入学編Ⅱ
「はーい。みんな席に着く。入学してばっかで騒ぎたくなる気持ちは分かるけど。とりあえず席について」
その人物はリサさんだった。
神無月は「またな」というと自分の席に戻っていた。
とはいっても、僕の斜め前のせきだけど。
僕は特に驚きもせず前を見ていた。
しかしそれはあくまで表面上だけである内心「えーどうして」などの疑問の嵐に包まれている。
だって普通こうゆうのって担任とかがするんじゃないの。
「はーい。私は1-A組の担任兼魔装、魔法の授業を教えるリサ・グリーウィッドです。変に先生とか言われたくないかリサって呼んでね」
リサさんはそのことを笑顔でいった。
その笑顔でここのクラスの男子のほとんど全員が、女子のほうも半数がリサさんに落とされた。
無論僕はそのほとんどには入っていない。
「まあ、私がやることは基本的には実戦訓練の見張りとさっきいった魔装、魔法の授業それとホームルームの担当だからよろしく。それじゃあとは騒いでいいわ」
それを合図にクラスのほとんどがリサさんの所に向かい質問攻めをしていた。
その中にはさっき友人になった神無月のすがたもあった。
(あいつ。なにやってるんだ)
隣にいると思った夜桜はもうクラスメイトとの交流を楽しんでいた。
さて一人で暇な僕の雑学、魔装は日本では長たらしいので魔装といわれている。
一応ここにきてからは長たらしいがキャストウェッポンと言っていたがもうなんか面倒だからいいや。
話相手もいないし、今の状況下で僕同様のやつは一人もいない。
しかたなしにカバンから情報端末を取り出し、一つのアプリケーションを起動させた。
情報端末とは電話、メール、電子マネー、クレジットカード、通帳、インターネット何でも出来る便利アイテム。普及率は一世紀前にあった携帯と同じくらいだ。
今、僕が起動させたアプリケーションは普通の人では起動できないものだ。
多少、魔力がある人でなければ起動しない。
このアプリは魔法式を作るためのアプリである。
魔法は頭の中で式を演算で割り出す。魔装を用いでば普通に発動するより早く発動させる。
僕の場合はどれだけ魔力を消費せずに効率よく発動させる式を作ることとオリジナル構成術式を作るためだけに作り上げたアプリである。
これは余談だが世界公式でもこのアプリはある。
世界公式版は新しく作った構成術式を作り終えたら自動的に世界中に配信されてしまう。僕はそれを出来ないのを作り上げた。
そしてこの行為は犯罪である。
まあ黙っていれば誰にもばれないからいいよね。
うん。
一人で納得すると僕は早速この前作り掛けにしていた式を開いた。
新しい式の内容は《加速》と《加重》の同時発動の構成術式。
この二つを普通に発動させると一度に片方しか出せない。
隙ができてしまえば相手にとってはかっこうの獲物である
それは戦場でも命取りになる。
そこで僕が考えたのは二つの式を組み合わせることだった。
当初の僕はこんなの誰も思いつかないなんてバカみたいと思っていたが実際に作業を始めると困難だということが理解できた。
元の式はあくまでその一つを発動させるために作られた式それを二つ組み合わせようとするのは元々無理なことであった。
よって僕の作業は振り出しに戻りなんとか今、九十パーセントまで完成した。
たぶん今日のこの時間で作り終えると思う。
僕は情報端末にキーボードを差し込み、キーボードを打ち出した。
情報端末の画面にさっき打ち込んだ英数字の羅列が画面いっぱいに映し出されていた。
126538372hdhagdjsdgkvhbagdjfaj
864635636ncbdha7dfhsjjgsdjhajgs
53628749857584bagdgebsjivmtiajdjs
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傍から見ればなんの法則があるか分からない英数字の羅列。
しかし、高峰家の裏の仕事をせずに僕はのうのうと過ごしていたわけではない。
この手の魔法のことを僕は幼い頃から学んでいた。
だから二つの術式を組み合わせるのに戸惑ったのは最初の一回こっきりだけ。
とそうこうしているうちに式が完成してしまった。
そして教室が静かになっているのをいまさらながら気がついた。
情報端末から目を離し、教壇のほうをみたそこには誰もいなかった。
授業は終わったのか?
なんであれとりあえず一仕事終えた僕は一回体を伸ばして、式のデータを保存して、なにか飲み物でも買いに行くかと思い立ち上がり後ろを振り向くと。
そこには人がいた。
詳しくいえばここのクラス全員がいた。
僕はとっさに左手を前に突き出し、魔法を発動させようとした。
《記憶消去》
これも僕が編み出した魔法の一つ。
相手に対してこちらが考えている対象の記憶を消す魔法である。
しかしそれは止められた。
「こら。なんの魔法かわからないけど。人に向けない」
リサさんによって僕の発動中だった魔法は消された。
心の中で舌打ちをしどうすべきか考えを巡らす。
「すいません」
僕のその声には全く謝罪の気持ちなんてこれぽっちもだしていない。
「それより。すごいな。夕星。なんて速さで打ってたんだよ。こっちは目がついていけなかったぞ」
なにも知らなかったと思われる神無月に僕は安堵をしながらも未だに警戒をやめてなかった。
そのせいか声は少しとげとげしいものになる。
「別にたいしたことないよ」
その後は質問攻めにあうのがリサさんから僕に代わった。
僕はこの時間の残りを自分がしていたことを理解したやつがいないかという恐怖感にかられながら過ごした。