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復讐の黒猫達は暗闇に笑う  作者: 本山修一
case1 真意無き自殺
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#9

 あれから数日後私は10万円を振り込んだ。この10万円は雪子のバイト代から出したものである。ただ、このバイト代を管理してるの母であり。バイト代を使うには母の許可が必要である。彼女は依頼を受けた日の次の日に「10万円が必要だ」と言うと母からは「何でそんな大金が?」と不審がられたが、部活や最近遊びに行くことが増えてと適当な理由を付けた。普段からそんなことを言わないので母は怪しんでいたが最後は10万円を用意してくれた。

 雪子が振り込んだ次の日には黒猫探偵から『前金の振り込みが確認できました。これより依頼の実行に移行します。今後は依頼の進行状況をお知らせするお手紙をお送りしますので破棄せず一生大事にお持ちください。』

 振り込みから数日後、特に学校内では変わったことは起きなかった。雪子はいつものようにミステリー研究会の活動に参加していた。ミステリー研究会の部室は現校舎の第2校舎の実習棟に部室がある。この校舎に部室があるのはミステリー研究会だけである。ちなみにこの実習棟からは旧校舎が見えるようになっている。

「それでは、今回の新聞部に投稿する記事は学校の悪霊の真実を追求で良いわね」

 ミステリー研究会の部長の柏木美琴かしわぎみこと先輩は部員達に意見を求めた。部員達は賛成している様子であったが、柏木先輩自信はあまり乗り気でないように見える。

「何か意見はありますか?畑中先生」

 部員達の後ろで椅子に座ってその様子を眺めていた教員が1人。見た目は50代後半、少し白髪まじりにスーツを着ている。

「1つ、顧問として一言。調べるのは構わんが、かつてこの心霊現象を調べようと行方不明になった生徒がいる。なるべく・・・無茶なことは」

「ご心配なく、調査には細心の注意を払います。もし、身の危険を感じたらすぐに調査は打ち切ります。それでよろしいですね。先生?」

「ああ、後は柏木さんに任せるよ」

 その今後の日程を話した後今日は解散した。

「それにしても、柏木先輩なんか変じゃなかった?何か乗り気じゃないというか」

「それ由美子も思った」

 雪子は廊下を歩きながら友人の弓永由美子ゆみながゆみこと先ほど柏木先輩のことを話していた。

「確かにいつもの先輩らしくなかったと言うか・・・・」

 普段の柏木先輩は自信ありげな雰囲気で自分達が調査する内容には人一倍やる気をみなぎらせている。それが今回はどこか冷めていてやる気が無い様に見える。

「それは、当然だよ」

 私達の話に入ってきたのは柏木先輩と同じ3年生の渡部正一わたべまさいちである。

「渡部先輩何か知っているんですか?」

「それは勿論、柏木くんは例のことを調べたかったんだよ」

「それって、ウチの教員の中にテストの答案を生徒に売ってるという噂ですか」

 私達の話に入ってきたのは1年生部員の藤岡隆一ふじおかりゅういちである。

「あら、藤岡君も知ってるの?」

「勿論ですよ。あの柏木先輩が熱心に調査しようとした内容ですよ」

「表向きは新聞部に投稿する内容にふさわしくないからと畑中先生が取りやめたという噂だけど実際は畑中先生もその答案売買に関わってるって彼女は言ってるけどね」

「渡部先輩はどう思ってるんですか?」

「僕はそんな真意よりもそんな内容を新聞のコンクールの内容にしようとする。彼女のことに理解が苦しむよ。最も畑中先生に限ってそんなこと、あの人がそんな大胆なことできるような人とはみんな思わないでしょう。じゃあ僕は塾の時間だから、それじゃあ」

 渡部は他の3人に別れをつげ少し足早に去って行った。いつもながら渡部の話はどこか気に食わないと3人は心の中で思っていた。

「雪子はどうなの?」

「私は柏木先輩の事だし何か確証があると思うけど、私はそんな噂は嘘だと良いなと思ってるの」

「桜井先輩らしいですね」

 雪子達が談笑していると前方から見知らぬ2人の男性が近づいて来た。

「君達。もう、6時だよ。早く帰らないとお父さん、お母さんが心配してるよ」

 彼女達の前にいたのは同じくらいの年齢の男性2人である。勿論、教員では無い。彼らの着ている作業着のような服を見れば分かる。この学校は私立学校であるため警備員を配置している。いつもは橘さんというベテランの警備員だか彼の年齢も考えて学園側が警備員の募集をしていた。

「お兄さん達って。新しい警備員さん。随分若いですね」

 由美子がニタニタしながら話しかける。

「そうそう、今日から働くことになっただけど、まあ、アルバイトみたいなもんだから」

 帽子にメガネを掛けた男性が答える。

「あのう?そちらの方、どこかで会いました?」

「いえ、初めてですよ」

「ちょっと雪子。何、ナンパ?ここ学校だよ」

「違うよ、由美子ったら。もう、置いて行くわよ」

「もう、ゴメンって。それじゃあ、警備員さん、さよなら」

 由美子は警備員さんに手を振り、藤岡は一礼をしていた。雪子だけはどこかであの人の声を聞いた気がすると思っていた。





「なあなあ、あの子知り合いか?」

「依頼人だよ。桜井雪子さん」

「マジで、いい子そうな子じゃねえか」

「変なこと考えるなよ。やっぱ、依頼中に依頼者と会うと肝が冷えるな。あの子勘よさそうだし」

 学校内を警備しながら先程のことを話している2人の男性、もとい、九十九圭と鳴海和である。彼らは冴島透発案の作戦の下、学校内に侵入していた。今回は圭と和が警備員、悠、透、茉莉が新聞社の取材として侵入する。2人は見事に書類審査と面接を突破してこの職場に今日からバイトとして働くことになった。

「にしてもよ、潜入捜査とはいえ毎回こんな風にされたたまらねえよな」

「同じく」

 2人は帽子をとってそれぞれの髪形を見る。圭はいつもの寝ぐせが付いた髪から、おぼっちゃまみたいにきちんとした髪形に、和は自慢の金髪を黒髪にされ髪も短くなっている。

「相変わらず似合ってるな。お前の黒髪」

「うるせえよ。お前よりはましだろ。その髪全く似合ってねえよ」

「仕方ねえだろ。咲がこれが良いて言うから。それより俺達の身代わりになってるお前の仲間連中の方が気の毒過ぎるだろう」

「ああ、全くその通りだぜ」

 今回の潜入捜査と言うより毎回の潜入捜査の度に和と茉莉のグループの人間の名前を使わせてもらっている。時には入る職場に合わせて髪を変えたり見た目を変える必要があるので名前を貸してもらってる奴も同じ目にあわされている。

「あれが旧校舎か見るからにボロそうだな」

「大地震とか台風が来たら一発で壊れそうだな」

 和の話しかけに圭は反応する。この学校の旧校舎は今では授業では使われなくなっている。勿論、悪霊の噂があるから生徒は寄り付こうとしないが教員の中にはこの校舎にある資料が必要になるので使われることがあるらしい。今日も警備員の橘から社会科の畑中先生が旧校舎使うと指示されており、奥の方に電気の灯りが見える。

「畑中って例のあれか」

「そう。だけど、真面目な教師らしいな」

「今回は長期戦になるかもな?」

「ハァ~、1ヵ月もこんな髪維持するの俺は嫌だからな」

 和はうつむきかけになっていた。2人は実習棟のミステリー研究会の部室近くに来ていた。ミステリー研究会の部室は6時半近くだというのに電気が点いていた。圭は有無を言わずにドアを開ける。中には部長の柏木美琴がノートパソコンの前に座っていた。ドアが勢いよく開いたので少し驚いたがすぐに冷静さを取り戻している。

「どちら様ですか」

「どうも今日から勤務の警備員です。ここは君の部室?もう、こんな時間だしいい加減に帰らないと」

 圭は初対面であるはずの柏木に臆することなく話しかける。普通初対面の怪しい男に冷静に話しかける女性はいないが話しかける男の方も同じである。

「警備員さんですか?新しい人を雇ったんですね。すいません、すぐ帰ります」

「それ何やってるの?」

 圭は彼女が見ていたノートパソコンに目を向けた用としたが彼女は何食わぬ顔でノートパソコンの電源を切り閉じた。

「部活の活動内容をまとめてるんです。これも部をまとめる者としての仕事ですから」

「部長さんが自らですか、真面目ですね」

「いえ、これは部活の決まりですから。それより、もう帰ってよろしいですか」

「いいよ、ゴメンね。変な質問して」

「いいえ、それでは」

 彼女は2人に挨拶をして部室から出て行った。

「どうしたんだ、圭」

「いや、ちょっと気になることが」

「おいおい、あの子を疑ってんのか。あの子はお姉さんと依頼者の間の学年だから1番関係性が薄いってお前と悠が言ってたろう」

「まあ、そうだったな」

「お前が気にするのは良いけど、変に生徒や教師を煽るだけは止めろよ。いつも言ってるけど変に目だったらクビになるのは俺とお前なんだから」

「分かってます」

 和の忠告に圭はいつものことかと若干聞き流してるように見える。

「本当にあれがただの活動日誌だったら良いけど」

「オイ、聞いてんのか圭?」

「聞いてるって、それより見回り終わったし、橘さんに報告しないとな」

 圭はミステリー研究会の部室を見た後に校舎窓から見える旧校舎を見ていた。


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