第二話 聖の妹・雅
家に帰ると、おやじとおふくろ、聖、雅が四人で夕食の最中だった。
朝夕の食事はいつもみんなで食べている。
おやじとおふくろは、女の子の雅が来たことで、うれしくてしかたがないらしい。
「よっ!お帰り、城」
聖の話し方は、外でも家でもすっかり男になっている。
「お帰り、お兄ちゃん!」
雅は俺のことを「お兄ちゃん」と呼び、聖のことは「聖」と呼んでいた。
俺は聖の横に座り、日野からの挑戦状のことを話した。
聖は大うけだった。
パッチワークなら代わりに作ってやったのに、と言われた。
「あっ、お兄ちゃん。龍星高校の二年生にすんごくかっこいい、というか、
かわいい男の先輩がいてね、もう女子なんてみんな彼から目が離せないって
感じなんだよ?」
……もしかして?
「それ、登戸って言う名前?」
「そうよ。知ってるの?!芸能人の卵なんだって!」
俺の知り合いだということを雅に説明すると、ものすごく驚き、明日学校に
行ったら登戸君に話しかけてみる~と、嬉しそうに言った。
「登戸君とはメル友だし…」
と言った俺を聖が睨んだ。
もしかして、聖、やきもちなんて焼いちゃってくれてる?うほっ!
俺は少し顔がニヤついた。
「何、ニヤついてんだよ。オレ聞いてないぜ、登戸とか言うヤツがおまえの
メル友なんて…」
「コンテストの時にメアド交換して、たまにメールくれてたんだ。それだけだよ」
本当は頻繁にメールを貰っていたが、聖のパンチが飛んできそうでうそをついた。
「ふ~ん、そう」
そう言って膨らんだ聖のかわいい頬を突付いた。
「いいなぁ、聖とお兄ちゃんラブラブで…雅も彼氏ほしい…」
今度は雅の頬が膨らんだ。
「あらあら、雅ちゃんにだってそのうちステキな彼氏ができるわよ」
おふくろに言われた雅は、肩を落とし言った。
「だって私、パパに似ちゃったんだもん。聖はママに似てて綺麗でしょ?
もぉーー!パパの遺伝子恨んじゃう!!」
「雅ちゃんは丸いお顔でかわいいじゃない?元気だし、運動だって得意だし」
おふくろのフォローのようでフォローではないような言葉に聖が苦笑いをした。
兄としては、妹がかわいいのだが、雅のコンプレックスになんと言っていいか
わからないようだ。
身長は160cmもない。これは女の子なのでかまわないが、雅のコンプレックスは
父親から受けついだ顔だった。
おふくろが言ったように、丸い顔、少し小さい目、少し丸っこい体型。
聖の父親…そっくりだ。
が、女の子だし、顔のパーツがかわいいので決してブスではない。
だけど、本人は自分の顔が嫌いらしい。
そんな雅の性格は、ものすごくいい子で、学校では明るくて楽しい子として、
女子!女子から人気らしい。
「おじさんは雅ちゃんみたいな女の子タイプだけどなぁ」
「おじさんに言われても…同世代の男の子に言われたい…」
「……」
雅にチロッと見られたおやじは、撃沈である。
「俺も雅ちゃん、かわいいと思、」
「あー、城お兄ちゃん、慰めの言葉は要らないから、それ以上何も言わないで!
お兄ちゃん、聖の彼氏なんだよ?綺麗な聖のことが好きなお兄ちゃんに
言われても嘘にしか聞こえないから!」
そう言うと、雅はご飯を目一杯口に入れて食事を続けた。
俺も撃沈だ。
だけど、みんな本当に雅のことをかわいいと思っているんだよ。
と、俺は心の中で雅に言った。