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SCGの魔眼使い  作者: 西城優
第一章
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麻薬密売の三人組

 第三鉄鋼工場跡地。

 数年前に機能が停止された工場内は埃っぽい事この上ない。昼だというのに工場内に光は指しておらず辺りは薄暗い。

 そんな工場内の最深部に、とある三人の人物が立っていた。麻薬密売を仕事としている能力者三人組である。

 それぞれとても麻薬密売人とは思えないような格好だった。しかし、彼らの纏う雰囲気からは常人とは異なるものを感じる。


「田島、辺りの様子はどうだ?」


 スーツを着崩している男、川寺帯斗かわでらたいとが、周囲探知をその身に宿す能力者、田島十寺に話しかける。


「問題ない。まあ、取引先もまだこっちには到着してないみたいだけどな」

「はあ、さっさと終わらせてどっかで飲もうぜ。こんな埃っぽい所に長いしたくねえよ」


 アロハシャツに金髪という装いの人物、紅和臣くれないかずおみは気だるげな声を上げる。


「そういうな。取引時刻まであと十数分ある。それに、金さえ手に入れられれば問題あるまい。この取引で、一気に百万単位の金が手に入るのだからな」

「ちぇ、分かってるよ」


 川寺に諭され、紅はポケットに手を突っ込みながら、地面に置かれているトランクへと目を向ける。

 この中に入っている麻薬が数百万の金になると考えた瞬間、紅はにやりと笑みを浮かべた。


「俺らの準備は万全だ。田島の周囲探知があれば警察に突き止められようが対処などいくらでも出来る。それに、俺と紅がいれば戦闘になったとしても遅れなど取るまい」


 川寺と紅は、自分達の能力に自信を持っていた。

 レベルB、中級能力者に位置づけされるだけの能力をこの二人は保有しているからである。

 

「まあ、その通りだな。もし万が一戦闘になったら、ちゃんと俺を守ってくれよ」

「もちろん分かっている」

「自分の身は自分で守ってくれた方が助かるだけどなあ」


 田島がこの二人に信頼の言葉を掛けるのは、二人の能力を知っているからこそだった。

 川寺が身に宿す能力は火炎地獄ファイヤーワークス。辺りに火を顕現させ、自在に操る能力だ。

 過去に火災事件を起こした事があるが、本人はそれに罪悪感を覚えたりはしていない。

 もう一人の人物、紅が保有する能力は電光石火ボルト・エッジ。自らの体の速度を高める身体能力向上系の能力である。

 そんな二人と組んでからこれまで、一度たりとも麻薬密売を失敗した事はない。この先も、ずっと失敗などしないだろうとも思える。

 田島はにやりと笑みを浮かべる。

 それは、これから膨大な金が手に入るという歓喜の気持ちと、自分達を阻める存在なんていないだろうという想いからくる高揚感の表れだった。

 

「お、敷地内に反応を発見した。予定時刻ぴったりだ」

「一応聞くが、そいつら以外の反応は?」

「いや、どこにもない。取引は無事に成立するだろうぜ」


 念入りに尋ねてきた川寺を安心させるために、田島は明るい声で返答する。

 

「俺はここを出たら冷たいビールが飲みたいね。ついでに女が傍にいてくれれば最高だ」

「お前は酒と女の事ばかりだなあ、紅。他に欲しいものとかないのかよ」

「今に始まった事でもあるまい」

「おいおい、二人してひでえ言いようじゃん。お前らだってパアッと自分の欲しい物とかに金使うだろうが。田島、お前なんてこの間でバイク何台目だよ」

「確か十二ぐらいだな」

「ふむ、田島も人の事は言えないようだな」

「そういえば、川寺って全然金使わないよな。なんで?」

「俺は金は使うのではなく、貯める事に意義を感じるのだ。通帳に数千万という文字が並んでいると心が安らぐ」

「え~、信じられねえ~」


 これからの金の使い方について、三人は楽しげに話し合う。

 

「そろそろ買い手がここに到着するぞ。二人とも、気を引き締めてくれ」

「分かった」

「あいよー」

 

 各々が声を返し、視線の先にある扉へと注意を向ける。

 カツ、カツと、扉の向こう側の廊下から足音が響いてくる。指定された工場最深部へと迷いなく向かってくるその足音を聞いて、彼らは扉の向こうにいる人物が買い手で間違いないだろうと考え、三人で頷きあう。

 そして、足音は扉の前でぴたりと止まった。両開きの扉が、ゆっくりと開かれていくのを三人は確認した。

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