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ヘボ戦記  作者: 蘭鍾馗


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06. V.S.オニヤンマ

「ジラー!後ろ後ろ!」




 え?

 あっ!後ろからすごい速度で何か来る。


 オニヤンマだ。


 咄嗟に飛ぶのをやめて降下する。というより地面に向かって落下する。

 幸い、巣はもう目の前だったから、そこから地面すれすれの低空を飛んで急いで巣に入る。


 オニヤンマは私を見失って、別の方向へ飛んで行った。


 危なかった‥‥‥!

 いやもう勘弁して●村けんじゃないんだから。


 ◇


 昨日から巣に来るようになった天敵。今度はオニヤンマだ。


 こいつはカマキリと違って空中戦を仕掛けてくる。飛ぶ速さは私達クロスズメバチとは比較にならない。

 速さだけじゃないんだ。あんなに図体が大きいくせに旋回能力も抜群。飛行中に急ブレーキをかけたりもできる。まるで旅客機サイズの戦闘機。

 飛ぶ能力全般で私達はオニヤンマの足元にも及ばない。そんなやつに毎日巣に通われたらたまらない。昨日は10匹喰われたんだ。


女王〜(●ラえもーん!)! 」

「なーにジラー。」

「あいつなんとかしたいの、オニヤンマ。あいつの殺し方教えて!」

「‥‥‥‥。」


 女王、黙り込んじゃった。


「オニヤンマとはねー、戦ったことないのよー。見たことのない相手の倒し方考えるのは、難しいわー。」


「えー当てにしてたのに!また何匹も食べられちゃうよ。」

「‥‥‥ごめんね。」


 うん、わかったわ、今度は自分で考える。女王だって万能じゃない。ドラ●もんじゃないんだからね。


 ◇


 今日は内勤。

 幼虫と女王のお世話が終わってから、対オニヤンマ作戦を考える。


 あいつは飛ぶのが上手いから、飛んでる最中に仕掛けても絶対に敵わない。

 狙うとしたら‥‥‥嫌だけど、どこかに止まって仲間を食べてる最中。

 で、やっぱり後ろから近づくか。あの大きな目は、真後ろも見えてる筈だけど、食事に夢中になってる時なら近づけるかも知れない。私達だって、餌場で肉団子を作ってる最中は夢中になって周りが見えてないからね。

 

 で、カマキリの時みたいに、あの長い腹につかまるか。あそこにつかまれさえすれば勝機はありそう。

 で、腹を根元から嚙み切るか。その前に針で刺しちゃうのもありかも知れない。


 うん、

 うまくやれば勝てそう。


 でも、これは相手が食事に夢中なのが大前提の作戦だから、捕まえた蜂を捨てて飛び立たれたらそこでお終い。空中戦で捕まえられて、今度は私が食べられる番。


 ‥‥まあいいやその時はその時。私も覚悟しよう。


 ◇


 翌日。


 この日は私は外回り。

 餌場と巣を往復してたら、昼前になってあいつが来た。


 オニヤンマだ。


 ちょっと意外だけど、こいつ餌場の鶏肉や砂糖には興味がないみたい。

 鶏肉の陰に隠れて様子を伺う。


 あっ、一匹つかまっちゃった。

 足にかかえたまま、近くの木の梢に運んでいく。

 ごめんっ!絶対仕留めるから許して‥‥‥。


 ◇


 見つからないように真後ろを飛んで追跡する。

 本当は真後ろも見えている筈だけど、すぐ後ろを距離を変えずに飛ぶと、蜂だと気づかないみたい。

 あいつは木の葉の上に止まって食事を始める。


 私は、その木の葉の裏に止まった。

 大丈夫。気づかれてない。


 葉の先に、あいつの長い腹が見えて揺れている。

 今だ。

 葉の裏から飛び出して、あいつの長い腹の先にとりつく。


 あっ。


 驚いたあいつは獲物を捨てて、腹を大きく曲げた。すると、私の体はあいつの足の所に届いてしまう。しまった!腹がこんなに曲がるなんて思ってなかった!

 捕まる‥‥。


 咄嗟に針を出してあいつの大きな胸を裏側から刺した。

 これが効いた。あいつは驚いて、捕まえかけていた私を放す。私は腹の付け根につかまって、大あごで腹を切り落とす。そして、羽も2枚切り落としてやった。


 あいつと私は、絡み合ったままくるくる回りながら落ちてゆく。

 そして、地面に落ちた。もう飛べないみたい。


 勝った。


 私は、残りの2枚の羽根と頭を切り落としてから、胸を齧って肉団子を作り始める。

 近くを飛んでた仲間が2匹やってきた。


「やったじゃんジラ!」

「肉団子にするの手伝うわ!」


 ◇


 これ以後、私は「天敵殺しのジラ」という、あんまり嬉しくない二つ名をもらってしまう。

 まあいいけど。


 女王、やったよ。



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