09.VS.オオスズメバチ
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
こいつだけは無理だし駄目。
いくら「天敵殺し」とか言って煽てられても、私はこいつの姿見ただけで足が竦む。体が動かない。
大きな体。私達と変わらない飛行能力。しかも、こいつらは数を頼んでやって来る。
どうやったら敵うって言うの?
まさか、オオスズメバチが来るなんて。
◇
ここは、人間の子供達が通う「ガッコウ」が近い。あと、私達のようなクロスズメバチの巣箱を置いている家も結構ある。だから、5月になってオオスズメバチの女王が飛び始めるようになったら、人間達はこれを捕まえて駆除する。だから、この辺りにはオオスズメバチの巣は無いはずだった。
でも、今日、何処からかやって来たのだ。
今までの敵と違うのは、こいつらは仲間を呼んでくること。狙いは、勿論巣の中にいる幼虫達だ。
◇
私はその日、内勤だった。
入り口の辺りの掃除をしていたら、低い大きな音の羽音が聞こえる。こんな音を立てて飛ぶやつはオオスズメバチしかいない。
そいつは暫く巣箱の周りを飛んだ後、一度飛び去る。でも安心しちゃいけない。こいつは仲間を連れてまた戻って来るからだ。
巣内に緊張が走る。
来た。
重低音の羽音が近づいて来た。
「みんな逃げな。」
女王が言う。でも誰も動かない。恐怖で体が動かないのだ。それでも、内勤の働き蜂達は、本能で女王と幼虫を守ろうとする。
◇
オオスズメバチが入り口に止まった。巣箱の入り口は上下に狭く作ってあるから、体の大きなオオスズメバチは入れない。
奴らは、巣箱の入り口を齧り始めた。ベニヤ板で作られた巣箱は簡単には壊せないが、数を頼んで入り口を齧り続けられたら、そんなに長くは持たない。齧り続けてオオスズメバチが入れる所が一箇所でも出来たら、そこで終わりだ、
あの大顎で首を切られる。
みんな、覚悟した。
◇
白い防護服を着た人間が何人も走って来た。手には火のついた煙幕が握られている。
辺りはすぐに煙で真っ白になった。オオスズメバチ達は煙で気絶して地面に落ちる。落ちたオオスズメバチは踏み殺され、壁に止まった奴はハエ叩きで叩き落とされた。勿論私達も道連れで気絶するのだが、人間達はオオスズメバチだけを殺して行く。
気がついたら、オオスズメバチは居なくなっていた。人間は、生け捕りにしたオオスズメバチの一匹に白い紙を結びつけて、放した。
◇
数日後、人間達は、オオスズメバチの匂いのする大きな袋を下げて戻って来た。
そして翌朝、家の中からはオオスズメバチの匂いのする湯気が漂って来た。
食べられたんだ、あいつら。人間に。
人間すごい。ありがとう。
◇
でも私はまだ知らなかったんだ。明日は我が身だっていうことを。




