第一夜
家で、四歳くらいの小さな子供が父親と遊んでいた。
父親が言った。
「僕は疲れたから一度気晴らしに外に行こう」
ここ数年、夏は熱帯夜で暑いが、数分のことだからどうにかなるだろう。
ということで、二人で外の庭へ出た。
ここは街明かりが少ない。
だから、星がよく見える。
外に出ると、満天の星空が広がっていた。
夏の大三角を構成するわし座のアルタイル、こと座のベガ、はくちょう座のデネブの三星やさそり座のアンタレスはもちろん、六等星まで見えるのではないかと思うほど、美しい。
子供はもちろん、父親も夜空に吸い込まれるように眺めていた。
子供はあまり夜に外に出なかったので、夜空をまともに見るのは初めてだ。
父親も、仕事帰りにも見たはずの夜空がここまで美しいのは初めてだった。
ここでは天の川も見える。
その大きさに、初めて見る子供は圧倒された。
ただ恍惚と星空を眺めていた父親に、子供が
「抱っこぉ、抱っこぉ」
と言った。
我に返った父親はすぐさま子供を持ち上げた。
子供は頭上に広がる星々に目を輝かせた。
そのとき、一筋の光が目の前を通った。
子供はそのキセキを見続けた。
その後も星を眺めていたら、もうすっかり日をまたいでいた。
見始めた時の暑さはもうなくなっていた。