ブレイクタイム:聖のいない間
僕にとってお邪魔な聖が、パリに行っている間、僕は城くんを独り占めだ。
時間ができると城くんを誘って、時々みんなと、時々二人で出かけたり、城くんのマンションに行ったりしていた。
聖が日本にいないのは、僕にとって楽園だ。
だけど、外を歩く時は、もう腕を組むことも、男同士の肩組みもできなくなっていた。
僕が前にもましてテレビドラマやバラエティ番組に出るようになったから、街を歩くと「登戸祐二」というのがバレてしまう。
だから僕は、城くんと二人で約束をしたときは、言い訳をつくって、できるだけ城くんの家に行きたいとお願いした。
くっ付いていても誰にも何も言われない。
城くんも、もう慣れちゃったのか、麻痺しちゃってるのか、僕が抱きついたり、ベタベタしても別に払いのけるわけでもなく、嫌がるわけでもない。
僕は、調子に乗って城くんに甘える。
だからといって、それ以上の関係には絶対にならなかった。
城くんはずっと聖のことを愛している。
悲しいけど、それが事実だ。
城くんは、コンパやゼミ仲間の女の子がいる席では絶対にお酒を口にしなかった。
自分を見失うのが恐いようだ。
だけど、男友達だけのときは、いつも飲んでいる。
一度だけ、健児くんの家でみんなが集まってお酒を飲み、ごろ寝をしたとき、
お酒を飲めない僕だけが、しらふで起きていて、城くんの寝顔を見ていた。
そして、僕は今がチャンスとばかりに酔って寝てしまっている城くんの唇にキスをした。
城くんは全然起きない。
だから、抱きついたまま、初めて城くんの腕枕で眠りについた。
朝、目が覚めたとき、僕は城くんの腕の中にすっぽりと入っていた。
城くんは人肌が恋しいのか、僕のことをしっかりと抱いていた。
僕は城くんが起きるまで、寝たフリのままずっと動かないで幸せをかみしめた。
―――城くん、あったか~い。このまま時が止まればいいのに…
そんなことを考えていたら、城くんが起きて、静かに自分の腕から僕の頭を外した。
寝たフリの僕は少し薄目を開けて城くんを見た。
……頭を抱えて、固まっている。
その日を境に、みんなで同じように飲みに行ったり、ごろ寝をしたりしたけど、城くんは、男だけの集まりでもお酒を飲まなくなった。
僕としては……非常に残念。
―――今度、無理やり飲ましちゃお~~っと!
僕は、次のチャンスを狙っている!
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健児の家でごろ寝をして、朝、目が覚めたとき…
俺はしっかりと誰かを抱いていた。
―――の、登戸…くん…!?
非常にやばかった。
あせりにあせったが、腕の中の登戸君の寝顔は、なんだか小犬みたいでかわいいなどと思ってしまう自分。
ヤベーじゃん、俺。
聖以外を抱きしめて、俺は何をしているのだ……
こっちを向いて腕の中で眠っている登戸君が無意識なのか、俺の足の間に自分の足を入れてきた。
登戸君…それはちょっと、本当にやばいです。
どうしよう…
俺は、ゆっくりと仰向けになり登戸君の足を外し、腕枕で眠っている登戸くんの
頭を静かに外し、体を起した。
マジ、やばいよ…登戸君。
自分が青くなっていくのがわかり、頭を抱えたまま、俺は決心した。
―――酒…絶対やめよう。
男も女も見境なくなっていく危険性がある。
聖がいなくなって1年半、あと半年の我慢だ。
聖……。
早く帰って来―い!