エル、始動
更新が遅れました。
いろいろと用事が重なり、執筆ができなくてすみません。
駄文ですが、ごゆっくり読んでください。(何かあればご感想を書いてくださると幸いです)
「あーなるほどぉ。あなたが藤崎遼さんでしたかぁ。フレアお姉ちゃんから聞いていましたが、これほどイケメンとは・・・・・・」
「あはは・・・・・」
今僕は、僕のベットの上に居る少女、エルと話している。
話によると、どうやらこの子も女神だそうだ。
「それで、エルは本当にメイドになるのかい?」
「ええ、そのつもりでしたが・・・・・フレアお姉ちゃんの彼氏がここまでイケメンだとですねぇ、やっぱりメイドじゃなくて、妹になろうかと思いましてぇ・・・・・」
「い、妹!?」
妹って・・・・・そういえば、フレアのことをお姉ちゃんって言ってたような・・・・・。
「ところで。ちょっとこっちに来てくれませんかぁ?」
そう言って、エルは自分の横をポンポンと軽く叩く。
「ん?ああ、いいけど・・・・・」
僕は言われた通りに、エルの横に座る。
すると、今度はエルが立ち上がり、僕の膝の上に座ってきた。
「ちょっ、エル、何をやって・・・・」
僕の膝にやわらかい感触とともに、一定の重さが加わった。
膝の上に座っているので、エルの髪のいい匂いが僕の鼻腔を通り抜ける。
僕はいきなりのことに、両手をどこにやればいいのか分からず、あたふたしていた。
すると、エルが僕の手を取り、自分の腹部に、抱きかかえるようになるような位置に手を持っていき、ふぅと吐息を吐きながら、僕の胸部にもたれかかってきた。
エルの体温が直で僕に伝わってきて、心臓がバクバクする。
するとエルが口を開いた。
「この体勢の方が話しやすいんですよぉ」
「そ、そうか・・・・・」
「そうそう、さっきの話の続きですが・・・・・どうですかぁ?」
「どうって言われてもな・・・・・べ、別にいいんじゃないか?僕が決めることでもないし、エルがしたいようにすればいいと思うぞ」
僕がそう言った途端、エルの顔がパーっとより明るくなり、足をバタバタさせる。
「ほ、本当ですかぁ!?」
「あ、ああ」
「それじゃあ、これからは遼さんのことを、『お兄ちゃん』って呼んでいいですかぁ?」
お、お兄ちゃんかぁ。僕は一人っ子だったから、人生で一度も言われたことがない。
ちょっと想像してみたが、なんだか恥ずかしい・・・・・。
「それじゃあ、これからよろしくね!お兄ちゃん!」
「お、おう・・・・・」
僕がそう言った途端、ガチャっと部屋の戸が開いたかと思うと、そこにはフレアがいた。
フレアの背後から、不気味なオーラが漂っているように見えるのは、僕だけだろうか・・・・・?
「ご・しゅ・じ・ん・さ・ま・・・・・?」
「は、ふぁい!?」
僕はあまりの恐怖に、返事がおかしくなってしまった。
「膝の上に乗っているのは誰です・・・・・?」
「えっ、お前の知り合いなんだろ?」
「はい、そうです。私の知り合いですが・・・・・。なぜ、膝の上に乗っているんです・・・・・?」
「この体勢の方が話しやすいって言うから・・・・・」
この言葉が僕の最後の言葉となったのは確かである。
僕がそう言うと、フレアは拳を握りしめ、僕にめがけてそれを放った。
その瞬間、エルはひらりと華麗にかわした。
よって、フレアのパンチは僕の鳩尾にダイレクトアタック!
「ふごっ・・・・!」
フレアの細い体からはありえないほどの威力が、僕の体を走る。女神って・・・・・恐ろしい。
「いててて・・・・」
僕は、昨日フレアに殴られたところをさすりながら、学校に登校している。
「ご主人様?大丈夫ですか?」
「ああ・・・・・。ってか殴ったのお前だろ!?」
「なーにーもーきーこーえーなーいー」
そう言って、フレアは両手で耳を塞ぐ。
「はぁ・・・・・、まぁいいや」
でも本当に、昨日はなぜ僕は殴られたのだろう・・・・・。
しかし、分からないことがもう一つある。それは・・・・・。」
「なぜ、エルがついてきてるの?」
少し右下を見ると、エルが僕の手を握って、一緒に歩いている。
「それは・・・・・エルちゃんが一緒に学校に行きたいって言うからです」
「はぁ、まぁいいけどさ。その代わり、おとなしくしてろよ、エル」
「はぁい!」
そう言って、エルはにこっと笑って答えた。
かわいいなぁと思ってしまった自分に、僕はロリコンじゃない!と言い聞かせたのは、胸の内にしまっておこう。
しばらくすると、学校に着いた。
だが、こんな中学生くらいの少女を、勝手に校内に入れても大丈夫なのだろうか?
なるべく先生に会いませんようにと願っていたが、それはかなわなかった。
校門の前に先生が立っていた。
僕は、おそるおそる校門を通過する。
「あれ?何も言ってこない?」
僕が不思議がって、フレアに目線を送る。
すると、フレアが僕の目線に気がついたのだろうか、そっと口を開ける。
「女神の力を使えば、簡単に人をコントロールできちゃったり・・・・・するかもですね」
女神って、やっぱり・・・・・恐ろしい。
教室に入ると、いつもと変わらない風景。
そして、みんなとあいさつを交わす。
と、窓の方から高橋が近づいてきた。
そして、僕の前に立ち止まり、僕と目を合わせてきた。
「ふ、藤崎君・・・・・あのね」
「ん?どうした?」
高橋は顔をすぐに目線を下に向け、もじもじしている。
「あのね・・・・・昨日のことなんだけど・・・・・」
昨日のこと?あぁ、あの爆弾発言のことか・・・・・。
「うん」
「その・・・・・許してほしいの」
「えっ?」
「もう、みんなには謝ったの。後は藤崎君だけだから・・・・・ダメ?」
高橋は、そう言いながら、かわいらしい上目づかいをしてくる。
一般の男子じゃあ、もう恋に落ちているレベルだろう。
「ああ、べつ・・・・・」
「許してはだめです!」
僕の言葉を中断するように、エルが言葉を発した。
「え、エル!?何を言って・・・・・」
「その女は、嘘をついています。実際にはみんなには謝っていませんし、第一に全然反省なんてしてません」
高橋はエルに気がついたのだろう。エルの目と同じ高さになるまで腰を落とした。
「ははは・・・・・何を言ってるの?藤崎君の妹かな?別にお姉ちゃんは嘘をついてないよ?」
高橋は、笑みを浮かべながらエルと話す。
だがエルは・・・・・。
「いいえ、あなたは嘘をついています。あなたは、学校で一番かっこいい人と付き合えば、女子の中で一番になれると思っています。だって、一番かっこいい人と付き合うことが証明しますからねぇ」
「な、何を言って・・・・・」
明らかに高橋の様子が変化した。
「あはは・・・・・私、ちょっと売店に行ってくるね・・・・・朝ごはん食べてないんだ」
そう言って、高橋は教室を出ていった。
「エル、どういうことだ?」
「はい、それはですねぇ。私、人の心を読む女神なんですよぉ。だから、あの高橋っていう女の心を読んだだけです」
女神特有の能力だな・・・・。
「えっ、それじゃ僕の心も・・・・?」
「ああ、いえいえ。お兄ちゃんの心はフレアお姉ちゃんが強力な魔力で結界を張っているので、外部からの侵入ができなくなっているんですよぉ」
「えっ、そうなのか、フレア?」
僕が問いかけると、フレアは恥ずかしそうに頬をかきながら、
「えっとですね・・・・・はい。ご、ご迷惑だったでしょうか?」
「ううん、ありがとう。そこまで僕に気を配ってくれて」
そう言って、僕はフレアの頭をそっと撫でる。
すると、フレアの顔が赤くなり、頭から白い湯気が出てきた。
そこに、エルが口を挟んできた。
「あっ、そうそう。お兄ちゃんに魔力を使っている分、フレアお姉ちゃんの心の中がバレバレだからねぇ。今でも『へへへっ、ご主人様に頭撫でてもらったー!あっこれだと頭洗えないや・・・・・まぁいっか、グへへ』って思ってますよぉ」
「・・・・・」
僕は少し、フレアとの距離をおく。
「なっ・・・・・!そんなこと思っていませんよ、ご主人様!?どうして私から離れるのですかー!?」
「いや・・・・・僕、清潔じゃない人はちょっと・・・・・」
「ちょっ、エルちゃん!!」
「大丈夫だよフレアお姉ちゃん。このことは私とお姉ちゃんとの秘密にしましょう」
「エルちゃんのバカー!」
そう言って、フレアは泣き崩れた。
そんなフレアを放置したまま、エルが口を開いた。
「そうそう、お兄ちゃん。あの高橋っていう女、あの人、一見悪そうだけど、本当はすっごくやさしくて、頑張り屋さんなんですよぉ。可愛くなるように人の何倍も努力してきたんです。だから、お兄ちゃんが救ってあげてくれませんかぁ?」
そうだったのか・・・・・。
可愛くなろうと、必死に努力して、でも自分のことを見すぎて、他人が見えなくなっていただけかもしれない。
いや、むしろ逆なのか。
他人の目線を気にしすぎて、本当の自分を表に出せないだけなのかもしれない。
どちらにしても、救わなければいけない。
僕が救うことができるかどうかも分からない。
でも僕は、救いたい。こんな悲しい人を見たくない。
「ああ、もちろん!」
だから僕は強く首肯した。