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第十五話 文化祭・聖の専門学校

俺は雅と一緒に、聖の学校正門の前で、本日都合のついた3Bのメンバーとサエドンと

会った。


「おーい!城!雅!こっちだこっち!」

38歳のサエドンがジャンプをしながら俺たちに手を振っている。

「せんせ~~~ぃ!おとといぶりぃ~。会いたかったよ~~ん!」

雅がサエドンに突進して行った。

サエドンは今、雅の担任だ。

二人で熱き抱擁を交わしている。

……珍しいよなぁ、先生と生徒のハグって。


相変わらず、サエドンは生徒の受けがいいらしい。

俺たちが在校していたときも、生徒たちから熱い支持を受けていた。


「よっ!大岡!今日の僕のコスプレ!どうだ!!」

い、石田…、もうサーファーには飽きたのか…

夏が過ぎたら色白か……、おまえも忙しいよなぁ…


今日の石田は、韓国ドラマ「冬のなんとか」という、女性の心を力一杯根こそぎ持って行った韓流スターの出で立ちだ。眼鏡も掛けている。

――もうその格好は古くないか?

という疑問を飲み込み、「似合う…よ」と引きつり笑いでいうと、まんざらでもない顔で

「だろ?だろ?」と、顔を35度ほど斜めに顔を上にあげ、目を細め、胸に手を置き、遠くを見た。

……なにも言ってやれない。勝手にやってくれ…石田。


俺たち20人はぞろぞろと連なり、校舎の中に入った。

「うおー、すごいな!ぎょえーなんじゃありゃ!!」

サエドンは初めて見た服飾関係の学校の生徒たちの格好に、一つ一つ驚きの声を発し、

周りの人からチラチラ見られ、石田が「先生、恥ずかしいから静かにしてください!」

と注意をしていた。

石田…チラチラ見られているのはおまえのそのコスプレのせいでもあるんだぞ!


「この学校にも野球部があるのか!?でも頭に×が付いている!どういうことだ!」

目の前を通り過ぎて行った男子学生を見て言った。

サエドンにとっては、B系坊主頭=野球部のようだ。


俺たちは最後の回のファッションショーを見るため、時間までうろちょろし、

途中で聖と合流し、高い第一校舎の最上階にあるカフェに行くことにした。

「聖く~ん」

「聖ちゃ~ん」

「きゃ~、聖くんだぁ」

「よぅ、聖!」

などと、通り過ぎるクラスメイトや他の科の学生たちに声をかけられていた。

学校内のすべての学生が聖を知っているようだった。


…人気者なんだ…聖…

声をかけられては愛想良く笑っている聖に、俺は異常な嫉妬にかられ、顔がどんどんと険しくなった。


「どうしたんだ?城」

「あ゛あ゛?!!」

「恐えーな…なんだよ」

声をかけてきた健児をおもわず睨んでしまった。


カフェで話ているうちに聖のショーのスタンバイ時間になるころ、ちょうど俺たちと同じエリアにいた同じくモデルをしている男子が、聖に声をかけてきた。

「聖、そろそろ行くぞ!次が3日間の最後だから頑張ろぜ」

「おぅ!じゃぁ、みんな見ててくれよなぁ~。あとでな!」

と、聖は手を上げて俺たちに背を向けた。

そして、同じモデルの男子がこともあろうか、聖と肩を組み、カフェ出口で振り向き、

こっちを見て微笑んだ。


「んなっ!!」

思わず、俺は椅子から立ちあがった。

「はいはい、落ち着いて、シッダーンプリーズ!お兄ちゃん!!」

雅に言われた俺は口をパクパクさせたまま、座りなおした。


聖が席を立ち、少ししてから俺たちも会場に向かった。

広い学校敷地内の一角に建てられている大きな講堂に入ると、多くの人で埋まっていた。

この学校のファッションショーは、全て学生の力で開催されるが、プロ顔負けの演出とモデルだと業界でも有名で、招待客も一流デザイナーの人と呼ばれる顔もチラホラ見えた。

そんな中に交じりならが俺たちは招待席に着いた。


照明が暗くなると音楽が鳴り、ファッションショーが始まった。

舞台中央から衣装を着たモデルが次々と出てくるとそれは、華やかな世界。


聖がメンズ服で出てくると、ファッションショーにも関わらず女子の黄色い声援が上がった。

―――うっ、やっぱり人気者なんだ…

また嫉妬にかられる。

男だから当たり前なのだが、メンズ姿の聖はカッコイイ男だ。惚れ直した。


聖が出てくるたびに声援があがり、それに合わせ聖は俺たちの方をみては…

たぶん俺を見てだと思うが、ウインクをしていく。


デレェ~~。

「お兄ちゃん、ヨダレ…拭いた方がいいよ」

「はい…」

雅が冷たい視線で、ティシュをくれた。


最後はウエディングドレスで締めくくりだった。

女のモデル6人がカクテルドレスを着て出て並び、その真ん中から、長いベールを頭にのせ、白い純白の裾の長いウエディングドレスの女と薄いブルーのタキシードを着た男が出てくると、会場が大盛り上がりになった。

男のモデルは、さっきカフェで聖と肩を組んで去って行ったやつだというこがわかった。

女のモデルは…は…聖…だ…。


かわいすぎるぅぅぅぅぅ~~。

鼻、鼻血…。

雅がまたティシュをくれ、俺の後ろ首筋をトントンと叩いてくれた。

「あ、ありがとう…」


キャットウォークを歩いてくる聖に釘付けだ。

サエドンや健児たちの指笛でピーピーうるさいが、そんなノイズは俺の耳には入って

こない。

キャットウォークの先端まで来ると、男子モデルが聖をお姫様抱っこしクルリと回った。

聖はうれしそうに笑っている…

笑いながら俺に手を振った。


――何お姫様抱っこされて嬉しそうに笑ってんだよ!

   それに、その男!俺の聖に触るんじゃねーーーーー!

叫びたかった…

俺の手は膝の上で拳になっている。

ただのショーだとは、わかっているが、ものすごく相手の男が憎たらしい。

隣の雅に「まぁまぁ、お兄ちゃん!落ち着いて!聖はお仕事お仕事!」

と、肩をポンポンと叩かれ慰められた。


雅…おまえは本当に16歳なのか?

人生悟ったようなその人の心を読めるような落ち着き方。

末恐ろしい女だぜ。



ショーが終わり、3日日間の学祭を終えた聖は、学校の仲間と打ち上げで俺たちとは別行動になった。

俺たちはサエドンのおごりで居酒屋で飯を食ったが、俺は無口だ…



夜遅くに、聖が帰って来て俺が機嫌悪くブチブチと文句を言うと、

「あいつ、彼女いるから!それに俺の彼氏、城だって知ってるよ?カフェから出るとき

 教えたんだぁ」

「えっ?そうなの?そうなの?そうなのかぁ~~~」

俺のご機嫌は、ものの見事にすぐに直った。





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