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【完結】一人と一匹。イズカとサリの冒険  作者: 中洲める
フィクロコズの瘴気災害
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8 いざ、ダンジョンへ!

 このダンジョンにいる魔物を全て倒して瘴気の噴き出し口を塞げば、今回の瘴気災害の浄化は完了する。


「行くぞ、サリ」

「きゅ!」

 俺の肩の上で気合十分だと飛び跳ねるサリを撫でて岩山に開いた穴の中に入った。

 暗い洞窟の中を腰に下げた魔石ランプの明かりを頼りに進んで行く。

 俺の浄化の力がついに噴き出す勢いに打ち勝ったのか、ダンジョン内に瘴気はない。


「キュ!」

「おう!」

 鋭いサリの鳴き声に剣を抜く。

 天井から落ちて来た拳ほどある蠍の集団を避け、足元に迫って来た一匹の背中にソートソードを突き立てて、飛び掛かって来た二匹をマチェーテで一息に凪ぐ。

 蠍は胴体が俺の靴底ほどある。尻尾も含めたら相当な大きさだ。

「キュッ!」

 声の方に視線をやれば、前に戦った時に毒があると教えたのをきちんと覚えていた。

 サリは尻尾の先端を避けて咥え首を左右に振って地面に叩きつけている。

 バシバシと何度か地面に叩きつけていると、力尽きた蠍の体が砕け散った。

 ころころと拳大の魔石が足元に転がってくる。

「デカい魔石だな」

「きゅ!」

 十年以上も瘴気に晒され蓄積された魔力量は凄まじさはこの大きさの魔石を見ればよく分かる。しかしこの平べったい魔物のどこに入っていたのか。質量を無視した大きさだ。

 感心しながら掌に乗せて眺めていたら、サリがそこに飛び乗って魔石に齧りついた。

「は? おい!」

 両手で魔石を持って奪い取りカカカと小気味よい音を立てながら、あっという間に食べきってしまった。

「今まで食った事ないのに」

 二個、三個とそこに落ちていた魔石を平らげ満足そうに手を舐める。

「サリ、今まで魔石なんて食った事ねぇのに、これは食わねぇの?」

 試しに外で取った親指大の魔石を取り出して差し出したが見向きもしない。

「腹壊さねぇ?」

「けふっ」

 満足そうにげっぷを掛けられ、緊張感の欠片もなく後ろ足で首を搔き始めたサリの姿に心配する気も失せた。

「まぁ、お前がいいならいいよ……」

 残った最後の一つを拾い上げバッグにしまう。


 サリに関してはもう常識が通じないものだと分かっていても、突飛な事をされるとつい驚いてしまう。


 気を取り直してさらに奥へ進んでいく。


 蜥蜴、蛇、蜘蛛、狼、猪、蠍、蝙蝠。

 今までに見た魔物大行進って感じだ。


 だが見知った相手なら戸惑うこともなく、多少強くなった程度で攻撃パターンはそう変わるものではない。


 長い間瘴気に晒されていたせいで、魔物からもう素材は落ちない。

 代わりに見た事もないほど巨大な魔石が出て来る。

 途中で持ってきたバッグに入り切らなくなって、分かりやすい場所に積んで置いていくことにした。

 帰りにでも拾えばいいだろう。

 何個かはサリが食べてしまった。

 この大きさならかなり高性能な魔道具の材料になる高額な物なのに、おやつ代わりに齧るなんて贅沢な事をしている。

 食事は食事でねだるのだから別に腹に溜まるものではないらしい。

 食べるたびになんだかサリの体が大きくなっている気がしたが、気のせいじゃなかった。

 十個目の魔石を食べ終わったサリの体は今、猫くらいの大きさがある。

 ウサリスだと言い張るには少し異常なサイズ感になってしまったけれど、肩に乗る重みは前と変わらない。

 魔力で膨らんでいるのか?

 大きくなった分力も速度も増して、サリの強さに拍車がかかった。



 徐々に洞窟も深くなり、魔物も強くなっていくが俺とサリの敵ではない。

 一体どこまで続くのか、迷路のような曲がりくねった道を進む。

 時々出て来る下へ降りる通路の先は必ず大きな部屋になっていて、強い魔物が陣取っている。それを倒すとまた新しい道が示された。

 この大部屋までの一区切りで一層二層と数えるのがダンジョンでの区切り方となっている。

 昼も夜も分からない。疲れたら休み、眠気が来たら魔物を倒し終わった層まで戻って眠ってまた降りるを繰り返す。

 下からは縄張りが違うから登ってこないし、同じ階層の枝分かれした通路の先にまだ魔物が残っていても、大広間はその層における支配者の縄張りだから安全なんだ。

 けれど俺はここの魔物を残すわけにはいかないから、通路を隅々まで見て回り、全ての魔物を狩って行く。


 真っ直ぐ進めば戦いながらでも一日で駆け抜けられそうだったのに、全ての層の魔物を狩っていたから随分時間がかかってしまった。

 三回は睡眠をとったから一応今日が四日目ということになるのか。

 持ってきた携帯食料にはまだ余裕があるけれど、様子次第ではそろそろ一度引き返すべきかと考え始めた頃、おそらくここが最下層だと思われる一際広い部屋に出る。

 もう下に降りる道は見当たらない。

 この部屋に居るのがこのダンジョンで最強の魔物。支配者だ。

 広い部屋のあちこちには盛り上がった岩山があり、一番奥の床には大きな穴が開いていて、そこからまだ瘴気が噴き出しているのが見えた。

 ただ、俺が近くにいるせいか勢いも弱いし濃度も低い。噴出というより、湧き出るという方が正しい緩やかな出方をしていた。

 その瘴気も湧きだす端から浄化されている。


 ここに居る魔物を倒し、あの穴を塞げば全て終わりだ。


「サリ。ここが最後だ。やれるな?」

「キュキュ!」


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