表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

1-5

少し歩くと、活気あふれる街を見つけた。


「ロイ!街だよ」


そういって街に入った瞬間、空気が変わった。


「あれ、?」


さっきまで吹いていた風が、ここだけ止まっている。

人は歩いているのに、足音がやけに遠い。


「……静かすぎない?」


遠くから見た景色とはまるで違う。


ロイは何も言わない。


代わりに、胸の奥がじわじわと痛み出した。


――エンパシー。


勝手に、感情が流れ込んでくる。


不安。

期待。

安心したい。

失いたくない。


「……重」


思わず、呟く。


一人分じゃない。

街全体が、同じ感情を抱えている。


「ノア、ここ長居すんなよ」


ロイの声が、少し低い。


「ここは未修正エリア。しかも感情過多型だ」


「……感情が、多すぎる?」


「逃げ場がないってことだ」


歩いていると、誰かと目が合う。

すぐに逸らされる。


笑顔なのに、どこか必死。


私たちは少し街を散策することにした。

飲食店、武器屋、家。

何もかもが普通に見える。


「感情過多型……」


一見して普通なのに、空気は重く濁ったもの。


「ねえ」


小さな声がした。


振り向くと、少年が立っていた。


銀色の髪。

穏やかな表情。


「旅人?」


「……まあ、そんな感じ」


少年は、ほっとしたように笑う。


その瞬間。


――好き。

――大切。

――いなくならないで。


感情が、一気に押し寄せた。


「っ……!」


思わず、膝が揺れる。


「ノア?」


重い、頭が割れそう。


「……だいじょぶ」


そういったけど嘘だった。


この人の感情、強すぎる。


「君、顔色悪いよ」


少年が心配そうに覗き込む。

顔を上げると心配そうな……


「――っ」


満面の、笑み……


それに、近すぎる。


何で、そんなに、笑顔なんだ。


感情が、また流れ込んできた。


守りたい。

失いたくない。

全部、このままでいてほしい。

この人はもう、この街から出れない。

また、「幸せ」になれる。


「……ごめん」


私は、一歩引いた。


「ちょっと……休みたい」


少年は、少しだけ寂しそうに微笑った。


「そっか」


そしておもむろに手をあげた。


「じゃあ、教会で休むといい」


「……教会?」


少年は笑顔で境界を指差した。


「この街で、一番落ち着く場所だから」


にっこり。

そんな効果音すらも聞こえてきそうだった。


ロイと視線が合う。


嫌な予感しかしない。


でも、行くしか……


そういって入った教会の中は、静かだった。


鐘は止まり、空気が澱んでいる。


「……落ち着く、というより」


「止まってる」


ロイが言う。


そのとき。


《※未修正エリア》


文字が浮かんだ。


《※感情データの集中を確認》


《※処理不能》


「……処理不能?」


「つまり」


ロイが肩をすくめる。


「近いうちにフリーズする」


「街ごと?」


「多分な」


胸が、ぎゅっと締めつけられた。


さっきの少年の顔が浮かぶ。


「……原因、分かってるんでしょ」


ロイは、少し黙ってから言った。


「ああ」


「さっきの少年だ」


「……やっぱり」


「でも、まだ修正できねえ」


「なんで」


「本人が、手放す気ないから」


私は、教会の奥を見る。


誰もいないはずなのに、

誰かの感情だけが、確かにそこにある。


「……ねえ、ロイ」


「ん?」


「これ、正したら」


「誰か、傷つくよね」


ロイは、即答しなかった。


それが、答えだった。


《※警告》


《※感情密度が上昇しています》


胸が、また痛む。


逃げたい、と思った。


「……今日は、帰ろ」


私は言った。


ロイは何も言わず、頷いた。


街を出る直前。


振り返ると、少年が立っていた。


遠くから、こちらを見ている。


優しい笑顔。


でも。


その感情は、今までの表情より――重かった。


「……逃がさないよ」


そう口が動いたのもとらえた。


「……続きは、明日」


自分に言い聞かせる。


でも分かっていた。


この街は、もう限界だ。

第五話は二つ目の街にたどり着き、新しい修正箇所を発見することが出来ましたね。さて、ノアはどんな選択を迫られ、どんな決断をするのでしょうか。

第六話は12月30日、午後9時ごろに投稿予定です。ぜひご覧ください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ