表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

1-8

草原を抜けて、林の縁に差しかかった頃だった。


風の流れが、変わる。


さっきまで一定だった空気が、ぴたりと止まった。


「……ロイ」


「気づいたか」


声を潜める。


エンパシーが、嫌な感情を拾う。


警戒。

緊張。

怒り――いや、縄張り意識。


次の瞬間。


影が、跳んだ。


「っ!」


反射的に身を引く。


視界の端を、鋭い影がかすめた。


――速い。


草を蹴る音。

枝を踏む音。


そして、低く唸る声。


現れたのは、山猫だった。


筋肉のしなやかな体。

金色の瞳。

こちらを睨みつけるその視線は、獣というより――


「……人の目だ」


ノアが呟いた、その直後。


「離れろ」


冷たい声が、林の奥から飛んできた。


人影が現れる。


軽装。

武器は短剣。

無駄のない立ち姿。


山猫は、その人物の隣に静かに並んだ。


――契約獣。


「ここは俺の領域だ」


「侵入者は、理由を話せ」


空気が、張りつめる。


ロイが一歩前に出かけて、やめた。


「……面倒なのに当たったな」


小声で言う。


「私たち、通るだけ――」


言い終わる前に。


山猫が、低く唸った。


「嘘だ」


即答。


「この辺りで、感情が揺れた」


視線が、ノアに突き刺さる。


「お前だな」


胸が、どくんと鳴る。


「……動物、治しただろ」


一瞬。


山猫の尾が、ぴくりと揺れた。


「――触ったな」


声が、低くなる。


「勝手に」


「苦しそうだったから……!」


思わず声を上げる。


その瞬間。


地面を蹴る音。


山猫が――襲いかかった。


「ノア!」


ロイの声。


間一髪で避ける。


爪が、地面を裂いた。


「命に手を出すな」


戦士が言う。


「善意は、責任を伴う」


「背負えないなら、触れるな」


エンパシーが、感情を拾う。


怒り。

恐怖。

後悔。


そして、はっきりとした想い。


――もう、失いたくない。


ノアは、息を呑んだ。


「……あなた」


言葉を探す。


「前にも、契約獣を――」


「黙れ」


短剣が、向けられる。


「次に会ったら、敵だ」


そう言い残し、戦士は山猫と共に林へ消えた。


残されたのは、静寂。


「……仲良くは、なれなさそうだね」


ノアが呟くと、ロイは肩をすくめた。


「だから面白いんだろ」


空を見上げる。


未完成の世界は、今日も静かに軋んでいた。

投稿遅くなりましたーー!不定期ですがよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ