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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編小説

君へ贈る手紙

作者: 雨宮雨霧

木々の葉が青々と風に揺れ、君の揺れる髪を思い出します。

お元気ですか?僕は明日この世界から消えます。

今日が僕が生きる最後の日です。

今までを振り返ってみると、本当に色んなことがありました。

辛いこと、楽しかったこと。悲しかったこと。

君との思い出はあの世に行っても忘れることは出来ないでしょう。


君と出会ったのは中学生の時でしたね。

夏休みの夜、廃校になった学校に君はそこに居た。

グラウンドに大の字になって寝転んでいて、驚いたよ。

僕に気がつくとゆっくり起き上がってさ。

白いワンピースが土の色に染まっていて二人で一生懸命洗ったよね。

懐かしいな。

洗いながらお互いの話をして、笑いあって。

すごく楽しかった。

ワンピースを干して、学校の中に入って。

君が脅かしてくるもんだから怖かったよ。

肝試しはすごく楽しくて怖くて。

理科室が一番怖かったかな。

骨格標本ってなんであんなに怖いんだろう?

今にも動き出しそうで震えてしまった。


音楽室に行って、君は埃を被ったピアノの蓋を開ける。

鍵盤に触れると、音が鳴り響いた。

「まだ弾けるね」そう言って椅子に座った。

君は綺麗な音色を奏でる。

月の光が丁度ピアノに差していてすごく美しくて。

透き通るような白い肌に鍵盤を抑える細い指。

まるでお姫様みたいな君に惚れてしまったよ。


保健室のベッドで二人眠りについた。

熱帯夜で寝苦しかったけど、それはそれで思い出。


それから毎日のように君と過ごしたね。

あの日々はすごく楽しかった。

二人でカードゲームして、汚れたプールを掃除して水を張って泳いだり。

線香花火をしたり。


そんな日々も続かなかった。

夏休みが終わってから、学校で会えることなんてなかった。

毎日待っていたんだよ。

今日は来るかなって。

寂しかったよ。


もう待つのも終わり。

また会いたいよ。


君にまた逢う時は夏の空の下で。


この手紙は君に届くでしょうか。

分からないけれど。

思い出をありがとう。


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