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ヘボ戦記  作者: 蘭鍾馗


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01.十月生まれのジラ

 某スタジオのアニメにタイトルが似てる?気のせいだからね。これは、あるクロスズメバチの巣の物語。

 私は、クロスズメバチの働き蜂。

 ついさっき、蛹から出てきたところ。

 

 幼虫だった頃の記憶はない。

 全くない。

 だから今日が私の誕生日。


 名前?

 それ必要なの?

 話の進行上無いと不便?

 じゃあつけてよ。

 私そういうの良くわかんないから。


 え?ヘボ子とヘボ美どっちがいいかって?


 刺すわよ。



 ▼



 私は、ジラ。クロスズメバチの働き蜂。

 ついさっき、蛹から出てきたところ。

 以下略。


 さあ、物語を始めましょ。


 ◇


 朝、巣箱の入口から陽が射し込む。いい天気だ。

 今日は外に出る日。良い一日になりますように。


「巣箱」って言葉が気になった人、いるよね。

 実は私が生まれた巣は、ある人家の庭先に置かれた巣箱の中にある。ミツバチでもない、青虫を食べる狩り蜂を何で飼うの?とか思うかも知れない。まあ、その答えは、物語の最後の辺りでね。

 それは、この時点では、私もまだ知らなかったことだしね。


 この辺の人達は、私達クロスズメバチのことを「ヘボ」と呼ぶ。「ヘボ子」って名前を付けられそうになったのはそのせい。勘弁してよね。


 まずは巣箱のすぐ横にある餌場に行く。今日のご飯はウグイだ。新鮮なウグイが吊るしてある。美味しそうね。でも、本当に美味しいかどうかは私達には分からない。私達成虫は、固形物を食べられないからね。

 ウグイを噛み砕いて肉団子にする。これを巣に持って帰って幼虫に食べさせる。幼虫は固形物を消化できるから、これを食べて大きくなる。で、幼虫はお返しに液体の甘いエキスを出して私達にくれるの。この「栄養交換」という方法で、私達は共に生きてゆく。


 何でそんな面倒なことをするのかって?良く分からないけど、私達成虫は、速く長く飛ぶ為に、色んなことを犠牲にしていて、そのせいなんじゃないかと思う。例えば、飛ぶための強い筋肉がついた胸部は、その力に負けて凹んだり割れたりしないように、頭や腹との繋ぎ目が極端に狭くなっている。だから、肉を消化できるような太くて長い消化管が通せなかったんじゃないかしら。


 幼虫からエキスをもらって元気が出た。今日は遠くまで餌探しに行ってみようかしら。


 ◇


 行ってきたけど、青虫居なかった。

 もう晩秋だし、餌になる虫は少なくなっている。

 そうなるとやっぱり、餌場があるのは有難い。


 今日はこれでお終い。また明日だね。



クロスズメバチの生態などについては、以下の文献を参考にしました。

「ヘボ(地蜂)騒動記 その生態と魅せられた人々」(西尾 亮平 平成11年9月発行、12年3月改訂)


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