1.君も家族にならないか
「えっ…?」
アンチャは驚いて声を漏らす
華子は落ち着いた声で続ける
「これは、わたしの我儘だ。人は幸せになるべくして生まれる。わたしはそう信じている。君たちが誰からも必要とされないなんてことはありえない。わたしは君たちが生きていることが嬉しい。君たちにどんな因果があろうとも、こうしてわたしのもとに来てくれたことは事実だ。わたしは君たちの幸せを願う。わたしの全てはわたしの家族のために。」
華子の周りの光の粒が4人を包む
華子が話終えると光の粒はそれぞれの指に吸い込まれた
アンチャの右手の親指
フェミニの右手の小指
ティニーの左手の中指
華子の指にもそれに呼応するように文様が浮かぶ
「指が…。」
現状を整理できていないアンチャ達は華子と自分の指を交互に見つめ戸惑いを隠せずにいた
「どうやらこれがわたしに発現したスキルらしい。ただただ家族のた…めに…。」
華子は自身の指を見て顔をゆがめた
左手の薬指にも浮かぶ文様
それが意味することに確信を持ち、喜びがこみ上げる
〔龍ッ…〕
「母サマ…?」
突然歪んだ華子の表情にティニーは心配そうに問いかける
「すまないな、大丈夫だよティニーくん。」
安心させるようにティニーの頭を撫でる
「嬉しかったんだ。今のわたしにとってこんなに嬉しいスキルはない。家族のために使えるなんて素晴らしいじゃないか。」
「で、でも…家族にしか使えないなんて。」
「おっと、アンチャくん。わたしはこの力をハズレなどとは思わないぞ?わたしもスキルを得て気づいた。様は考えようだな。スキルの力は付加価値でしかない。現にわたしの本質はわたしのままだ。」
「じゃ、じゃあ。ぼくたちのスキルも?」
アンチャは失った左手の付け根を撫でながら問う
「絶対とは言えないがおそらくはな。…と、いうわけでまずはお話をしようじゃないか。君たちの今後のこともあるし、家族となるのならわたしのことも知っておいてもらわねばな。」
華子はすくっと立ち上がり3人声をかける
「遊びに行くぞっ!」
両手を突き上げ叫ぶ華子にびっくりするアンチャ
華子の真似をして両手をあげるフェミニとティニー
「こんな薄暗いところで話すのもなんだから、一緒に外を見てみようか。」
「そと!」
フェミニが声をあげる
「フェミニちゃんは外が好きか?」
コクンとうなずくフェミニ
「そうか、ならば!」
華子はフェミニを肩の乗せる
「ミニ、ズルい!母サマ、自分も!」
「まぁ、待て待て。順番だ。次はティニー君の番だからな。」
脚に抱き着き肩車をねだるティニーの頭を撫でる
「こんなに喜ぶ2人を見たのは久しぶりだなぁ。」
「ん?アンチャ君も乗るか?」
「だ、大丈夫!」
「そうか?なら、出発しようか。外がどんな場所かわたしにも分からんからな。安全が分かるまでみんな離れるなよ?」
肩にフェミニを乗せ、ティニーと手をつなぐ
アンチャが少し後ろをついてくることを確認しながら4人は光の差し込む方へ歩みを進めた




