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誰にも会えない誰かさん  作者: アメモリ
第1章 雨の少女
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第2話 「もう一度」

 「え……、ユレリア……?」

 見間違えるはずがない。そこには、今朝登校中に自転車で危うくぶつかりかけ、何故か突然抱きついてきて俺のファーストキスを奪った可愛い女の子、ユレリアがいた。

 「海人……!」

 ……また抱きついてきた。

 「ち……ちょっと待て……、なんでお前がここにいるんだ」

 「お前……って呼ばれるのは、嫌い。ユレリアって呼んで」

 「そ、そうか、ごめん。じゃあ……、ユレリア?」

 「ん?」

 「いや……、なんでユレリアはこんなところにいるんだ? だってまさか、ここの生徒ってわけじゃ……ないよな」

 どう見ても高校生の年齢じゃない。ぱっと見、小学生。

 「海人……、私は……その……」

 ユレリアはゆっくりと俺から離れ、

 「私は……、幽霊、なの」

 と言った。

 ……幽霊?

 「詳しくは……話せない。でも、いままでずっと、私のことは……、誰も、見ることはできなかった。それが幽霊なんだって、ずっと思ってた」

 「ゆ、幽霊って……。でもほら、俺はちゃんとユレリアのことが見えてるよ」

 「そうなの。こんなの初めてで……、だから、嬉しかった」

 「……」

 その時、ベッドを囲っていたカーテンが、少しだけ開いた。顔を覗かせているのは永塚先生だ。

 「あら、やっぱり起きてたのねぇ。さっきからぺちゃくちゃ話し声が聞こえるから……。坂原君、保健室では静かにねぇ。あんまりうるさいとそのいちゃいちゃトーク用の携帯没収するわよぉ」

 「あっ……、す、すいません……」

 先生はそれ以上何も言うことなく、悪戯っぽい笑顔を残してカーテンの隙間から消えた。

 「彼女には……、私は、見えてないみたいね」

 「えっ、そ、そんな……」

 でも確かに、ユレリアのことは何も追及しなかった。普通なら、「あら、可愛い彼女を保健室まで連れ込むなんて、坂原君もやるわねぇ」とか言い出しそうなものだ。やっぱり、ユレリアは俺だけにしか……?

 「海人にも、さっきは見えてなかったみたい」

 「さっき?」

 「私が、その……、ほら、き、キスをしたあと」

 ほのかに頬を染めている。……可愛い。

 「そうだ、そういえば……。あのときは確かに、突然いなくなったみたいで……びっくりしたよ」

 「ほら……。やっぱり、あのときはどういうわけかまた見えなくなったのね……。怖かった……。また二度と誰にも会えなくなるんじゃないかと思った……」

 また涙目になっている。ユレリアは、そっと目を閉じた。

 その姿はどこか哀しそうで……、とても、寂しそうだった。

 だから……、キスをした。

 「……!」

 今度は、目は閉じなかった。またユレリアが消えてしまいそうで……、俺も、怖かったからかもしれない。

 そして、そっと離れた。

 「か、海人……?」

 今度も頬をほのかに……というより、真っ赤に染めている。

 「あっ……ご、ごめん! その……、つ、つい……」

 って……、何をやっているんだ俺は……。

 「海人……、顔が真っ赤よ……?」

 「そ、そうか……? いや……、ユレリアの方が……」

 「……か、海人の、せい……だよ」

 そ、そうだよな。恥ずかしい……。でもユレリアが超可愛い。

 「あ、雨……やんできた、みたい」

 さりげなく話題を逸らすユレリア。とかいって、全然さりげなくないところがまた可愛い。……そうだ、全部この可愛さのせいだ。

 「そうだな……、って……ユレリア?」

 「な、何?」

 「えっ……、ど、どうした……?」

 俺は慌ててユレリアの左手を手に取った。大丈夫だ、ちゃんと触れる……けど……?

 「えっ? な、何?」

 手が……、透けている……? いや、手だけじゃない。

 ――全身が、透明になって……?

 「ゆ、ユレリア……? き、消えかかってないか?」

 「消えかかってる……って……?」

 ユレリアは自分の姿を見た。が、自分では分からないようだ。

 「いつもどおり……、だけど……」

 しかし、ユレリアの影はだんだん薄くなって……、

 「ゆ、ユレリア……」

 ――そして、ついに消えた。

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