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第十七話 文化祭・日野の告白

「雅ちゃん、そんなに食べてばかりだとお腹壊すよ?」

「だっておいしいんだも~ん」

模擬店で買った食べ物を両手に持ち、パクパク食べている雅の姿を見て、

日野が楽しそうに笑っている。

「ははは~ケチャップついてるし」

日野が雅の口元に付いたケチャップをテッシュで取ってあげていると甘ったるい声が聞こえた。


「日野くぅ~ん、城くぅ~ん、ついでに健児っ!」

なぜか健児だけは呼び捨てで、『ついで』呼ばわりだ。

清純な名前とぜんぜんマッチしないマーガレットが数人の女子と現れた。

「日野くぅ~ん、探しちゃったぁ。携帯電話しても出てくれないんだもん!

 マーガレットつまんなぁ~い」

と、どこをどう押したらそんな声が出るのかと思わせるような、小さい子が履くキューキュー鳴るサンダルのような声とブリブリにブリった動作で日野に絡みならが言った。


そのあと、聖と麻衣子を見て、自分達では、そこそこイケていると勘違いをしている彼女たちは、一瞬後ずさり、顔が引きつったが、マーガレットだけは気を取り直し、日野に執拗に絡む。

「もぅ~、一緒にあっち行こうよぉ~」

「僕、彼達と一緒に回ってるから、君たちとはパス!」

日野は真面目な顔で言った。


「…え?や、やぁだぁ日野くんったら!こんなチンチクリン子ちゃん相手にして!

 ボランティアでもやってるわけ?日野くんにお似合いなわけないじゃない、

 ねぇーーーチンチクリン子ちゃーーーーん?」

聖と麻衣子には勝てないと思ったのか、ターゲットを日野の横にいた雅にしぼり、

雅の鼻先に指を押し付けた。


「ぁあ?!」

「あ゛あ゛?!」

「ぁんだって?!」

「ああ?!」

「ちょっと?!」

日野と俺と聖と健児と麻衣子が同時に言った。


雅は持っていたフランクフルトを下に落とし、口を一文字にし、瞳に涙をためたまま走って行った。

「雅!」

「雅ちゃん!」

俺と聖が追いかけようとした時、日野がマーガレットに怒鳴り、俺たちの足が

止まった。


「ざけんなよな!マーガレット!雅ちゃんは僕の大切な子なんだ!!

 おまえらとは違うんだよ!!とっとと消えろ!!この狸―――!」

いつもの日野とは思えない言葉使いだった。


「……どういうことだ?」

「……いつの間にだ?」

俺と聖が口を開け、顔を見合わせている間に日野は雅を追って行った。


「たぶん…オレが思うに…日野はまだ告白はしていないがぁ、雅ちゃんが好き

 なんだなぁ~きっと!ここ最近、講義中でも雅ちゃんの話を楽しそうにして

 いたからなぁ、うんうん」

健児が一人うなずき言った。


「マジ?」

「まじにぃ?」

「うん!マジ!マジ!」

健児がピースをしながら笑った。



           ☆☆☆☆☆☆☆



日野は雅を追いかけた。

運動神経抜群の雅は以外に足が速い。


「雅ちゃん!待って!待っっってぇぇぇ~~」

息が切れかけている日野の声を聞いて雅が立ち止まった。


「ハァハァ…ハァ…」

息が切れて声が出ない日野に、雅は背を向けたまま下を向いている。


「雅ちゃん…ごめん。さっきの子達の言うことなんて気にしないで…」

「ぅん…気にしてない…わかってるもん…雅、チンチクリン子って自分で知って

 るから、人に言われても大丈夫だも…ん…」


「雅ちゃん…?」

「日野くんが私に付き合ってくれてるのは、ボラ、ボランティア…っていうことも、

 わかってる…もん…」

ものすごく涙を堪えて話しているのがわかった。


日野は雅を自分の方に向かして、自分の胸の中にすっぽり収めて言った。

「あのさぁ、雅ちゃん、知ってる?僕の本当の気持ち…雅ちゃんと会って映画

 見たり、食事したり、ショッピングしたりしてる時、ものすごく楽しいんだよ?

 一緒にいて楽しくて楽しくて仕方がないんだ。二人で出かけたときだって、

 本当はもっとずっと一緒にいたいけど、雅ちゃんはまだ高校一年生で、ちゃんと

 6時前にはお家の人に送り届けなきゃならないでしょ?」

日野は本当は真面目な人間だった…


「大事にしたいんだ、雅ちゃんのこと。好きだから…大好きだから、大切にして

 いきたいんだ。雅ちゃん、わかってくれる?」


「ひ、日野くーーーーん~~」

雅がやっと声を出して泣き出した。

日野はやさしく笑いながら雅を強く抱きしめた。




「日野と雅ちゃんの恋も成就したか!よかったよかった」

「なんか、一件落着か?おふくろ喜ぶだろうなぁ、おやじは泣くか…」

「ホッとしたといえば、ホッとしたけど…兄としては複雑だ…」

「あ~なんかいいもの見せてもらったわ!今日来てよかったぁ……、って兄?」

俺達四人は陰から二人を見て、小さく指先で拍手をしていた。


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