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最後のピロートーク

作者: 三条つばめ
掲載日:2026/04/24

「……ねえチサト、もう寝た?」


「……ん? まだ起きてるよ?」


「ちぇっ、起きてたか」


「おい、寝てたら何かしようとしてたんか?」


「んいや別に~、オーちゃんに悪戯してやろうなんて、一切思ってないよ~」


「じゃあチサトが寝るまで、絶対寝てやらんからな」


「ふふ、頑張れ~」


「んじゃあ、眠気覚ましに煙草でも吸うわ」


「ついでに私のも取って~」



  *



「……なあチサト」


「……なあに?」


「……ごめんな、お前を巻き込んじゃって」


「別にいいよ、私はオーちゃんの彼女なんだから、一心同体みたいなもんだよ」


「マジで取り返しのつかないこと、しちゃったんだな。でもすべて俺の蒔いた種。罪を軽くしようと誰かのせいにしようとしても、結局責任の矛先が自分に向かう。この堂々巡りが……」


「しょうがないよ。あんまり自分を責めちゃだめ」


「本当にごめん。俺、罪の重さに耐えれる気がしない。これから死ぬまでずっと、この罪を抱えて生きていかなきゃいけないと思うと、俺……」


「オーちゃんは一人じゃないでしょう? 私がいるじゃない。だから大丈夫! 私に任せてれば、絶対楽になれるから!」


「……何をしてくれるの?」


「う~ん、とりあえずおっぱいでも揉んで、元気だしな!」


「……お尻の方がいいな」


「なーんだ、元気じゃん。ほら、揉め揉め~」



  *



「……」


「どう? 黙々と揉んでるけど、満足した?」


「…ありがと、でもやっぱり息が詰まって苦しいや」


「そっか」


「……なあ、キス、してもいい?」


「オーちゃんはかわいいこと言いまちゅねえ~。いいよ、いっぱいしよ?」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……どしたん? なんかいつもより激しくない?」


「……いや、あまりにも胸がずきずき痛くてさ」


「……」


「なんか、俺たち二人、なす術もなく海の底に沈んでいるみたいだ。すげー眠たくて、すげー苦しくて、意識も薄まっていく中、二人でわずかな酸素を分け合いながら、何とか生き延びている感じ」


「なんだかポエミーだねえ。そんな恰好いい理由つけても、本当は私とチューしたいだけなんでしょう?」


「……」


「……ふふ、いっぱいしよっか。酸素が尽きるまで、ね?」



  *



「……ねえ、チサトは、なんでそんなに優しいの?」


「……」


「……俺はチサトの優しさに甘えてたんだ。俺がいなければ、チサトは無駄な業を背負うこともなく、幸せに生きられたはずだ。自分で抱え込んで、一人どこかで死ねばよかったんだ」


「……でもそれが出来なかったから、私を巻き込んだんでしょ? 君が一人で抱え込む度胸も、一人で死ぬ意気地もなかったから。私がいないとどうしようもない人間のクセに、後悔したって今更遅いよ」


「……」


「そんな物悲しい顔すんなよ。全部自業自得なんだ。逃げたり他人に頼っても、どの道その先の運命は受け入れなきゃいけない。どうせ悪い結末なんだから、その先導は私にさせてくれよ」


「……お願い……します」


「……大丈夫。私も、同罪になるんだから」


「……?? 本当に何を……」


「ほらほら、チューするんでしょ? 早くしないと、窒息して死んじゃうよ」



  *



「……」


「……ふふ、どうしたの? 舌の動きが鈍くなってるよ?」


「……ごめん、本当に眠たすぎて……」


「ね、顔見れば分かるよ。明らかに目がほっそくなってるもん」


「……」


「あはは! ちょっ、くすぐったい! 指で私の体なぞるのはやめてよ!」


「……なんか、チサトが遠くに行っちゃう気がして。ちゃんと今目の前にいるのかなって思って……」


「……安心して、私はどこにも行ったりしない」


「……」


「……だから、何も考えず、ゆっくり息を吐いて、力を抜いて。最後にキス、してあげるから」


「……うん、ありがと……」


「……」


「……チサト、おやすみ…………。大好きだよ」


「……おやすみ。私も大好きだよ、オーちゃん」


「……」


「……」



  *




「……」


「……」


「……ねえ。……もう、寝た?」


「……」


「……寝ちゃったか」


「……」


「……ごめんね。でも、こうするしかなかったの。もうオーちゃんの辛そうな顔、見てらんなかったよ」


「……」


「……ふふ、君はやっぱり、寝顔が一番綺麗。穏やかで清々しくて、希望に満ち溢れてる顔。このままどこかに飾っておきたいなあ。……まあもう意味ないんだけどさ」


「……」


「……よかったね、オーちゃん。もう悩みも恐怖も、強迫も不安も感じなくていいんだよ。今までよく頑張ったね。やっと、幸せになれるね」


「……」


「……さて、私もそろそろ限界かな」


「……」


「……大丈夫、絶対オーちゃんを一人にはさせないから。その覚悟くらい、できてるから」


「……二人で堕ちよ? どこまでも、どこまでも一緒だよ?」


「……」


「……じゃあ、またね。大好き」



  *




「……」


「……」


「……」


「……」


 …………。

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