第3話 「それぞれの孤独」
「な、何だ……?」
俺は、さっきまで彼女――ユレリアがいた場所を凝視した。今はもう、何の変哲もないベッドの上だ。
――幽霊。
不意に、さっきユレリアが口にした言葉を思い出す。そうだ、ユレリアは確かに、自分が幽霊だと言った。それは、他の誰からも見えない存在だと。そして、なぜか俺に会えたときは嬉しかったとも……。
そうか、もしかしたら……、ユレリアはまだここにいるのに、俺にはまた見えなくなってしまっただけなのかもしれない。もしかしたら、今この瞬間も、俺に必死に話しかけているのかもしれない。
「ユレリア……、そこにいるのか……?」
もちろん返事はない。いや、聞こえない。俺にとって、もうユレリアはこの世界に存在していないのと同じなのだ。いや……、果たして本当に、最初から存在していたのだろうか? 俺が見ていたユレリアは、ただの幻覚ではないと……、言えるのだろうか?
「いや……、でも、確かに俺はユレリアに会った。ちゃんと見えたし、話もした。抱きついてきたし、……キスもした」
俺は、確認するように一人で呟いた。そうでもしないと、もしかしたら本当に幻覚だったのかもしれないと、少しでも疑ってしまうから……。
そんな憂鬱な気持ちを振り払うように、俺はまたベッドに横たわり、毛布をかけた。
どう考えても今日は寝すぎだが……。
今度起きたときには、ユレリアがまた俺の目の前に現れてくれると信じた。
*
私はすぐに分かった。海人が、また私のことが見えなくなったのだということが……。
どうしてだろう。どうしてこんなにも海人のことが気になるのだろう。昔は、他人のことなんかどうでもいいと……、そう思っていたのに。どうせ誰も私のことなんか見ていないのだから、私も関わる必要はないだろうと、そう思っていたのに。
そうだ……、海人には、私が見えるんだ。だから私は……。
「ユレリア……、そこにいるのか……?」
急に私の名前が聞こえてドキッとする。
「ここに……、いるよ」
返事はない。当たり前だ、今は海人には私の声は聞こえていないのだから……。今の海人の世界には、私は存在していないのと同じ。
幽霊なんて……、存在する価値は、きっとないんだと思っていた。誰にも見えないなら、いないのと同じ。そう、思っていた。だから海人に出会ったときは、私は嬉しかった。海人には、海人の世界には、私はいるんだと思うと、もう涙が出そうになった。
でもそれなら……、今、誰にも見えない私は、どうしてここにいるのだろうか……。
「いや……、でも、確かに俺はユレリアに会った。ちゃんと見えたし、話もした。抱きついてきたし、……キスもした」
海人の声が聞こえる。うつむいて、何か考え事をしている。私のことだろうか。私がいなくて寂しいのだろうか。
……私も、寂しい。
「海人……寂しい、よ……。戻ってきて……っ」