから」

「はい・・・」

 また余計な発言をしてしまった悠に若干頭を抱える透。すぐさま話を切ろうと茉莉が話題を変えようとする。

「この学校は運動系の部活よりも新聞部のはじめとした文化部系の部活の活躍が目覚ましいですね」

「いいえ、僕らは自分達のやりたいことをやってそれを先生方がサポートしてくれていると思います」

「自分達の意志でやっていけるのは何より良い事ですが、本当にそれが全部上手くいってるかは違いますよね?」

「えっ?」

 また悠が彼らに疑いを持ち始める。

「子供と言うのは限界を知らない生き物です。それにストップをかけて彼らが間違った方向に進まないようにするのが大人の役目です。これが正常に働いていれば良いのですが残念ながら現実はそうではありません。実際には大人が自分達の都合の良いようにしているんです。桜井さん」

「あっ、ハイ」

「柏木さんは本当は別の事を調べたいと思っていたんじゃないですか?おそらくその内容は顧問の先生に止められたのでしょう。その理由は分からないですが私は顧問の先生にとって不利益なことだったんじゃないかと思います」

 悠の発言に取材を受けていた3人の生徒は下を向いていた。何か思い当たることが当たることがあるのだろう。

「いずれにせよ今回の事は私達が気にすることでは無いですから」

 悠はそれ以上の追及をしなかった。恐らく横の透の顔を見てこれ以上の詮索せんさくが危険だと思い話すのを止めた。

「それでは私達は次の取材に行きますので今日はありがとうございました」

 透達は雪子達に頭を下げて応接室から退室した。雪子達は彼らに頭を下げた後新聞部の2人は何か話していた。雪子はその輪に加わることなかった。聞こえてくるのは先程の3人に対する悪口とミステリー研究会に関する事だった。雪子はまるで自分達が疫病神扱いされているとも取れる発言に耐えられなかった。雪子は彼らに挨拶してその場を立ち去った。



「それにしても悠があそこで思い留まるなんて、何かあったの?」

「単に身の危険を感じだけよ」

 悠の発言に茉莉は若干笑みを浮かべていた。

「私はまた何か言うかと思って冷や汗ものよ。悠、相手は高校生よ。少しは考えてしゃべらないと」

 そんな会話をしながら3人は次の取材場所に向かっていた。

「ゴメンなさい。ちょっとトイレに行っていいかしら?」

 悠の突然の言葉に2人は驚いた。

「2人は先に次の取材場所に行っておいて。私も後で行くから」

 そう言って悠は2人から離れて反対の方に向かっていた。

「ちょっと悠。透、良いの?」

「放っておきましょう。彼女の事だから何かあると思うけど。圭と一緒で団体行動って言うのを学んで欲しいわ」

 2人はため息をした後次の取材場所に向かった。




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