8.チワワの行く先
「ぐらんどがいあうるふ…?」
華子は首をかしげる
「吾輩が見間違えるわけありませぬ!その風格!佇まい!どこをとっても狼神様に間違いありませぬ!」
しゃがんでチワワのお腹を撫で繰り回す華子に青年は言う
「あぁ、ようやくこの地に降臨くださった…!こうしてはおられぬっ。母上にお伝えせねば!」
矢継ぎ早に語った青年は、すくっと立ち上がるとすぐに来た道を戻って行ってしまった
「何だったんだ、今のは。訳のわからんことばかりぺらぺらと。」
「今の人、きっと、鬼人だよ。」
アンチャの呟きに華子はティニーに代わりアンチャを支え起こす
「おにびと…。種族的なものか?アンチャ君。」
「うん、頭に角が生えていたし、そうだと思う。本でしか見たことないけど。」
「では、ぐらんどがいあうるふ…とかいうのは分かるか?」
「ウルフなら知ってるけど…。狼人って種族で、母さんよりも見た目が狼な種族だよ。ぐらんどがいあってのは聞いたことないや。」
「ふむ、するとまずは先ほどの彼に話を聞くのが良さそうだ。目指す村に関係があればいいが。」
どうしたものかと考える華子に先ほどのチワワを抱えたフェミニが駆け寄ってくる
「ん、わんちゃ。」
フェミニは華子の足元にそっとチワワを降ろす
チワワは華子の足を咥え、必死に引っ張り出した
「ん?どうした?」
アンチャを支えながらチワワの頭を撫でる
「そのコ、ついてこいいってル。」
「ティニー君分かるのか!?」
「ティニー分かるの!?」
華子とアンチャが同時に驚く
「うン。はやたロウ、案内すルって。」
「それは助かるな。早太郎君、頼むぞ。」
「きゃんっ。」
チワワは来た茂みの前まで行くと前足をあげて勢いよく振り下ろした
ズンッと響く鈍い音とともにチワワの前の草木が押しつぶされた
「「はっ…?」」
「「おぉー。」」パチパチ
華子たちの反応もよそにズンッズンッと草木を押しつぶしながらチワワは進んでいく
「す、すごいな。この世界のチワワはこんなこともできるのか。」
華子は目の前の異様な光景に驚きを漏らす
「わんちゃ。」
「母サマ、いク。」
チワワの後ろを追いかけ始めたフェミニを指さすティニー
「そうだな。ではアンチャ君。また、移動するぞ。」
華子はアンチャを抱え上げ2人の後を追う
数十回の地響きの後、草木は開け、舗装された道が現れた
土を固めただけの道だが、初めての人の手が加えられたものを見て一定水準の文明が栄えていることを華子は感じた
道の先に村の門のようなものが見え、反対側は丘の先まで続いている
「早太郎君、あの村が君たちの住んでいるところか?」
「わふっ。」
「そうだっテ。」
チワワは返事を最後に村へ駆け始めた
「まだ、心配事はあるが早太郎君を信じてみようか。」
4人はチワワの後を追って村の門まで進む
村の門は木の枠に板を張り合わせた簡素な設計で門の前には簡易的な防具を身にまとった門兵が立っていた
4人がその人物を視認できるほどの距離に来るとその門兵は先ほどの青年と同様に片膝をつき頭を垂れた
「お待ちしておりました。長から貴方様をご案内するよう命を受けておりますのでどうぞこちらへ。」
立ち上がった門兵の視線は華子から抱えられたアンチャへ移った
「人族…?なぜこんなものがk。」
「あ?」
一瞬にして周囲の空気が凍った
華子の全身の毛が逆立ち、視線は門兵の目を捉える
突如としてかかる重圧に門兵は冷や汗をかきながらぶるぶると震えだした
「わたしの子供たちをもの呼ばわりとは…。死にたいのか貴様。」
意識を保つことで精いっぱいな門兵の目がだんだんと白目に変わる
華子の放つ圧は3人の子へかかることはない、が目の前の門兵の容態の変わりように3人は驚き華子の顔を覗く
出会ってから見たことのない表情に3人はおろおろとすることしかできない
門兵が泡を吹き始めたその時
「待ってくれなんし!」
村の奥から現れた女性が華子を制止する
ふっと消えた重圧に門兵は意識を失いその場へ倒れこむ
華子が向けた視線の先には、着物をまとい尾が3つに分かれた女性と、ぼこぼこにされた顔で引きずられた先ほどの青年がいた




