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人は死んだら異世界転生できるらしい。
目の前に広がる大草原を見つめながら、私はひとつ、溜息をついた。
空がやけに青く、風は静かで、世界はあまりにも綺麗だった。
まばゆい光。
迫りくる車。
最後に聞いたのは確か……大勢の悲鳴。
そう、私は――死んだのだ。
少なくともあちらの世界では。
でも生きているということは。
どうやら異世界転生をしたらしい。
「……よくあるテンプレどうりじゃんか!」
思わす声に出してツッコんだ。
だってそうだろう?
事故死、転生、草原スタート。
ここまで来たら、次は神様的な人が出てきてチート能力を授けてくれる流れだ。
……そう思って周囲を見回した。
誰もいない。
声も聞こえない。
いや、聞こえる。
鳥の鳴き声が。
「ってちがーう!神様?説明係の人?いませんかー」
返事はない。
代わりに、鳥の鳴き声と草の揺れる音が返ってきた。
おかしい!!
転生者だよ?
テンプレどうりならもう少し親切なはずだ。
ステータス画面とか、スキル一覧とか、せめて言語理解くらいは―――
考えこんだ瞬間、ふと文字が浮かんだ。
《※物語開始前です》
「ん?」
また文字が浮かぶ。
《※このエリアは、まだ実装されていません》
「……は?」
実装?
今なんて言った?
あわてて瞬きをすると文字は消えていた。
「待って……」
嫌な予感がした。
ここは異世界。
私は転生者。
それはいい。
でも―――。
「なんだ、この世界」
意味が分からなくて頭を抱える。
「おー、お前、誰?」
後ろから声がした。
来た!かみさ―――
そこには少年が立っていた。
「違うんかい」
つい本音が出てしまった。
神様じゃないじゃん。
「お前ここで何してんの。見ない服装だし」
「あいや、その、転生……的な?」
ぽかんとした表情がうかがえた。
「あ、転生者ってお前の事か」
……は?
「いやーさっきさ気持ちよーく寝てたら『転生した奴いるから説明行って来い』って言われたんだよ。ったく人使いあらいぜ」
私の扱いめっちゃ雑じゃん。
「あー俺は転生した人の案内役。ロイだ」
「アンナイヤク」
うん。ちゃんといたのかよ。
ていうか状況が分からない。
「おーーーーい。困るぜフリーズされちゃ。えーと、お前の名前は……」
「あ、希空です」
「おーそうか。この世界では漢字ってもんが存在しねえから、ノアって名乗れよ」
「え、あ、はい」
「んーで。お前のスキルは……お、感情理解と余白認識か。つうことは、なんか見えたりしたかー?」
えんぱしー。
まーじなる。
なんじゃそれ。
知らないし。
見えた?……みえ……あ。
「見えましたよ」
実装がどうとか。
「そうか。んじゃ。軽く説明はこのくらい。なんかあったらまた来るわ」
気づけばそこにはもう誰もいなかった。
「は?」
意味わっかんねえ。
つまり何したらいいの?
《※この世界は未完成です》
「……うん。どうしろと?」
《※正してください》
会話成立してんじゃんかよ。
「正すって言ってもどうやって」
《※自分で考えろ》
「……は?」
口わっる。
よくわかんないけど。
死んだら異世界に飛ばされました。
そこは……まさかの未完成でした。




