表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰にも会えない誰かさん  作者: アメモリ
第1章 雨の少女
5/7

第4話 「灰色の空の下で」

 だが結局、俺は一睡もできなかった。約三秒後に、予期しない来客があったからだ。

 「坂原く―ん、大丈夫ぅ?」

 永塚先生だ。カーテンを開けて、中に入ってきた。

 「もう一回、熱、測ってみる?」

 「あ、はい」

 体温計を受け取り、脇にはさむ。

 「どうしたのぉ? なんか酷い顔してる」

 「そう……かもしれませんね」

 「あら、何かあったのねぇ? あ、もしかして彼女と喧嘩とか? 私で良ければ、相談に乗ってあげてもいいのよぉ?」

 「いや……、大丈夫です。相談するほどのことでもないですから」

 「そう……、ならいいけど……。でもほら、誰かに話すと意外とすっきりするってこともあるからねぇ? 私はいつでも聞いてあげるから」

 「はい、ありがとうございます……っと」

 体温計がピピッと鳴った。三十六度四分、平熱だ。

 「熱、下がったみたいです」

 「そう、それは良かったわぁ。じゃあ、午後の授業はどうするのぉ? 帰る?」

 「ちょっと今日は……、帰ります。……あれ、まだ俺学校来たことになってないですよね?」

 「うん」

 「じゃあ今日は欠席ってことにしといてくれませんか」

 「えぇー、いまさらぁ? 面倒くさいなぁ……。まあでも、坂原君の頼みなら頑張るわぁ。任せといて」

 「……どうもです」

 大きく伸びをして、起き上がる。荷物をまとめようとかばんを探したが、すぐにまとめるものなどないことに気づいた。

 「ふぅ……、あ、今何時だろう」

 「もうすぐ十二時半だから、まだ授業中ねぇ」

 「あ、そうですか」

 なら誰かに見つかる心配はないだろう。かばんを持って立ち上がり、ドアまで歩いた。

 「じゃあ先生、今日はお世話になりました」

 「ふふっ、いいわよぉ。私も久しぶりに坂原君に会えたしぃ」

 幸せそうな笑顔の先生に俺は苦笑いを返し、ドアに手を掛けた。

 ……そうだ、永塚先生に聞いてみようか。

 「先生は、幽霊って……いると思いますか?」

 ……と。

 「幽霊? んん……幽霊ねぇ……、会ったことはないけど、でもどこかにはいるかも、とは思うよぉ。でも……どうして?」

 「いえ……、会ってみたいですか?」

 「うん、会ってみたいかもなぁ……。でも幽霊って、霊感とかが強くないと見えないんじゃないのかなぁ?」

 「ああ……、そうかもしれませんね……」

 「あ、分かったわぁ。もしかして坂原君、幽霊を見たのぉ?」

 「いえ……、まさか。じゃあ先生、また来ますね」

 「あ、うん……。気を付けてねぇ」

 先生に微笑みを返して、ドアを閉めた。少し頭痛がするが、きっと寝すぎたせいだろう。靴をはき替えて、駐輪場へ向かった。


 ふと空を見上げると、どんよりとした灰色の曇り空が広がっている。

 ――それはまさに、今の自分の気持ちだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ