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結界魔法使い  作者: 來夢 フラン
異世界の秘密基地
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003 2人の魔法使い

2人いるとやっぱりやりやすい




 勢いで手を差し伸ばしてみたが、少女からは何の反応もない。ただただ俺の右手を見つめている。

 ファーストコンタクトやらかしたか?いや、ファーストコンタクトではないのか?


 ここで唐突だが今俺が持っているものを紹介しよう。まず、服装。異世界に来たからその世界の服に変わっている・・・なんてことはなく、異世界に来る前の服装。つまりジャージだ。先程草に引っかかり怪我をしなかったのもジャージだったから、というのも大きいだろう。靴は高校指定の体育館シューズなので結構しっかりしていてこの足場の悪い森を駆け抜けるのに助かった。ポケットには何も入っていない。こんなことになるのならお菓子など何か隠しておけばよかった、というのは後の祭りか。


 で、だ。何が言いたいのかというと、目の前の少女も全く同じ服装をしている。つまりクラスメイトということだ。ただ、俺はとある事情で遠くから引っ越してきての高校入学なので中学時代の知り合いはおらず友人はいない。勿論この少女と話すのも初めてだ。


「えっと、だいじょ───」


「こ"わ"か"っ"た"よ"ぉ"」


「うぶ・・・って、うわっ」


 つかみに失敗したかと思いもう一度話しかけると、言い終わる前に少女が泣きながら飛びついてきた。なんかいい匂いが・・・っていかんいかん。変なことは考えるな。

 少女が落ち着くまで待つこと数十秒。今度はバッと飛び上がるように離れる。


「あ、ごめんね。それと助けてくれてありがとう!わたしは麻田紅愛。紅愛でいいよ。よろしくね」


「こんな状況だし、お互い助け合っていこう。俺は六条祐樹。俺も祐樹でいいぞ。こちらこそよろしく」


 自己紹介も済み、お互いのこれまでを共有した。俺も似たような目にあっていたことを聞いた少女、もとい紅愛は


「お互い大変な目にあったね」


と労ってくれた。

 そして紅愛の方はと言うと、なんと彼女も魔法を得ていたのだ。その名も『基本魔法』聞いた感じ火、水土、風など俺が最初に試したような魔法が使えるらしい。羨ましい。万能そうでゴブリンを倒せるのでは?と思い尋ねてみたが


「えーっとね、最初は一体だけ襲ってきて、私も倒せるかなって思ったんだけど、魔法を撃とうと思ったら別方向からもう一体来てね。それで、なんといいますか、動いてて当てられなかった的な」


との事。そのあとは俺と同じようにゴブリンに追いかけ回され、そんな中で魔法を使えるはずもなく、今に至る訳だ。


「なるほど、そっちも大変だったな」


「本当に助けてくれてありがとう」


「どういたしまして。・・・・で、この後どうしようか。流石に逃げ切るのは難しいよな?」


「でも倒すのもむずかしいよね?祐樹くんは攻撃手段がないし、わたしの魔法は当たらないと思うし」


 どうするか。先程のようにまた奇襲をして逃げてもいいが、二体となるとかなり難しいな。となると倒すの方がいいか。

 と、その前に気になっていたことを試してみよう。足場にころがっている手頃な小石を拾い上げ「祐樹くん?」という声を一旦聞き流しつつ、結界越しにゴブリン目掛けて軽く投擲しる。ゴブリンに向かって飛んで行った小石は結界にぶつかる、ということなく()()()()てゴブリンに命中する。


「祐樹くん!?いまのって」


「いけるって思ってたけど、やっぱりいけたな。どうやら俺の結界は一方通行らしい」


「向こうの攻撃は通らないけどこっちからは通るってことだよね?」


「そうだね。紅愛さん、これなら倒せないか?」


「これなら行けると思う!」


「ただ、人型だし生き物を倒すのに抵抗とかそういうのは大丈夫か?無理にやれとは言わないから」


「ううん、大丈夫。さっきも倒そうと思って魔法を使ったし、多分わたしそういうのあまりないのかも?」


「そうか。なら頼む。もし無理そうと感じたら少しの間動けなくするだけでもいいからな」


「心配ありがとう。でも本当に大丈夫。それにこの森にいる以上いつかはやらないといけないと思うし。今度はわたしの番!」


 そう言うと紅愛から右手をゴブリンに向けた。そして紅愛から魔力がでてきたかと思うと薄緑の実体となり


「いっけぇ!」


紅愛が叫ぶと同時にゴブリン目掛けて風の刃が1つ、2つ・・・と飛んでいき、結界をすり抜けゴブリンを切り裂く。


「「グギャ?!グ、ギ」」


 無数の刃によって身体の至る所を切り裂かれたゴブリンは二体とも逃げる隙を与えず絶命させる。

 ちなみに紅愛が魔法を無詠唱で使っていたように魔法に詠唱は必要ない。では何故俺が結界を作る時に「結界」と言っているかと言うと声に出すことでイメージを固めるためだ。あと、紅愛にどういうのを使うのか伝える意味もあった。


「改めて、祐樹くん。よろしくね?」


この惨状を作り出した少女は本当に何の抵抗もないようで、微笑みと共に右手を差し出しくる。


「あぁ、よろしく」


 引き攣りそうな顔を笑顔に変え、差し出された手を握り握手をする。何はともあれ、出会った当初叶わなかった握手ができた。

こんな状況で俺が思うことはひとつ。女子高生強し。




女子高生強し。

なお、2人が相談している間永遠と結界をカンカンしているゴブ×2。哀れ異世界の定番チュートリアルモンスター。




面白い、続きが読みたいと思っていただけたらブックマークよろしくお願いします!

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