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とある彼女[第二世代]の手紙

しばらくはジャンル恋愛詐欺になると思われます。

うむ、苦しゅうない、読んでつかわす。とおっしゃる奇特な方。

そんな貴方の応援で成り立つ小説です。



 日当たりの良い窓辺で、一目で上等なものとわかる夏仕様のレースカーテンが風に揺れた。その光を孕んだ白い袖が窓際に置かれた机の上を掠め、慌てた素振りでカーテンの波が引いていく。机の上には未使用ページがもう残り少ない日記帳と思わしき本。

 白い袖がめくったページを、差し込んだ光が恐る恐るというように覗いた。




親愛なるお母様へ



 天国[そちら]の居心地はいかがでしょうか? お母様の大好きな花々がたくさん咲いていればよろしいのですけど。

わたくし、マリカは元気につつがなく過ごしております。

 今日、お兄様方は約3ヶ月ぶりにお仕事以外の理由でお出かけになりました。レン兄さまはご友人と一緒に狩猟へ。ソウ兄さまも同じくご友人と一緒に、少し遠出をして絵を描いていらっしゃるそうです。ソウ兄さまの新作は久々なのでとても楽しみ!

 お可哀想なお兄様方(特にレン兄さま)は、お母様がお亡くなりになって1年経ってから、やつれていく一方です。・・・原因は言わなくてももちろんお分かりでしょうね。

 我らがお父様は、お母様のお言いつけ通り1年の間は真っ当な領主としてきりりと凛々しいお姿を民衆にお見せになっていらっしゃいましたが、ちょうど去年のお母様が亡くなったその日から、お母様を思ってお嘆き遊ばしています。お酒をお飲みにならないだけマシというものでしょうか。

 ラキナス叔父様がいらっしゃって下さらなければ、お兄様方は今日もご友人からのお誘いをお断りになっていたことでしょう。今ちょうどお父様の書斎から叔父様の檄が飛んでいます。本当にお母様の弟君だけあって頼りがいのある素晴らしい方です。


 話は変わりますが、最近ようやくお母様がおっしゃっていた「サクラ」の木と思われるものが見つかりました。ちょうど春のことで、その言葉にできない見事な光景をお母様と一緒に見ることが出来ないことが残念で仕方ありません。ラキナス叔父様も、お母様にお見せできなかったことを、大変大変残念がっておいででした。

枝ぶりの良いものをお兄様たちと選んで、外庭と中庭に一本ずつ植え付けを行いました。来年の春が今から楽しみです。

 そうそう、庭と言えば、今年の夏も兄さまたちとわたくしの花がきれいに咲きました。庭師のみんなが丁寧に手入れをしてくれるおかげです。お母様にならって、わたくしもみんなとお茶をするようになりました。たまにソウ兄さまもお菓子作りをなさいますの。とってもお上手ですのよ?


 ・・・秋の一月[ユヌ・オータム]が、とうとう来月に迫りました。

 お父様や叔父様やお兄さまたち、そしてお兄さまのご友人までもがいろいろと手を尽くして下さったのですけれど、わたくしの入学は決定事項となってしまいました。詳細は・・・今は止めておきますわね。

 とても憂鬱ではありますが、お母様のご助言とお言いつけをしっかり守って、頑張っていきたいと思います。



貴女の娘 マリアンナ・マリカ・エレノアールより、愛をこめて


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