入学編Ⅲ
入学式からはや一週間がたった。
僕は霊谷と仲良くなり今じゃ名前で呼び合う仲になった。
心配していた夜桜もクラスの子と仲良くなり兄としても安心。
それとコレはおまけだが霊谷の人形、秦さんもクラスに溶け込んでいる。
てか制服どこから調達したんだよ。
さて今日は僕にとっては楽しみでたまらない日だった。
なんと今日は授業で訓練室を使う日なのだ。
そのせいか今日は朝から気分がいい。
「はーい。次の時間は訓練室だから早く移動してね」
そういうとこのクラスの担任リサさんは教室から出て行った。
「夕星。早いとこいこうぜ」
「そうだな。霊谷」
霊谷に返事を返すと魔装が入った風呂敷を手に持ち霊谷と訓練室に向かった。
「なあ。夕星。見せてくれよお前の魔装」
「どうせ授業で見せるんだから。それまで我慢しろよ」
僕はうんざりした風にいった。
いや実際うんざりしてるけど。
「ちぇ。まあそうだな。今回は確実に見れるからいいか」
ちなみに授業用で使う魔装は《梓弓》である。
《天羽々斬》は感情を喰わすこれは戦場などではいいが授業などでは危険なことである。
感情を喰わせるとその分理性などがなくなる。
無論敵味方の区別もつかなくなる。
その点《梓弓》は安全この上ない。
《梓弓》は感情を高めることで強くなる。
これでなら、なにがあっても理性をなくさずにすむ。
「今回って合同授業だったのか」
霊谷が今の訓練室の状況をみて呟いた。
「そうみたいだな」
訓練室は人であふれていた。
いや男女一列に並んでいるから本当に溢れるほどいるわけではないが。
「はい。みんな静かにしてー」
B組の担任になったらしいシャルロットさんが前で定番のセリフをいっていた。
それにこの場にいた生徒全員が静かになった。
「はい。今日はまず各クラス一名に3D訓練の無限モードをしてもらいます。早速ですがその一名を決めてください」
シャルロットさんがそういい終えるとまた騒がしくなった。
一番はやく決まった組はB組であった。
「B組からは私、イリアス・イワノフが出ます」
ここにきて知ったがイワノフ家は最近有名になった。
魔法使いの家だ。
ちなみに魔法は昔から存在していた。
ただしコイツはすごく嫌なやつだ。
いや嫌なやつなんかじゃいい足りない。
僕はコイツと始めて出会ったときのことを思い出した。
「はぁ。つまらない」
僕はようやく退屈な授業から開放されたためかため息を出して呟いた。
さっきの授業は魔法基礎の授業だったが、授業で話されること全てが僕にとっては小学生のとき学んだものばかりだった。
眠らなかった自分を褒めたい。
そんななか来客者は現れる。
「リット・グレイセスはいるか」
うわぁなんかいかにも英国貴族ぽいのが来た。
「はい。ここにいますがなんですか。イリアス・イワノフ」
リット・グレイセスらしき人物が面倒くさそうな様子もださずに答える。
いいや。僕は興味ないし、ここの図書館で見つけた援護魔法の基礎って本でも読もう。
そういえばグレイセス家は確か援護魔法の専門家だったよな。
イワノフ家は聞いたことがないけどグレイセス家は何度か耳にしたことあるな。
それに援護魔法のジャンルは僕にはまだ未開拓なものであったためそれなりに興味があった。
しかもこれが以外にも役に立つものだかり。
たとえば対象の気力を回復させるとか、魔法による攻撃の威力増強のもの。
ほかにも簡単な治癒のものもある。普通の魔法では同時に魔法を使うのは困難であるが援護魔法はそれを破り簡単に何重にも魔法を掛けれる。
これを利用すれば戦争はもっと楽に進めると思うのだが。
「援護魔法ごときで名家とはこれは面白い。あんなの戦場で役にたつか」
あまりよく聞こえなかったがたしかにアイツはいった。
「援護魔法が戦場で役に立たつか」と。
「おいそこの鳥頭」
なんで鳥頭といったかはアイツの髪型が鳥みたいだったからだけである。
「鳥頭。それはこの私のことを言っているのか」
「ああそうだよ。お前以外に誰がいる」
「なんだと」
イリアスが怒っているのが誰でも理解できた。
「援護魔法が役に立たないって、じゃみせてやるよ。お前が役に立たないといった援護魔法の力」
僕は最近覚えた援護魔法を発動した。
相手の足に加わる重力を十倍にする魔法を。
これは普通に《加重》をするよりもスマートになおかつ早く出せる。
「この程度の魔法簡単にとける」
さすが名家の魔法使い。
すぐに《加重》に対して対比の魔法が出せるなんて。
だけど僕の攻撃はまだ終わっていないよ。
次に僕は一点にだけ魔法をかけた。
足と手に《加重》をかけた。
立ち上がりそうだったイリアスが再び地面に手と足がつく。
「くっ。なんだよこれ」
「お前がバカにしていた援護魔法だよ」
そこで僕は魔法を解いた。
「魔法になあ。バカにしていいジャンルなんてないだ」
僕はドスの利いた声でイリアスに向けて言った。
一瞬彼は怯んだがすぐさまにさっきの威勢を取り戻した。
「ハッ。そんなこより。貴様名前はなんだ」
答える義理はないがここまできたらノリだ。
見ている観客もとい生徒のためだ。
「高峰夕星」
「夕星。名前は覚えた今度は覚えていろ」
そう言い捨てて彼は教室からでていった。
「あの。高峰君」
自分の下のほうから声がした。
声がするほうに目を向けると僕より二十センチくらい低い娘がいた。
確かこの娘がリット・グレイセスだったよな。
「はい。なんですか」
「助けていただいてありがとうございました」
いやあれは単に僕が援護魔法をバカにされたのに一方的にキレタだけなのに。
「いや。ただ援護魔法のことをバカにしたのが許せなくって」
「高峰君は援護魔法のことが好きなのですか」
確かに僕は最近援護魔法に興味がある。
「うん。好きな方だと思う。それと僕のことは名前で呼んでくれ。妹の夜桜と紛らわしいからそうしてくれると助かる」
「はい。よろしくお願いします。夕星」
それがイリアスとリットの出会いだったな。
そしてあれ以降イリアスは僕と何かと競い合う。
しかもその空気をクラスメートが変に察して僕によくこの手のものを回すようになった。
そして今回もそれは例外ではなかった。
A組のあちらこちらから僕の名前が出てきた。
そして隣にいる霊谷からの一声で僕の出場は決まった。
「ここはやっぱり。夕星しかいないだろ」
そしてらあちらこちらから「夕星頼んだぞ」等の言葉が出てきた。
僕はしかたなしに立ち上がり前にでた。
「A組。高峰夕星でます」
その後C組からも出場者が決定し、誰からするのかの順番を決まった。
順番はイリアス→僕→C組の人
早速、イリアスが無限モードを進めた。
さすがの名家なのかレベル50までは余裕だった。
しかしそれは魔法、魔装全てを使ったものである。
僕が前したときは魔装と身体能力だけでチャレンジをした。
たぶんイリアスはよくもって100くらいはもつだろう。
イリアスは僕の予想通り105までもった。
そして出される3D画面を見て彼は驚愕の色を見せていた。
「誰だレベル100のhabakiriってやつは」
僕はそれに覚えがあった。
それはこの前した時ランキング入力の名前入力があって僕はなにも入力せずに終わらせようとしたけどそれをリサさんが許してくれず。
結局天羽々斬の自分流の呼び名である羽々斬(habakiri)にした。
僕はそれに無視を決め込むことにした面倒ごとはごめんだ。
がそれを壊すものはいた。
「残念だはね。夕星。あなたの記録破られちゃったはよ」
あんたって人は。
「なに、貴様なのか」
うわぁぁ面倒なことになった。
「ならこれでは不公平ではないか。私は今回が初見なんだぞ。高峰は二回目で慣れているではないか」
「分かりました。では僕はハンデとしてレベル100の強さから初めてください。無論記録はレベル1からです」
正直これでどこまでいけるかわからないが今回は魔法も使うから50はいけるかな。
僕は右手に《梓弓》をはめた。
僕は3D訓練場の入り口に向かおうとしたが夜桜に止められた。
「兄さん。待ってくださいこれを持っていください」
そう言って投げられたものは僕が始めてチューニングした《MHハウンドドック》だった。人口型の魔装はその人用にチューニングが可能である。
たしか僕があの二つをもらったときに夜桜がお守りとして欲しいといったから上げたんだけ。
「サンキュー。夜桜」
ここまできたらあともう一つ欲しいものをいうか。
「リサさん。訓練用の高周波ブレードってありますか?」
突然の僕の問いにリサさんは困りながらも答えた。
「ええ、あるけど。使うの?」
「使わせてください」
「許可するわ」
リサさんが持ってきた高周波ブレードを腰のズボンとベルトの間にはさんだ。(高周波ブレードには鞘がある)
僕が訓練場の中央に向かうまで数々の罵声が飛び込んだ。
「魔装を二つ使うなんてありえない」
「かっこつけるな」
などなど。
まあ全部無視したがどうせ始まれば全て分かるし。
画面にカウントダウンが目の前に出てきた。
3,2,1,START
さすがレベル100でのスタート。
初っ端から〈クラシュックウルフ〉が出てきた。
《梓弓》で弓を作り出しその矢を放った。
3Dオブジェクトのウルフは砕けた後にはなにも残らなかった。
続いて、同時に五体の〈クラシュックウルフ〉が出現さすがレベル100スタート出現数もアトランダム。
楽しめる。
今度は《MHハウンドドック》に魔力をこめた。
僕は夜桜のように《変化》の魔法が得意ではない。
そもそも僕に得意魔法は存在しない。ただどれも平均以上なだけ。なにかが飛びぬけていいものはない。
だから僕は策を作る。使えそうなものは使う。周りからバカにされようとも。
だけど魔力を利用した弾ぐらいなら作ることはできる。
引き金を五回引いた。
〈クラシュックウルフ〉は五体とも砕けた。
レベル50まで僕は肉体に対しても魔装による攻撃にたいしても一切魔法を使っていない。
魔装によるスキルも。
そしてようやく始まった無限モード特有の一秒一体出現。
このまえは出現するたびに倒しっていたが今回はあえてためていた。
外野から「もうだめだな」と(具体的にはイリアスだが)いう声が漏れた。
ここが攻め際か。
僕はこのとき初めて魔法を使った。
《跳躍》
僕は地面をけった。
しかしそこにウルフも飛んできた僕はそのウルフの頭を蹴りさらに高く飛んだ。
宙に浮いたまま銃をしまい僕は空いた左手を右手の手首に掴んだ。
「るー。援護頼む」
Yシャツの胸ポケットから出てきた僕の使い魔は欠伸を一回すると僕の頭の上に跳んだ。
「しかたないな。魔法変形」
るーは変形を始めた。
僕は使い魔をかわいいから持っているのではない。使えるから契約して持っている。
るーは今、右目で片目型のめがねになっている。
「ルー。《炸裂矢》を使う」
《炸裂矢》とは《梓弓》にある。原始能力である。これは古代魔装に元からある強力な能力である。
人口型も第五世代でようやく全機が出来る儀術が出来上がった。
「分かった。ショットポイントはここだ」
僕は左目を閉じた。
めがねのガラスから十字の印が動いている。
その中で中央に十字があった。
「合いました」
その言葉と同時に矢が放たれた。
放たれた矢は一体のウルフに当たった。
そして当たったウルフから四方に光の矢が炸裂した。
僕が地に着く頃には大量にいたウルフが一体も残っていなかった。
ここにいた誰もが今起きた出来事に処理できずにいた。
さっきまで訓練場に大量にいた魔獣がたった一回の攻撃で全滅したのだ
原始能力を使ったとはいえ、一瞬の出来事だった。
そしてようやく沈黙から歓声に変わった。
どこからかしこも僕を称える声がした。
しかし僕はそれをしっかりと聞く時間はなかった。
まだ無限モードは続いているのだ。
今度は腰から高周波ブレードを抜いた。
さすがにさっきの攻撃は魔力を消耗しすぎた。
《梓弓》は通常なら感情だけを消費して攻撃するが原始能力では大量の魔力を消費する。他の古代魔装はここまで魔力を消費しない。
だけどこうゆうときって援護魔法は役にたつな。援護魔法は消費魔力が少なく済むから助かる。
僕は高周波ブレードに《硬化》《鋭利化》の二重魔法をかけた。
そして自分自身の体には《加速》の魔法を掛けた。
早速現れたウルフに僕は駆け出した。
僕がウルフの懐にきたのは本当に一瞬だった。
援護魔法で強化された高周波ブレードでウルフを斬りつけた。
その後の僕の行動は全てが一瞬だった。
僕の記録はレベル236までいった。
これは授業が終わるまで僕が倒れなかったので。
チャイムが鳴ったと同時にわざとやられたからこれで終わったのであってたぶんもう一時間やっても僕は記録を伸ばせていたと思う。
イリアスはやはりというか最後のほうは黙っていた。