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SCGの魔眼使い  作者: 西城優
第一章
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暗躍する者

 午後十二時を迎えた西ノ宮グリーンパークには大勢の人々が押し寄せていた。

 カップル、家族連れ、友人同士でここを訪れている誰もが楽しそう、または幸せそうな顔でグリーンパーク内を闊歩している。

 だが、その中で一人だけ例外的な存在がいた。

 グリーンパーク内に設けられたベンチ。そこにその男は腰掛けている。

 虚ろな瞳に感情がないかのような表情。夏だというのにローブを身に纏うその男は、誰からどう見ても異質だった。

 しかし、誰もそんな彼の事を見ようとしない。いや、まるで彼の存在に気付いていないかのようだった。

 ふいに、男のローブのポケットが振動した。男はローブのポケットから携帯端末を取り出し、それを耳に当てる。


『あーもしもし? こっちはスタンバイばっちりだけど、青谷クンの方は準備出来てる?』


 青谷と呼ばれたその人物は、何の感慨もなさそうに首を頷かせる。


「ああ、問題ない。いつでも作戦を実行に移せる状態だ」

『そーかいそーかい。いやー青谷クンの能力は便利だよね。周りの人間に自分の存在を認識させない能力。言ってしまえば透明人間のようなもんだ。俺らの仕事には打ってつけの能力だよなあ』

「ステルス化と一緒にしてもらいたくはないな。俺の有する認識不可サイコ・キャンセリングはステルス化のようなチャチな能力などではない」


 姿を透明にする能力は存在するが、青谷の能力、認識不可は姿を消す能力よりも優れている。

 目の前に青谷がいても、相手はその存在を認識できない。例え相手が探知能力者であったとしても、それを相手は認識できない。

 何者にも青谷を認識する事は出来ない。彼が身に宿す能力は、ある種最強の能力だと言える。

 青谷の電話先の人物はカラカラと笑い、青谷の言葉を肯定した。


『だよねえ。青谷クンだけは敵に回したくないなあ。つくづく味方で良かったと思ってるよ』

「……敵に回したくないのはお互い様だ。遠野」


 電話先の人物、遠野は楽しげに笑う。


『まあ、俺の能力もなかなか危険ではあるからねえ。青谷クンの存在が認識できなかろうが問題なく殺せるだろうし』

「…………」

『うそうそ。冗談だよー。そんな事をマジで言ったら青谷クンに寝首取られちまう』

「ふん」


 どうでもよさそうに青谷は電話から自分の傍に置いてある鞄へと意識を向ける。

 その鞄には爆弾が仕込まれていた。とはいっても、このベンチが壊れる程度の範囲の威力しかないのだが。


『じゃあ無駄に駄弁るのもそろそろ止めにして、作戦の確認をパパッと行っちまおうぜ』

「爆弾による小規模な爆発によって、グリーンパーク内の人間を外へと非難させる。その状況下で放送室からターゲットの名前を呼び、特定の場所へと呼び寄せ、襲撃する」

『ありゃりゃ、全部青谷クンが言っちゃったか。ま、手間が省けたから構わないけどね』

「いや、俺からお前に確認していない事がある。遠野、お前は放送室を無事に占拠出来たのか?」


 青谷の問いに、遠野は電話越しにニヤリと笑みを浮かべた。


『当たり前だろー? 放送室にいた奴全員縄で縛りつけて、ロッカーの中に押し込んでやったよ』

「間違っても殺したりは?」

『してないって。依頼された事は徹底して守ってるっつうの。まあ、ムカついたりしたら殺っちまったりするかもしれないけど』

「…………」

『はいはいいつもの冗談ですよー。少しはパートナーを信用しろって。全く、青谷クンは心配性だなあ』


 ピッと電話の通信を切り、青谷は左腕につけている腕時計へと視線を向けた。

 時間は十二時十分を指している。作戦決行時刻まで、あと十五分だった。

 青谷はターゲットとなっている人物の名前を静かに呟く。


「高天原鏡矢」


 この間知ったその名前の人物には何の恨みもない。だが、裏を返せば何の感情も青谷は抱いていなかった。

 とある人物に任務を依頼された。だからそれを遂行し、報酬を得る。

 青谷は時計から視線を外し、空を見上げた。晴れ晴れしい青空は、やはり青谷に何の感慨も抱かせなかった。

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