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第二十一話 城…一生の不覚

年末が過ぎ、正月が過ぎると、実家の田舎から東京に戻って来たと麻衣子から連絡が入った。

いつもは聖や井上たちと一緒だったが、お土産を渡すからと言われ、俺は初めて二人で会うことになった。


聖たちが日本に帰ってくる二日前。

7時に待ち合わせをし、居酒屋に入った。

俺はまだ20歳になっていないので、ウーロン茶だ。

…そんな真面目ではない、ただ単にお酒が弱いから飲まないだけの話。

お酒に強い麻衣子はチューハイをガンガン飲んでいた。



麻衣子の実家は金沢で着物の染物工場を営んでいる。

聖と雅にも加賀友禅で染められた繊細な色彩の小物をお土産にくれた。


「あさって帰ってくるから渡しておくよ、きっと喜ぶよ。ありがとう」

「本当は会って渡した方がいいんだけど、来週からサークルの方で忙しくなるから

 いつ時間が取れるかわからないんだ」

麻衣子は長い髪をかきあげた。


そういえば、聖もまた髪の毛伸ばし始めてたよなぁ。

ショートも似合うけど、ロン毛もいいよなぁー。まっ!とりあえず聖はどんな髪型でもかわいいということで。

麻衣子の髪を見ながら一人聖のことを考えてしまった。


「どうしたの?城くん?あっ、聖ちゃんのことでも考えてたんでしょう」

「え?んなことないよ…」

ず、図星だ…

俺は頭をかいた。


「城くんて、男の子に好かれるタイプ?男しか好きになれないの?」

「…え?…へっ?」

急に聞かれ、戸惑った。


「聖ちゃん、男の子でしょ?完璧に女の子に見えるけど、たまに忘れちゃうのかな?

 男の子になっちゃってるときがあるから。ふふふ」

麻衣子は、聖の様子を思い出したかのように笑ったあと、チューハイを飲んだ。

「バレてたんだ…」


俺は聖とのことを麻衣子に話した。

初めは女の子だと思っていて、彼女が出来たと喜んでいたけど、男だとわかってとても悩んだけど、それでも聖のことが好きで、聖も同じ気持ちでいてくれたことがわかって、ものすごく嬉しかったこと。

聖は俺にとって誰よりも大切な人で、いなくなったら困る…

などと、照れもせず俺は語ってしまった。


「そうなんだぁ~、なんかうらやましいなぁ。二人を見ていると」

麻衣子は笑いながら言った。

「あっ、登戸君は城くんが大好き!…でしょ?」

ハァ…それもバレてますか…

「でも登戸君は大胆と言うか、周りを気にしないよね?」

そうなんだよ…それが一番困るんだよ…


「城くんは、男が好きってわけじゃないんでしょ?」

「うん、別に男には興味がないよ。聖が好きなだけだから」

「あーーはいはい!ごちそうさま!あはははは~」

麻衣子は楽しそうに大きい声で笑った。


なんかこの日は調子よくて、飲みなれないお酒を結構飲んでしまい…

俺は、つぶれた。


「ちょっと、城くん?大丈夫?」

「…うん…だいじょうぶ…」

居酒屋の個室で半分寝ていた。


「ぜんぜん大丈夫じゃないわよ…もう帰るよ?」

「はい……」

俺は麻衣子の肩におぶさり引きずられるようにタクシーに乗った。

麻衣子は結構力持ちだった。


「城くんちどこ?住所は?」

麻衣子に聞かれたがほとんど意識はなく、聖の香港の家の住所を言ったが、そんな場所は東京にはないと言われ、そのあと何も言わなくなった俺を、しかたなく麻衣子は自分のマンションに俺を連れて帰った。

タクシーを降りて、また麻衣子の背中に抱きついたまま引きずられ歩いた。


部屋に入り、俺はベッドの上に放り投げられた。

俺は完全に夢の中だ。


「はぁぁ、重かったぁ…。城くん?大丈夫?お水飲む?」

ペチペチと俺の頬を叩く麻衣子の手を掴んで引き寄せ、無意識のまま、俺は麻衣子にキスをして押し倒していた。


「…ん…ひじり…」

「……聖ちゃんじゃないわよ?私」

「ひじり……あいして…る」


麻衣子は抵抗もせず、嫌がりもせず俺を受け入れた。

ほとんど目も開けていない俺には、抱いている目の前の人は、聖に見えていた。


何度も聖の名前を呼びながら、俺はキスをしながら麻衣子を抱いていた。

ただ、意識のない中で、いつもと違う、聖と違う感覚がある。

いつもの戯れがなくても……俺の…アレが…なんというか、スンナリ入り、そして、おぼろ豆腐に顔をうずめているような…。

だけど、そんな感覚はすぐに忘れてしまった。


俺は聖だと思い込んで……いたから。

夢の中で聖と、いつもの気持ちいい営みを展開していた。


時々、豆腐が出てきて俺はそれを食べていた。



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