第6章 愛という名の支配
夜になっても、「箱庭」の明かりは消えない。
少女たちの夢を管理し、その安らぎをエネルギーへと変換するシステムが、24時間稼働しているからだ。
ノアは隠れ家の机で、盗み出したデータをホログラム展開していた。
【システム解析:信仰循環回路】
【入力:祭礼周波数(祈り) → 変換:心理エネルギー → 出力:中枢コア(ユードラ)】
「……完璧な搾取構造」
ノアは冷たく呟く。
胸の奥で、何かが軋む。
これは、怒りだ。計算できない、理不尽への拒絶。
ユードラの「愛」は、単なる感情論ではない。この世界を維持するための動力源として、少女たちの信仰心を効率的に回収するシステムそのものだった。
痛みを与え、救済を与え、依存させる。そのサイクルが、最も効率よくエネルギーを生むように設計されている。
「気持ち悪いな、これ」
隣で地図を覗き込んでいたカイルが、苦々しく吐き捨てた。
レジスタンスの作戦会議は佳境に入っていた。
決行は三日後。「聖誕祭」の当日。
ユードラが全エネルギーを取り込み「神」になろうとするその瞬間を狙い、中枢コアを叩く。
「俺たちが囮で警備を引きつける。ノア、お前はその隙に祭壇へ」
カイルの言葉に、ノアは計算する。
成功確率 42%。リスク高。だが、他に手はない。
ノアは静かに頷き、自身の「武器」である言葉のリストを再確認した。
【使用可能言霊:『停止』『修復』『拒絶』……】
言葉は万能ではない。魔力を消費し、精神を削る。
無駄撃ちは許されない。一語一語が、命の重さを持つ弾丸だ。




