10.センサ村
「ここセンサ村の住人は全員が亜人でありんす。」
「亜人…。人とは違うのか。」
「えぇ、この国は人類を主として魔の要素を併せ持った種族を総じて亜人と呼びんす。その中でもわっち達は獣人という括りでありんすね。わっちが狐の獣人で夫は羊の獣人といった感じでありんす。」
「するとわたしも亜人となるのか?」
「そちらの小さいお子2人は亜人でありんしょうが、貴方様はそうではありんせん。〈亜神〉。つまりは、神様でありんすね。」
「神…だと?わたしがか?そんなつもりはないのだが。」
「神は創造神によって選ばれるようでありんす。ある日この村にもお告げがあったのでありんす。わっち達住人の全員が同じ夢を見たのでありんす。子供のような姿をした影がこちらに語り掛けてきたのでありんす。」
〈君たちのところに神様が現れるよ。君たちの力になってくれる。だからその人のことを支えてあげてほしい。きっと困っているから。〉
「それがわたしのことだと。」
「えぇ、そのお告げのあった日、皆が同じ夢を見たと騒ぎになりんした。それならば、お告げの内容は真実なのでありんしょうと。そうしたら、あの馬鹿が、勝手に、迎えに行くなどと、村を飛び出しやがり、あろうことか貴方様を案内せず帰ってくる始末。」
雅は膝の上で拳を握りしめわなわなと震わせた
「それであの顔になっていたのか。」
華子は村に到着した時の青年の顔を思いだした
「救いの手を差し伸べてくれるお方にそんな失礼をしたなど。あの馬鹿が、狼神様にお会いしてきました!などと宣ったときは血の気が引きんした。」
よよよと泣き出した雅を真亜斗が支える
「すると、わたしがそのお告げの神だとして、何を望むつもりだったんだ?言っておくがわたしもこの身体に気づいたのはついさっきのことだ。神らしいことなんて何一つわからんぞ。」
華子は愚痴をこぼした
「わっち達は貴方様を縛り付ける気は毛頭ありんせん。貴方様の望む未来のお手伝いをさせていただきたいのでありんす。」
雅は姿勢を正しまっすぐ華子を見つめた後3人の子供に視線を移した
「そちらのお子達は貴方様の子でありんすね。」
雅は優しく微笑んだ
「あぁ、そうだ。わたしの家族になってくれた大事な子等だ。」
「わっちの息子も同じでありんす。わっち等の家族になってくれた。」
「君も?」
雅は真亜斗の手を握り語りだす
「ここにいる住人のほとんどは過去暮らしていた集落を人族に襲われた生き残りでありんす。わっちと夫は人族から逃げる過程で出会いんした。わっち達は同じ境遇の生き残りを集めて助け合う道を模索いたしんした。それがこのセンサ村でありんす。」
「ではあの青年も?」
「えぇ、村として機能しだしたころに訪れたのがあの子とぼろぼろの姿のあの子の母親でありんした。必死だったのでありんしょう。自身は傷だらけでやせ細っているのに、抱えた子には塵の一つものうござんした。」
「それは…すごい母親だな…。」
「その女性はわっちにあの子を託したのでありんす。この子だけは幸せにしたいと亡くなる最後まで…。」
「…。」
「わっちは失う悲しみを知る人が1人でも居なくなって欲しい。愛する家族が理不尽に離れ離れにならないように。それがわっちの願いでありんす。」
「…そうだな。」
「貴方様もその1人でありんす。」
「!!」
華子は息を切らして立ち上がり雅を睨む
ただの八つ当たりだ
自分にはできなかったから
我慢していたことを見透かされたから
「結論から申しんす。センサ村の総力を持って貴方様の愛する家族を探し出しんす。」
「な…なんで。」
華子は膝から崩れてその場に座り込む
「っ!」
「母さん!」
「母サマっ!」
華子の突然の様子に3人が駆け寄る
「信じられないでありんしょうけど根拠は3つ。1つ、貴方様の異常なまでの子供への執着。何をしてでも守るという意思が見えんした。次に2つ、夫とあの子の母の話から貴方様が泣きそうな顔をなさっていんす。その3人のお子の種族が様々なことから貴方様は夫と実子に何かがあったと推察いたしんす。そして最後に3つ目、お告げは貴方様を支えること。貴方様は自身に起きたことに気づいたのはついさっきだとおっしゃりんした。であれば、諦めるのはまだ早いでありんすよ。」
雅は華子の前に膝をつき華子を抱きしめる
「もう我慢する必要はありんせん。もう耐える必要もありんせん。貴方様の願い。教えておくんなんし。」
我慢していたつもりはなかった
耐えているつもりもなかった
失ってしまったものに踏ん切りをつけて
3人のために動くことがわたしの願いだと
でもそれはぽっかり空いた穴に蓋を当てただけで
何も塞がっては居ない
でも、この世界にみんながいるなら
わたしの家族が生きているのならば
それならば
「…龍に。子供達に。家族に会いたい。」




