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第二話 奴隷の労働環境と今後の目標についてお伝えします

 俺がこの異世界に転移してから、もうすぐ二年。

 最初こそ右も左も分からず、言葉も分からず、顔も臭いも汚れも濃い作業員たちに囲まれて「えっ? 俺、もしかして地獄に落ちた?」って思ったけど、今ではすっかり農奴ライフに染まりきった。

 ということで、今回はそんな俺の異世界奴隷事情をお伝えしよう!


 まず我が職場、通称「フリオ農園」では、6勤1休制というしっかりとした労働管理体制が敷かれている。

 つまり、6日働いたら1日休みというアレだ。ブラックに見えて実はホワイト。

 いや、たぶんグレーぐらい。限りなくダークグレー。

 

 日曜日以外が急に休みになることもある。

 なんど「雨が降ったら休み」だ。

 いや、ハメハメハ大王かよ。


 勤務時間は午前9時から午後5時まで。昼に1時間の休憩があり、その時間はパンとスープが支給される。

 このスープがまた曲者で、日によって味が違う。肉が入ってる日はアタリ。野菜しかない日はハズレ。たまに謎の浮遊物が入っている日があって、そういう日は自然と誰も話さない。スープの器をできるだけ視界に入れないようにしながら、なるだけ早くスープを飲みきる。

 それが農奴たちのルールだ。


 そして夜は暗い。

 街灯なんてハイカラなものはこの農場には無く、夜になったら本当に何も見えなくなる。

 だから、「夜勤」なんて言葉はこの世界では存在せず、「残業」という概念もない。

 やったぜ。


 そんな俺の給料は――

 月に16万メソ。

 ちなみに1メソは日本円で言うところの1円だと思ってくれていい。


 ……めちゃくちゃ悪い金額には思えないかもしれないが、実はここからいろいろ天引きされる。

 まずは食費。次に住居費。あとは奴隷服のクリーニング代、そして謎の“施設維持費”とか、“交流会費”とか……

 そういうものが差っ引かれ、手取りはだいたい8万メソちょっと。

 つまり日本の感覚でいうと、月収8万円の底辺生活。


 ただ、まあ、ぶっちゃけ、生活はできる。

 朝・昼・晩の三食が提供され、宿舎もある。服も奴隷服がタダで支給される。

 つまり、働きさえすれば健康で文化的な最低限度の生活が保障されている……ような、気がする。

 たぶん。


 ただし。

 雨が降って休みになったら、その日の分の給料はきっちり減らされる。

 風邪をひいて寝込めば、その分もガッツリ減る。

 この世界、就労保険も労働組合も無いので、そういう時は「働けないお前が悪い」で済まされる。


 もちろん文句は言えない。なぜなら俺たちは、この世界で最底辺の奴隷だから。


 でもこの生活から抜け出す方法はちゃんとある。

 それは――

「自由市民」になること!


 つまり、奴隷から市民に身分をランクアップさせれば、人間らしい生活を取り戻すことができるのだ!

 そのための条件は2つ。


① ご主人さまの許可を得ること。

② ご主人さまが奴隷解放税を国に支払って、俺を正式に解放してくれること。

 

 ……ね? 簡単でしょ?


 ……簡単じゃないって? ほう、君は勘が良いようだね。


 そう、奴隷が市民になるのは、とてもハードルが高い。


 まず1つ目。ご主人さまから許可をもらうこと。実はこれはほぼクリア済み。なぜなら、うちのご主人さまは、見た目も中身もふくよかな、慈愛あふれる農園主フリオさんだから。農奴である俺のことを「コウタくん」って呼んでくれるし。多分この世界の農園主で一番優しい人。

 だから、お願いすればいつでも許可はもらえるはず。


 問題なのが、②の奴隷解放税。

 その額なんと、1000万メソ。ゼロが七つ。10,000,000メソ。


 いや、誰が払えるか!!


 実はこちらの世界では、奴隷は人間ではなく、モノ扱い。だから奴隷は税金を払わなくて良い。

 税金を払うのは市民以上なんだけど、奴隷を「解放」するときは、「所有者」が、その「所有物」である奴隷を「人間に戻す」ために、国に1000万メソという罰金……じゃなくて、税金を払わなきゃいけないのだ。


 もちろんそんな大金、フリオさんだってホイホイ出せるわけがない。ていうか出してくれるはずがない。なので、その分は奴隷本人が貯金して雇用主に渡すのが通例。

 ということで。

 俺が自分で、1000万メソを貯めるしかないのだ!!


 ちなみに毎月の目標貯金額は、6万メソ。

 それをコツコツ積み立てていけば、14年後にはゴールできる計算だ。


 ……14年。


 なげぇ。なっげぇな、おい。


 でもまあ、浪費しなければ不可能ではない。


 ちなみに、そんな俺の現時点での貯金は――約20万メソ。

 少なっ!!!!


 というのも、異世界転移直後の俺は、右も左も分からない状態で、欲望のままにジュースやらお菓子やらを買いまくるという、もらった給料を秒速で使い切る地下帝国民みたいな生活をしていたのだ。反省はしている。


 でも、今は違う。もう無駄遣いなんてしない。節約のための生活の知恵も身につけた。


 ということで、俺の今の目標は「節約して、6万メソを毎月貯金すること」なのだ!!!


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― 新着の感想 ―
いや奴隷がモノ扱いなら賃金なんてないよね普通 それに名目賃金から諸経費を天引きする主人が優しいてなんだよ 地球の歴史上何処の国にも時代にも存在しない斬新な奴隷制で笑えた
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