13.出発前夜
華子はなんとか人化をマスターした
魔力がどうのと言われるよりも、狼の骨格や筋肉といった身体構造を理解するという理屈をもとに人体に作り替えるという荒業だ
人型の華子には魔力が伴っていないようで、超人のような力も土属性の力も使えない
言わば元の世界の華子だ
しかし、亜神と姿を行き来することで能力を使うことができる
普段は人として過ごし、もしもの時には力を使う
そんなスタンスを取るようにした
「3人とも随分と成長したものだ。よく頑張った、わたしは誇らしいぞ。」
3人の教育も順調に進み、簡単な読み書きと四則演算を解くことができるようになっていた
3人の変化というと、まずアンチャの手足には義手義足がはめられている
これは華子が土属性の使い方として金属が含まれると考えたことによる産物だ
現世での加工技術をもとにこの世界で見つけた比較的軽い鉱物と村特産の獣皮を使用して完成させた
重量故に簡素で最低限の駆動しかしないが歩行し生活する分には問題なさそうである
「これで足手まといにはならずにすむかな。ありがとう母さん。」
フェミニは大きい力は使えぬものの、そよ風を起こしたり、指先から水滴を出したり。火花を起こすことができるようになった
雅にこっそりと教わっていたそうでフェミニの髪には狐の尾があしらわれた髪留めがつけられている
これは華子が作成したものであるがフェミニに頼まれた時には酷く嫌そうな顔をしていた
せめてもの抵抗として材料は華子の尾の毛を使用している
「ミニも頑張った。」フンス
ティニーは獣人との交流を通じて自身のルーツを探った
犬、猫、猿、羊、熊
5つの主となる動物が合わさっていて遺伝子にはさらに
魚、鳥、蛇、恐竜とすさまじいハイブリッドであることが判明した
今は主である犬の特性が大きくでていて運動能力が3人中で一番になった
過去のティニーが嘘かのように動き回るのでアンチャはとても驚いていた
「走るのたのしイ。」ヘッヘッ
「皆様方、まず目指すのはここから湖へ向かう途中にあるシスイという街でありんす。そこにはわっち等に良くしてくれているフレグラという女性がいんす。彼女であれば貴方方の手助けをしてくれるありんしょう。」
雅は地図を広げ道沿いに指をなぞらせる
「まっすぐ行って5日といったところか。野宿は避けられないか。」
「比較的穏やかな道でありんすから、襲われる心配は少ないでありんしょうけど用心に越したことはないでありんしょうね。」
「虫よけとかになる草なら覚えてるよ!」
「おぉ、それは助かるな。期待しているぞ。」
華子とアンチャは顔を見合わせて微笑みあう
「華子様の御力は極力隠す方向でありんす。危険の際はしょうがないでありんすが厄介事は避ける方向でお願いしんす。」
「あぁ、分かっている。極力気を付けよう。」
「さて、出発は明日にして今日は英気を養うでありんすよ。」
村の家畜の肉の料理に舌鼓をうち4人は寝床へ戻り川の字になる
「母サマ…。」
「ちょっと待ってくれな。よっ。」
華子は人化を解いて尾をティニーとフェミニに包ませる
華子は人化が成功してから慣れのために人の状態で生活をしていた
狼神の姿に慣れていたティニーとフェミニは現世の姿の華子の姿に戸惑っていた
その2人の気持ちを汲んで寝る間だけでもこうしてスキンシップを図っていた
灯りを落とした暗い部屋で華子は話し出す
「みんなにはわたしの我儘で迷惑をかける。でも、わたしと共に行くと言ってくれて嬉しかった。ありがとう。」
「母さんまた迷惑って言ってる。ぼくらが自分で付いていくって決めたから気にしないでよ。それに、母さんの結婚してる人ってことはぼくらにとっての父さんってことでしょ?」
「ぱぱ?」
「そう…だね、パパか。早く龍に会わせてあげたいな。」
華子は目を閉じて龍之介のことを思い浮かべる
「父様はどんなヒト?」
「そうだなぁ…龍はな…。」
4人は眠りにつくまで語り合った
龍之介の黒歴史エピソード100選は3人にとても好評だった




