匿名企画にいくつか参加した感想
去年の秋あたりから、私はいくつか匿名企画に参加していた。匿名企画とは、だいたいX上で募集をかけて行われている、各自が作者名を伏せて小説を書き、その出来を投票によって競うものである。私は興味本位で匿名企画にいくつか参加したのだが、非常に良い経験ができた。そのまとめをここに記述する。
まず、匿名企画は精鋭揃いである。匿名企画はいわばセルフコンテストであるから、腕に自信のある物書きしか参加しない。受賞歴やコミカライズ歴、書籍化歴があるのが普通であり、私のように特に実績のない者はなかなか上位に入れない。得意分野なら下の上くらいの順位にはなれるが、そうでなければ最下位争いをするのが私のデフォルトである。こればかりは仕方なく、当然の結果である。
しかしながら、私のように自由に書いてきた身としては、まるで編集者のついた人気作家のように、提出期限という名の締め切りに追われながら創作するのは新鮮であった。限られた時間の中で何かを生み出すというのは難しいことだが、一度は経験しなければならないことである。
また、やはり順位がつく戦いというものは、作者たちのメンタルとコンプレックスに大きく影響する。匿名企画は自分の短所を見つめ直し次の飛躍の糧となるはずなのだが、それを履き違えると言葉は凶器となる。作家は言葉によって戦うからこそ、過度な自我の露出はもはや小説ではなく批判となり、祭典を戦争とし、勝者を敗者とする。特に思うような結果が得られないとき、または作者のストレスが溜まっているとき、その傾向は顕著となる。自主企画であっても決して安易に参加してはならず、ルール・マナーを遵守し、他の参加者に最低限の敬意を払うべきであるのはいうまでもない。