週刊・歴史を読む 年末特別号
初筆、乱文、主人公最強、チート状態、リア充爆発しろ、ある意味残酷な描写、R-15(主観)の非道徳的百合描写が含まれます。
上記に不快感を覚える方は、直ちに閲覧を中止して、人気作家さんの小説へどうぞ。
本編は次から。読み飛ばしても全く問題ないです。
「この世界の中で、真実とやらの価値はどれだけのものがあるのだろうね?」
-聖輦都市サン・ランセル・アルカンシェル第十二代教皇セラエス三世猊下・ナザリア城塞講和会議にて-
新暦1675年12《絶色の》月30《末日》日付
週刊・歴史を読む年末特集号より抜粋
「影の英雄、実在証拠発見される」
全世界的に有名な、150冊にも及ぶ大歴史書であるファンタズマゴリア動乱記。発表当時酷評された外伝「世界を救った影の英雄」の主人公、ユーリー・アルテリア・クラニアムが実在した証拠が、各国の機密文書公開にともなう、サンアンジェルス学院歴史研究科の調査によって発見された。
「世界を救った影の英雄」は現在も娯楽小説不滅の金字塔としてアークライト社から刊行されている人気作である。(本誌記者も読書感想文の題材にした)世界を救った英雄の息子が、700年後に再来した破滅から世界を救う。というシンプルな冒険活劇であり、発表当初、識者からは酷評を、一般読者からは絶賛を受けた。
この作品が有名になったのは、作品が優れていたのみならず、当代最高の歴史学者が執筆したという点によってである。優れた政治家にして教育者であるバーゼル・フォン・アークライトが、このような娯楽小説を、よりにもよって彼の最大の著作であるファンタズマゴリア動乱記の外伝として、死の間際に公開したこと。この影響は当時の新聞を見れば、絶大であったことがわかる。本紙を含めメディアは一斉に彼を非難したほどなのだ。
絶大な人脈と労働から得られる莫大な資料を、綿密な考証のはてに、精緻極まる記述を以て世界における一つの歴史、重厚な筆致で書き上げたアークライト氏がどのようにして、文字道理『正式な歴史』から消された一人の少年を書き上げたのか。
以降の特集でその謎に迫っていきたい。
……というわけだ。ここで、読者はご存知かもしれないが、外伝の序文を紹介しよう。かの有名な『我が生涯の友に捧ぐ』である。
―――封歴701年
全世界を覆った、破局的魔力暴走事件。通称「地獄の顕現」が人魔連合の「オペレーション・ヘルズゲートアタッカー」によって終結を迎えてから701年が経過したこの世界、ファンタズマゴリアで、人々は平穏といってもいい時間を過ごしていた。
無数の知的生命体が、国家を成し、世界の覇権をかけて争った大戦期を経て、交渉と陰謀をもって世界の行く末を定める時代には入ってからすでに300年以上が経過していた。
戦争を失い、あらゆる技術革新が停止した結果、停滞し爛熟しきった社会は腐敗を始めていた。そんな腐臭に惑わされたのか、戦乱の痛みを忘れた人類が再び覇権を求めだし、異族の帝国が野望を打ち砕かんと剣を研ぎだしたちょうどそのころ、ある一人の少年が、北の森から旅立とうとしていた。
彼の名はユーリー・アルテリア・クラニアム、銀髪の小柄な少年は、優しい家族に見送られ、遥かな異国の地へと旅立っていく。
目指す地は独立学究都市・サンアンジェルス。まだ見ぬ学び舎と友との出会いに胸を膨らませながら、彼は足を踏み出していた。
この時の彼は知らない。彼に秘められた秘密は、世界をも揺らがしかねないものであることを。それ故に、彼は自らの関知しない点から、厄介事に巻き込まれ続けることになることを。
しかし、彼によって救われたものは数多く、多くが世界を動かす側にまらったのは何の皮肉なのだろうか。
ただ一人救われることがなかった彼こそが、最高の英雄であったにもかかわらず。
ただ一人決して称賛されることがなかったというのに。
いやそれ故に、私を始めとした者たちはそのような地位を目指したのだろう。我々が語ることで、彼の名を、彼の功績を永遠にするために。
他の奴等はわからない。少なくとも私はそうなのだが。
彼が残した記憶結晶を元に、彼の業績を間近に見ていた私が、彼の生きざまを書き記すこと。それこそが、親友であった私の勤めであると考える。
この物語は、幾多の学生の命を救い、世界大戦を終結に導いた、一人の少年、ユーリー・アルテリア・クラニアムの年代記であり、あの激動の時代、陰謀の中心点となった学園都市サンアンジェルスの歴史である。
いつの日か、かの悪夢がおとぎ話と成り果てたとき、この本の役目は始まるだろう。
今は無き神に祈る事すら、私には許されない。
封じられた世界の真実が、未来において歴史に刻まれることを願う。
探究者よ、我が後継よ、私を疑え。
あらゆる定説を破壊せよ。その裏側にこそ真実の欠片があると知れ。
この本を、今は我が永遠の友に捧ぐ。
いつの日か、祝杯を共に。
サンアンジェルス市長兼学園総長、帝国宮内侯爵、共和国元老院議員、連合参謀公爵、皇国春宮大師バーゼル・フォン・アークライト著「ファンタズマゴリア動乱記外伝-世界を救った影の英雄-」前書より抜粋
この外伝は長らく歴史的価値のない老人のたわごととして扱われていたが、戦乱の英雄たちが記した日記が公開された結果、にわかに信憑性を帯びてきた。
彼らの日記のみならず、個人的書簡にまでユーリー・アルテリア・クラニアムの名が頻出していたのである。皇帝や共和国大統領といった大物たちも、彼の実在をほのめかすような記述を残しており、学会ではにわかにユーリー・アルテリア・クラニアムの実在が取りざたされることになったのである。
現在も調査は続行されているが、彼の生地や両親等は全くつかめていない。もしも本著の記述が正確ならば、彼はとんでもない存在になってしまう。もっとも、彼の養い親がとんでもない存在である以上、十分にあり得ることだと本誌記者は考えているが。
次から本編が始まります。
突っ込みどころ満載ですが、どうかご勘弁を、、、。