表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

1-6

翌日。

街の色は、また少し薄くなっていた。


昨日まで聞こえていた笑い声が、減っている。

人は歩いているのに、影がない。


「……進んでる」


悪い方に。


エンパシーが、容赦なく感情を拾う。


苦しい。

不安。

期待。

そして――罪悪感。


胸が痛くて、張り裂けそうで。

握った拳に力が入る。


「ノア」


ロイが、珍しく真面目な顔で呼んだ。


「これ以上放置すると、この街は完成しない」


「完成しない?」


「未完成のまま、固定される」


それはつまり。


「……永遠に、ここで止まる?」


「そう」


胸が、きゅっと締めつけられた。


ロイは多分、今日放置してしまったら、この街は壊れたままだと言いたいのだろう。

誰も救えない。

それだけは、嫌だ。


それから、無言のままひたすらに街を歩いた。

たどり着いたのは教会だ。


入ると、少年はそこにいた。


昨日と同じ場所。

同じ笑顔。


でも、感情は――少し、弱くなっている。


「来てくれたんだ」


「……ねえ」


私は、まっすぐ彼を見る。


「もし、この世界が壊れるとして」


小さく息を吸う。


「君の想いが、原因だって言われたら?」


少年は、少しだけ黙った。


それから、静かに言った。


「……分かってる」


「じゃあどうして」


「怖いんだ」


声が、震えた。


「誰かがいなくなるのが」


「誰かに選ばれなくなるのが」


「それでも」


彼は、笑った。


「この想いだけは、消したくない」


――それが答えだった。


《※修正選択を開始》


文字が浮かぶ。


《※感情を制限しますか》


《YES/NO》


「……ロイ」


「聞くな」


即答。


「選ぶのは、お前だ」


私は、深呼吸した。


余白が、見える。


彼の感情が、世界を埋め尽くしている。

逃げ道がない。


どうするのが正しい答え?

彼の想いを無駄にできない……


「ノア。お前はどうしたいんだ」


「私は……」


この街を救いたいでも、この子の感情は抑えたくない。


「お姉さん」


少年が近寄ってきた。


「僕はね。みんなに幸せになってほしいだけなの」


その思いが強すぎたのかもしれない。


そうやって屈託のない笑顔を向けた。


「お姉さん。僕は感情のコントロールを知らない。だから……」


制限して。


彼の頬につぅっと一筋の涙が伝った。


目をつぶり心を落ち着ける。


「……制限する」


声は、震えなかった。


《※修正の実行》


風が吹いた。


強く、でも優しく。


少年の感情が、少しずつほどけていく。


「……あ」


彼は、胸を押さえた。


「軽い……」


「好きだった気持ちは、消えてない」


私は言う。


「独りで抱える重さじゃない」


街に、色が戻る。


人の声が、影が、温度が。


《※進行率:7%》


少年は、少し困ったように笑った。


「……君って、残酷だね」


「……ごめんね」


「でも」


彼は、目を伏せて言った。


「ありがとう」


それだけで、十分だった。


街を出ると、ロイがいた。


「初めてだな」


「なにが」


「自分が傷つく選択」


私は、空を見上げた。


「……これ、慣れない」


「慣れなくていい」


ロイは言った。


「慣れたら、多分……壊れる」


《※次の未修正エリアを検知》


《※対象:感情“後悔”】【規模:中】


私は、静かに息を吐いた。


この世界は、未完成。


そして。


正すことは、いつだって――優しくない。

無事、解決できましたね。良かったです。次の街ではどんなことが起こるのでしょうか。お楽しみに。


今日の投稿は遅くなってしまってすみませんでした!

第七話は年が明けてから投稿します。ぜひ読んでくださいね。

ではみなさん、よいお年を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ