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ヘボ戦記  作者: 蘭鍾馗


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10/13

10.黒い木の季節

 最近、女王の産卵ペースが速い。



 でも、そこから育ってくる幼虫は、なんだか小さめ。なんだろうな、と思いながらも幼虫の世話をしていると、やがて少し小さめの幼虫は、少し小さめの蛹になり、私達働き蜂より少しほっそりした蜂が出てきた。


 雄蜂だって。

 女王から聞いた。


 雄蜂は針を持たない。護身の手段を持たないから、少し臆病。

 でも、羽化して羽が伸びて、しばらくしたら、迷うことなく入口までやってきて、そこから飛び去って行く。

 これが結構大変な数になる。最近はもう毎日のように雄蜂が巣の入口から出ていく。


 そして、二度と戻ってこない。


 彼らは、他の巣から出てきた雌蜂を見つけて、木の葉の上で交尾をする。そのためだけに生まれてくる。

 それはタンポポの綿毛のようなもの。出来るだけ遠くへ行くことが、彼らの仕事。


 元気でね、って声をかけたい所だけれど、彼らの寿命は私達働き蜂の半分くらいでしかない。だから、彼らの姿には、なんだか悲壮感が漂っている。


 さよなら。そしてがんばれ、私達の綿毛。


 ◇


 女王、最近あんまりしゃべらなくなった。


 冗談も言わないし、昔話もしてくれない。

 最近つまんないよ、って女王に言ったら、女王はこう答えたの。


「ごめんねー。もう少しでお別れなのよー。でも、それまでの間ねー、やることが増えるの。」

 もしかして、女王が前に言ってた「悪い夢」と関係ある?

「ちょっとあるねー。」


 それ以上は、なんだか訊けなかった。


 ◇


 山の木の色が変わって来た。


 人間達には「あか」って言う派手な色に見えるんだそうだ。これをわざわざ遠くから観にくる人もいるらしい。でも、私達クロスズメバチにはこの「あか」は見えない。だから、黒くみえる。そして、日毎に、山に黒い木が増えてきた。そのたびに、少しずつ寒くなってきた。


 秋。

 人間達は、この黒い木の季節をこう呼ぶ。



 私達の巣に、終わりの日が近づいていた。


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― 新着の感想 ―
はじめまして。毎回面白く読ませていただいています。子どもの頃 オオスズメバチに刺されたことがありますが、【風の中のマリア】とか愛読書でして。ハチは好きです。 今回のオスバチ達の話も、ハチ達には黒い木に…
2025/12/14 01:18 佐々木メリー
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