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9.村の入り口

村の奥から現れた女性は引きずっていた青年をその場へ転がし、華子の元へ足早に駆け寄る

そしてそのままの勢いで綺麗なスライディング土下座を披露した

「誠に申し訳ありんせん!ことはわっちが愚息の手綱を手放した結果でありんす!何卒!わっちの首1つで堪忍しておくんなましっ!」

華子は怒涛に押し寄せる情報に整理が追い付かないでいた

「貴方様を不快にさせるつもりはこの村の誰にもありんせん!何もかもこの馬鹿で単細胞の愚息が先走った結果でありんす!これ!お前も謝りなんし!」

「ぶべっ!?」

女性は転がされた青年の後頭部を掴み華子の前に押さえつけた

明らかにこの村の責任者である女性が着物を砂だらけにして土下座し、息子と呼ばれた青年が頭を押さえつけられ、ぴくぴくしながら土下寝している光景が目の前に広がることに華子は頭を抱えた

「この話の勢いはまさに親子だな。」

「母さん、とりあえず許してあげない?周りの人も、ほら。」

華子の漏らした愚痴にアンチャは答える

これだけの騒動だ、村のあちこちから村民がこちらを眺めている

華子は1つ深い溜息をつき、アンチャを抱えたまま膝をつき女性の肩へ手を置く

「ご婦人よ、顔をあげておくれ。」

肩に手を置かれピクリと身体を震わせた女性は恐る恐る顔をあげる

その顔は涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた

「謝罪は受け取ろう。わたしもやりすぎてしまった。すまない。」

華子が頭を下げたことを女性は慌てて引き留める

「そそそ、そんな!貴方様が謝罪されることなどありんせん!」

「だとしてもだ。子供たちが見ている前でそんな横暴な態度はとりたくないのでな。さぁ、立ち上がってくれないか?」

「承知いたしんした。貴方様の寛容なお心に感謝いたしんす。」

女性はすっと立ち上がり深々と頭を下げた

「それで?わたしに話があるのだろう?」

「そうでありんしたね。詳しくはわっちの家でお話いたしんす。どうぞ付いてきてくんなまし。もちろんご子息様方も。」

子供たちにも許可がでたことに満足して、華子はフェミニとティニーに背に乗るよう伝える

女性は近くにいた人物に耳打ちをし、奥へ急がせた

「この兵士と息子さんはどうする?一緒に運ぶか?」

倒れている2人のことを華子は尋ねる

「そのままほっといておくんなんし。貴方様に失礼な態度をとった輩でありんすからいい罰でありんす。後で適当に人を使わしておきんす。」

「そ、そうか。」

自分と真反対な冷たい対応に心の中で手を合わせておく

「さぁ、こちらでありんす。」

華子は村の様子を横目に見ながら女性の後ろを付いていく

3人も物珍しさからかきょろきょろとせわしなく視線を動かしている

数分ほど歩き、ところどころで女性から説明をもらいながら進んでいくと他の住居とは2回り程大きい建物が見えてきた

「あれが我が家でありんす。貴方様を招待するにはみすぼらしい家で申し訳ありんせん。」

「いや、これでも大きいと感じるくらいだ。ごてごてした場所は落ち着かんしな。」

「まぁ、そうでありんすか。では、こちらでお話いたしんしょうか。今飲み物をお持ちいたしんすから、お寛ぎおくんなんし。」

「あぁ、すまないな。」

華子は背中の2人に長椅子へ座るように言い、その間にアンチャをそっと座らせる

女性が部屋の中心に置かれた机の上の鈴を鳴らすと、お盆を持った初老の男性が1礼をして部屋へ入ってきた

男性は4人の前に木でできたコップを置いた

香りからして何かの果物を絞ったジュースのようだ

華子はそわそわしだした3人のためにコップを手に取り一口口に含んだ

リンゴのような甘みが口に広がる

「これは、美味いな。みんなもいただくといい。」

華子の声に3人もコップを手に取り口をつける

恐る恐るといった様子だったが、一口ごくんと飲み込んだ瞬間、目をぱぁと輝かせ顔を見合わせた

ごくごくと嬉しそうに飲む3人に華子は目を細めて笑った

〔好みのようでよかった。くっ、こんなときにスマホがあれば。〕

華子は心でシャッターを切った。何回も何回も。

「お口にあったようでなによりでありんす。さて、先ほどは醜態をさらしてしまい申し訳ありんせん。」

女性は頭を下げた

男性も女性の横に立ち一緒に頭を下げた

「改めて、わっちはこのセンサ村の長の雅、こちらは私の夫の真亜斗でありんす。」

雅と名乗った女性は隣の男性を夫と呼んだ

華子の胸がチクリと痛む

「本来でしたらしっかりと歓迎させていただくつもりでありんしたが、わっちらの愚息の馬鹿の所為でこんなことになってしまい、あろうことか門兵まで失礼を働く始末。重ねてお詫びいたしんす。」

「私からも謝罪を。誠に申し訳ありませぬ。」

「いや、もう過ぎた話だ。あれだけ躾をされたんだ。ご子息も懲りただろう。それよりもだ。なぜわたしたちがこういった扱いなのか聞いてもいいか?」

華子は当初からの疑問を投げかけた。

少しでもこの現状を知るために

「そうでありんすね。そのためにはわっち共について聞いてもらいとうござりんす。」

華子は雅の目を見てこくんと頷く

雅は少しほっとした顔でぽつりと話し始めた


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