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第二十話 クリスマスは家族で…?

街には、子供や学生、恋人同士の楽しいクリスマスがやって来た。


俺たちは毎日がイベントなので、クリスマスも別に重視していない。

イブの昼間、普通の日と変わらず過ごした。


雅と日野は「イブ特別プレゼント」として、聖から9時までの外出を許可され、二人で

「ポンポコポンランド」に仲良く手を繋ぎデートに行った。



イブの夜、部屋に戻った俺は聖とテレビを見ていたが、途中でリビングから離れ、自分の部屋に入り、クローゼットの中に隠しておいた、赤と緑のリボンの付いた箱を取り出した。


聖には内緒にしておいたクリスマスプレゼントだ。


中身は洋裁で使う「マチ針・120本」

ただのマチ針とは違う!特別バージョンだ。

針の頭の部分に付いている留め具の表に「聖」裏に「城」と刻印されているオリジナル、

世界で一つのオリジナル。


聖が学校でこのマチ針を使うたびに俺を思い出すように、顔の広い石田の知り合いの工場さんで作ってもらった。

ロット数が少ないから結構高額だったが、石田の紹介ということで少しばかりディスカウントしてくれた。


俺はそれを後ろポケットに突っ込み隠し持ち、リビングに戻ったが、ソファに聖がいない。


どこ行った…聖…?


「城!」

呼ばれて振り向くと聖がさっきまで着ていなかった黒ベースの大き目のセーターを着て、立っている。


「ん?」

聖はそのセーターを脱ぎ俺にかぶせた。


「メリークリスマス、城!プレゼントだ、オレのお手製だぜ」


ま、マジかよ、メチャクチャうれしいぜ!!

ウホウホしながらセーターに袖を通した。

ぴ、ぴったしじゃねーかよ~

さすが俺の体を知り尽くしている聖だ!

などと、浮かれた。


「いつの間に編んだの?」

家にいるときは編み物なんてしているところは見ていない。


「ほとんど学校で編んだ。あとは城がいないとき家の中でバレないように頑張った!」

「ありがとう~、聖」

俺はセーターを着たまま聖にハグりまくった。


あっ、そうだ…

「ほら、これ俺からのプレゼント」

聖の手の上にリボンの付いた箱をのせた。


「え?」

「開けてみろよ」

俺からのプレゼントなんて期待していなかった聖は驚いた顔で俺を見上げた。



中身を見た聖は「こんなプレゼント初めてもらった」「勿体なくて使えない」と

感激していた。

またお互いハグり合い、俺たちはラブラブ状態のままイブの夜を過ごした。



**********************



25日、クリスマスの夜。


誰も出かけるわけでもなく、「クリスマスは家族で!欧米か!」みたいな感じで家族と

クリスマスパーティを開いた。


おやじ、おふくろ、聖、雅、俺、日野…まぁ、日野は雅の彼氏だからいいとして、

なぜか、…登戸君…がいる。


おふくろが、呼んだんだ…「暇だったらいらっしゃい」 と。

ここにいるということは、暇だったらしい…。


15階のダイニングルームで、7人でクリスマスパーティをした。

6人座りのダイニングテーブル。

おやじが誕生日席につき、おふくろ、雅、日野と俺のお向かいに並び、俺の両脇には聖と

登戸君がいる。

例のごとく、二人にぴったりと椅子を寄せられ、腕にぴったりと、くっ付かれている。


「いいね~モテモテだね~城くん!」

「代わってやろうか?日野…」

頼む!代わってくれ!オーラを出しつつ、本気で日野に言った。


「…ふふふ、いや、結構!」

日野に全然うらやましそうではない顔で微笑まれた。

俺はリラックスもできず、狭い空間で料理を口に運んでいた。


「城が今着ているセーター、オレが編んだんだぜ!愛がた~~っぷり編み込まれて

 んだぜ!へへへ~」


聖が誰に言うまでもなく…たぶん登戸君に向けてだと思うけど……言った。


右側で俺の腕にくっ付いている登戸君が、掴んでいた俺のセーターをビィヨ~ン

ビィヨ~ンと伸ばし始めた。

この勢いだと毛糸を解しはじめそうだ。


「……登戸君…伸びちゃうから、ね?やめようね?」

登戸君の耳元に小声で言った。


「あっ!そうだ!」

登戸君が思い出したかのように席を立ち、自分が持ってきた袋からクリスマスプレゼントと言い、いろいろと取り出した。


「もっと後で渡そうと思ったんだけど!はい!これは城くんに!」

少し高そうなダイバーウォッチ。


「これ、高かったんじゃないの?登戸君、まだ高校生なのに、こんな、」

「いいのいいの。僕仕事してるし、ちゃんとお給料貰ってるから!クリスマスだから、

 少し奮発したけど!また今度僕と二人で会うときは、これして来てね!」


登戸君が「また今度僕と二人で会うとき」という部分をものすごい大きめの声で

言うと、ちょうど口に、から揚げを放り込んだ聖はから揚げを思い切り噴出して

しまい、形のままのから揚げが、元あった場所に着地した。


「あらまっ!ふふふ、お上手!聖ちゃん!」 と、おふくろは拍手を送り、

「汚いなー、聖!」 雅は怒っていた。


そんなことはおかまいなしに、登戸君は続けた。


「これはお父さんとお母さん!で、これは雅ちゃん!日野君と食べてね。あっ、

 聖さんの分は忘れちゃったから、雅ちゃんから熊ちゃん一つだけ貰って食べてね!」

俺を間に挟み、登戸君は満面の笑みで聖を覗き込んだ。


雅へのプレゼントは、熊の形をした小さいカステラが箱に50個ほどきれいに並べられて

いた。

「うわ~かわいい~!ありがとう、登戸君。はい!聖、一個だけあげる」

雅は登戸君に言われた通り、カステラを一つだけ聖に差し出した。

「いらねーよ、バーカ」


兄にバカと言われた雅は、凄んだ目で聖を見た後、「じゃ、日野君~あ~ん」

と言って、日野に食べさせた。

「うまーーーい!雅ちゃんに食べさせてもらうとおいしいなぁ」

「えへっ!そう?」

そこにはバカップルが誕生していた。


聖以外、みんなは登戸君にお礼を言い、食事を続け楽しいファミリーパーティは

幕を閉じた。



               ☆☆☆☆☆



クリスマスが終わり、年末ギリギリに聖と雅は父親がリサイタルのため滞在している

ヨーロッパに冬休みを利用して会いに行った。



そして、聖がいない間に俺は…


俺は最低なことをしてしまった…






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