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SCGの魔眼使い  作者: 西城優
第一章
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学生寮

 SCGの本部を後にして彩華学園学生寮の近くに戻ってくる頃には、日はすっかり沈んでいた。


「任務お疲れ様です。素晴らしいお手並みでした」


 インテリジェント・デバイスであるセーラが鏡矢に賞賛の声を送る。

 鏡矢は苦笑しながら首を横に振った。


「自分では、あまり手際が良かったとは思えないな。神崎さんを無理やり抱えたりしてしまったし。……不快な思いをさせてしまったかもしれない」

 

 申し訳なさそうな顔をする主人に向けて、セーラは一つの報告を行う事にした。


「先程、その神崎さんからメールが届きました。音声にて再生します」


 メールの文面を把握し、インテリジェント・デバイスに搭載されている機能『記憶音声』にて、記録してあった神埼の声を解析し、神崎綾の声になったセーラがメールの文を読み始める。


『今日はご迷惑をおかけしました。任務とはいえ、不安で一杯だった自分を助けてくれた時はとても嬉しかったです。それに、お姫様抱っこされた時は思わずぽーっとしてしまって……あわわ! い、今の何でもないです! 忘れてください! コホン。えーと、メールの用件なんですが、今日の事の謝罪に加えてもう一つ。一週間後の土曜日に西ノ宮でお会い出来ないでしょうか? つ、都合が悪いのでしたら無理にとは言いません。お返事を待ってます。最後に、ありがとうございました。柄の悪い人達と戦っていた時の、鏡矢さん、か、かっこよかったです!』


「…………」


 嫌われていなかった事への安堵、加えて何とも言えない気恥ずかしさから、沈黙の後に鏡矢は咳払いをする。


「以上がメールの文面です。嫌われる所か、とても慕われていますね」

「セ、セーラの記憶音声は相変わらずすごいな。まるで本人が話しているようだったぞ」


 話をずらす為に、鏡矢はパートナーの能力へと話題を移した。

 記憶音声は簡単に言ってしまえば、セーラが神崎の声を真似て話しているに過ぎない。だが、そこはあくまで機械なので、本人の声との一致率は九十九、九%。録音再生でいいのではないかと思われるかもしれないが、記憶音声は電話の録音だけでなく先程のようにメールの文面を音声として再生出来るという利点があるため、インテリジェント・デバイスを持つ者の多くはこの機能を好んで使用している。


「お褒め頂きありがとうございます。話を戻しますが、ご主人様は神崎さんの申し出を承諾するのですか? ちなみにですが、来週の土曜には何の予定も入っていません」


 暗い夜道を歩きながら考えて、鏡矢はセーラの質問に返答する。


「……承諾する事にするよ。土曜に予定が入らないよう、SCGにメールを飛ばしておいてくれ」

「かしこまりました」


 しばらく道を進むと、やがて彩華学園の校門が見えてくる。

 その門をくぐり、鏡矢は右、左、真っ直ぐに分かれた道の内、右へと進路を取る。

 真っ直ぐ進めば校舎等の学業専門の施設があり、左右の道は彩華学園に所属する学生の寮へと繋がる道となっている。

 左は女子寮。右は男子寮。基本性別の違う者が寮に入るのは禁止されているため(教師や寮での仕事を任されている大人は例外)、生徒の間で間違いが起こる心配も無い。

 もっとも、当の学生達はそれに不満を覚えているのだが。

 彩華学園の敷地は広大だ。校門から学生寮までに掛かる時間は五分から七分。休日などで外に出ていて、門限ぎりぎりに校門に辿り着いたのでは学生寮まで間に合わない。

 しかし、SCGのメンバーに選ばれた鏡矢はその門限時刻が他の生徒に比べて一時間遅めの七時に設定されている。

 現在の時刻は六時十分。普通なら門限破りな時刻に鏡矢は堂々と男子学生寮へと入っていく。

 靴を脱ぎ、下駄箱へと閉まって上履きに履き替える。玄関傍にある階段を登り、最上階にある自分の部屋へと鏡矢は向かう。

 途中、階段ですれ違う男子生徒がこちらを見ていたが気にしない。

 最上階に辿り着き、廊下の奥へと進む。手前から四番目の部屋、504号室が鏡矢の部屋だった。


「ただいま」


 誰に言うでもなく呟き、鏡矢は部屋の中へと入る。

 部屋は一つにつき二人が共同で住む相室となっている。が、504号室には鏡矢しか住んでいないため、本来の機能をその部屋は発揮していない。

 帰ってきてからする最低限の事を済ませ、鏡矢はすぐさま二段ベッドの下の段へと潜り込む。


「ご主人様。着替えはなさらないでいいのですか?」

「ああ、三十分程度睡眠を取るだけだ。時間になったら起こしてくれるか?」

「承知いたしました」

 

 セーラの了承を得て、鏡矢はゆっくりと瞳を閉じる。

 意識は、だんだんと暗闇の中へと落ちていった。

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