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ブレイクタイム:日野の思い

「うっっっそぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ」


僕は…、横縦町の一番北の外れにある、やお屋・やお八の店の前まで飛ばされた気持ちだった。

聖ちゃんが…おと、おと、おーとーこーーー!!だったことに…

力が抜けた体を健児君に預けてしまった。


あの日、城君と横縦神社での『第1回 横縦町 たて笛大会』の戦いの日を迎えていた。

ひさしぶりに会った聖ちゃんは、やはり、かわいくて美しい。

僕に似合うのは彼女だけだ!!

……と、思っていたが、どんでもない事態を迎えてしまい、僕の恋は終わった。

ついでに華々しくデビューを飾ろうと思っていた『たて笛大会』も、演奏中に鼻を啜ってしまいその後「ピィ~」などと五線譜表中にも書くことができないような音を出してしまい、『恋』も『たて笛優勝』も、すべて軽やかに散った…。


少し立ち直るのに時間はかかったが、聖ちゃんの妹・雅ちゃんがその後も、メールや電話でいろいろ慰めてくれて、僕はやっと元の「イケている日野万太郎」に復帰することができたのだ。

その頃からだんだんと雅ちゃんと二人で会うことも多くなり、今まで僕の周りにいないタイプの素直で純粋、よくよく目を凝らしてみると「かわいい」雅ちゃんに心を奪われていった。


雅ちゃんも僕に気があるのは薄々感じてはいたが、しかしながら、雅ちゃんはまだ高校一年生だ。

見た目も子供っぽい。

そんな彼女に手を出すわけにもいかず、僕は高一女子にプラトニックラブだったのである。


何度も告白したい衝動にはかられていたが、彼女がもう少し大人になるまで待とうと決心した。もしその間に雅ちゃんが他の男に走ったとしたら…などといろいろ考えてしまい夜も眠れない日もあったが、我慢に我慢を重ねた。


しかし、僕は中国から来た仙人から告白のチャンスを与えられた。

ちなみに『中国から来た仙人』とは、僕の心の中の神さまのことである。

まぎらわしくて失礼…。


大学の文化祭の日のことだ。

雅ちゃんと聖ちゃんが文化祭に遊びに来て、雅ちゃんはケチャップを口の周りに付けながら、フランクフルトをおいしそうに食べていた。

少し想像してしまった……いけないいけない、僕としたことが!はしたない!!


気を落ち着かせ、僕がケチャップを取ってあげていると、目の周りがいつも黒い寝不足か?みたいな顔のマーガレットが、こともあろうか僕の愛するかわいい雅ちゃんのことを「チンチクリン子」などと言いやがった……いや、言ったのである。

雅ちゃんは大切なフランクフルトを落として走って行ってしまった。


生まれてこの方、女性に対して怒鳴ったことなどないジェントルマンな僕だが、怒り爆発でマーガレットを怒鳴り、雅ちゃんを追いかけた。


走りながら思った。

雅ちゃんを小バカにされ、本当に悔しくて、腹ただしくて激怒している自分。


『僕は雅ちゃんが、大好きなんだぁぁぁぁあああああああ』


心の中で叫び、走る雅ちゃんの後を追いかけた、が、彼女は異常に足が速い。

高校ではリレーの選手なのかもしれない…

追いつけそうもなかったので、息もカラカラ、雅ちゃんの名を叫んだ。

雅ちゃんは、立ち止まってくれたが、僕のほうを向いてくれない。

雅ちゃんの小さい肩が震えていて、涙声で一生懸命自分を腐していた。


僕は耐えられない。

雅ちゃんはかわいいのに、どうしてそんなに自分をけなすのか…


そんな時、僕の耳元で中国から来た仙人が言ってくれた。

「万太郎、そろそろ告白してもいいぞよ~ふぉふぉふぉぉぉぉおおおお」


僕は雅ちゃんを振り向かせ、抱きしめて告白した。

やっと「好きだ」と言えた。


そして、雅ちゃんは僕の腕の中で泣いた。



この日、3時からエントリーしていた「炭酸飲料500ml早飲みゲップ大会」。

雅ちゃんにいいところを見せようと頑張ったが、彼女の応援も空しく、僕は2位という残念な結果に終わってしまった…

振られたらどうしようかと不安になった。



だけど、雅ちゃんは今日もかわいらしく僕の横に座って、僕が見つけた桜貝を眺め、

うれしそうな顔をしてくれている。


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