第二十七話 おかえり、聖
秋が来て、俺は就職活動をし、いくつかの会社に面接に行ったが、内定はもらえないでいる。
そして、やっと、聖の二年の留学が終わり、日本に帰国する日が来た。
成田まで迎えに行くと言う約束どおり、俺は車を走らせ、空港に着いた。
到着ロビーで待っていると、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「……」
俺の名を呼び、手を振り、にこやかな顔で駆けてくる…
あいつは誰だ!
あの坊主頭のヤツは…
「城!」
そう言って俺の胸の中に飛び込んできた、そいつは、聖。
な、なぜ、スキンヘッドなのだ!
そして、男らしくなっている。
「ひ、ひじり…?」
聖は俺の首に腕を回していたが、俺はボーぜんと立ちすくんだままだ。
「なんだよ、城、熱き抱擁はねーのかよ」
聖に言われ、腕を聖の背中に回したが、あまり力が入らなかった。
「あの…、なんで、坊主、あた、ま…?」
「似合うだろ!?」
頭の形がいいのか似合う…いや、似合うとかそういう問題ではなく…
聖が言うには、日本に帰ってしまう聖のためにクラスメイトと一緒にロンドンに遊びに行き、そこで見たパンクロックのイギリス人に感化され、スキンヘッズにしたと言う。
つるつるだよ…
中身まではパンクにはなる気はないが、スタイルを真似したらしい。
まぁ、聖には変わりないのでいい…としよう。
家に向かう車の中で、雅や健児、石田、相川など、みんなの報告をした。
登戸君の話が出ると、「そいつの話はいい」と、ムッとされたが、なんだか俺は、やきもちを妬いてくれる聖に少しばかり嬉しくなった。
助手席からジッと俺の顔を見ていた聖に言われた。
「なんか、城、前よりカッコよくなってないか?」
「ん? そう? っていうか、あんま見んなよ。照れるじゃん」
「浮気してんじゃねーだろうな」
「してねーよ、浮気なんて。するわけないだろぅ…」
していない…、よね? 健児の家での雑魚寝の…登戸君のことは、浮気じゃないよなぁ。
あれは、一つの流れだ!
なんの流れかわからないが、自分に言い聞かせ、自分に納得させた。
聖は次の週から休学していた専門学校に復帰し、卒業までの5ヶ月間で残っている単位を取り、アパレル会社に就職する。
就職先は、すでに決まっていた。
「ミピコ・ジョンジョン」という有名ファッションブランドだ。
聖は、そこのデザイナーに才能を買われ、卒業と同時にデザイン室に入る予定になっている。
大変だろうけど、就職が決まっていることは、正直うらやましい。
そんな聖とは裏腹に俺は、自分が何をしたいのか、どの道に進みたいのか今だわからずにいる。
のん気にそんなことを考えている余裕など、このご時世でしていてはいけないのかもしれないけど、今ひとつ、先が見えなくて悩んでいた。
おやじやおふくろは、「知り合いの会社にたのんでもいいぞ」とは言ってくれるものの、俺はコネ入社ということを拒んでいる。
自分の力で…ということが、余計に自分をあせらせていた。