ソード・ブレイド
出番のやってきた鏡矢と村雨は、エリアの中央へと移動する。
すると、その中央に二つの仮想画面が現れ、二人が彩華学園の生徒であるかをデータで調べ上げていく。
『高天原鏡矢、村雨樹、両名がこの学園の生徒であるという結果が出ました。模擬戦を許可します』
機械的な声がエリアに響き渡る。仮想画面が消え、エリアの端に時間が表示された。
『制限時間は五分。時間以内に決着がつかなかった場合、よりダメージを受けているものが敗者となります』
エリア内に響く声の説明を聞いて、村雨はにっと笑みを浮かべる。
「手加減なんてしなくていいぜ! 俺も全力でやらせてもらうからな!」
「……お手柔らかに頼むよ」
『それでは、試合スタート!』
試合を知らせる声がエリアに響く。
後ろで列に並んでいる生徒達も、暇つぶしにと何人かエリア内で行われようとしている模擬戦へ目を向けている。
そして、試合が始まった時に鏡矢はふと疑問を抱いた。
「村雨、お前の能力は物がないと使えない能力だろ? 何も持たなくていいのか?」
村雨の能力、剣刀性質は物体に剣や刀と同じ力を付与させるという能力だ。割り箸やシャープペンといった物が剣や刀になるのだから恐ろしい能力だが、村雨はその媒体となる物体なるものを手に何も持っていなかった。
「高天原、俺は確かに物体に力を付与させるっつった。けど、物体を持っていないと使えないとは一言も言ってないぜ?」
「? どういう事だ」
「つまり、こういう事だ!」
村雨の腕に淡い光が灯った。腕の縁を流れるその光は、昨日物体へと力を付与させた時に発生した光と同じ色。
その腕を振るい、村雨は数メートル離れた鏡矢の元へと駆ける。
「なっ!?」
「油断禁物だぜ! おらあああああ!」
反応が遅れた鏡矢の胴体目掛けて、剣と化した腕が迫る。
攻撃を受け流そうとせず、地面を強く踏んで鏡矢はバックステップを行う。その動きのみで、村雨との距離が大きく開いた。
「やっぱりすげー! ただのバックステップじゃ数メートルも距離を離せないものな」
村雨の言葉に返答せず、目の前に立つ能力者の力量を測る。
(突きの動作に一切の無駄はなかった。おそらく剣や刀自体の扱いに慣れているんだろう。体の一部である腕なら尚更だ)
そして、昨日村雨がわざわざ割り箸に能力を付与させて説明をした時の事を鏡矢は思い出す。
(腕にも力を付与させる事が出来るのなら、最初から腕で俺に能力の説明をすれば良かったはず。あれが最初から模擬戦を視野に入れての事で、能力の誤認を生じさせるための仕込だったとするなら、こいつは中々強かだ)
相手の目を見据え、鏡矢は村雨を評価する。
「じゃあ次の攻撃、行くぜ!」
村雨は体勢を低くして、地面を滑るように走る。
そしてその時、村雨の片腕、両足にも光が灯るのを鏡矢は見た。
「喰らえ! 村雨流剣技、乱れ桜!」
突き出された右腕を交わした時、逆方向から鏡矢へと左足が接近していた。
間一髪でそれを避けても、すぐに上から左腕が振り下ろされる。
四本の刃が、乱れるように鏡矢を襲う。
(文字通り『手刀』というわけか。足にまで付与が可能とは)
が、鏡矢は冷静にその一つ一つを避けていく。まるで全ての攻撃の軌道が見ているように。
そして、わずかに隙の出来た胴体へと鏡矢は拳を放った。
「がはっ!」
放たれたそれは風を切り、村雨の腹へと命中した。後方へとわずかに飛ばされて、村雨は腹部を押さえながら膝をついた。
「た、ただのパンチが、お前の能力だとこんなに威力が上がるのかよ」
能力が動力操作だと信じている村雨に、鏡矢は苦笑気味に返す。
「まあ、俺からすれば、お前の能力の方が羨ましいけどな」
その言葉を聞いて、村雨はついていた膝を起こし、立ち上がる。
エリアの端に表示された時間は、残り三分を切っていた。




