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ブレイクタイム:雅の思い

……うげっ!!


日野くんと楽しいデートの最中、携帯がなった。

聖からだぁ…。

携帯に出るやいなや怒鳴られた。


あっ、バレてる。

日野君といることバレてる…。

とりあえず、切ってしまおう。


私は携帯を切り、電源をオフにした。

日野くんには適当にごまかしてデートを続けた。


でも、デートと言っても、まったくの私の片思いでいつも無理やり誘って遊びに連れて行ってもらっている感じ。

メールをしたり、電話で話したり、こうして時々遊びに行ったり、それだけだけど、他は何にもないけど、日野くんはジェントルマンでやさしい。


日野くんはいつもきれいなお姉さん達に囲まれているって、前に健児くんから聞いたことがある。

だから本当は、私みたいのを相手にしている余裕なんてないことくらい知ってる。


かっこいい日野くんが私とデートしてくれている理由…

それは、日野くんと城お兄ちゃんはお友達、そして日野君は聖が好きだった。

城お兄ちゃんと聖、この二人にとって私は大切な妹で、そんな妹を日野くんが

邪険にできないから…

わかってるんだ、本当は私みたいな子と一緒に歩くのが恥ずかしいってこと。

たまに手が触れたりすると、日野君はパッとポケットに手を突っ込み下を向いてしまう。

だから、少しだけ距離を置いて歩く。

嫌われたらやだもん…



この日も6時前に日野くんはマンションまで送ってくれた。

エントランスにお兄ちゃんが待っていた。

聖が怒っているらしい。

日野くんは心配してくれたけど、城お兄ちゃんが「大丈夫だから」と日野くんに言い、

私とお兄ちゃんは家に戻った。


すぐに聖が10階から上がって来て、私の顔を見るなり怒り、日野くんをけなし始めた。

挙句の果てには、

「おまえの彼氏なら、オレが見つけてやる!」

頑固おやじのようなことを言われた。

パパでさえ、そんなこと言わないのに…


聖と話す気にもなれなくなった。

聖は私の気持ちなんて何もわかってくれない。

男なのに昔から「かわいい」とか「きれい」とか言われつづけ、男の子からも女の子からも

モテモテで、妹の私はそんな聖が自慢でもあったけど悲しくもあった。


聖とママは完璧親子、私とパパは完璧親子、なんだか子連れ再婚した家族みたいな4人家族。

ママのDNAなんてちっとも私には入っていない…

みんなは「雅は普通にかわいい」と言ってくれたりするけど、絶対慰めにしか聞こえない…

「普通にかわいい」の意味もわかんないし。

聖と並んだ私は…超不細工な女の子だ…



いつもは冗談ぽく自分のコンプレックスを聖に言ったりしているんだけど、今日はなんだか

日野くんをけなす聖に思い切り腹が立って、負けずに言い返して、クッションを投げつけて

自分の部屋に走って逃げた。


聖が心配してくれていることはわかってる。

私が生まれた時、聖が「妹ができたぁ」って一番大喜びで、毎日毎日小さい手で

もっと小さい私の手を握ったり、頭を撫でたりしていたとママから聞いたことがある。

大きくなった今でも聖は私を大切にしてくれている。

私も聖のことは大好きなお兄ちゃんだ。


だけど、今日は別。

聖は本当の日野くんのやさしさを知らない。

日野くんのことを知らなすぎる…


泣きながら部屋に入った私は、赤いグローブを手にはめた。

聖が「女の子でも体を鍛えておけ!もし男に襲われたときに役立つ!」と言って小学生のころから聖に護身術やカンフー、ボクシングを身に付けさせられた。


私は思い切りサンドバックを殴った。

腹が立ったとき、嫌なことがあったとき、叩いて叩いて叩きまくって精神安定をする。

「叩け!叩け!叩けぇーーーー!」

と誰かの声が耳元で聞こえ、疲れてフラフラになり床に寝そべってしまうと、

また耳元で今度はダミ声の誰かが叫ぶ。

「立て!立つんだ!雅―――――!」

何かのマンガみたいだが、私の年代はそのマンガを知らない。



トントン…とドアノックの音が聞こえ、サンドバッグを殴っていた手を止めた。

聖のこもった声が、ドア越しから聞こえる。


ドアに近づき、私は黙ったまま、聖の話を聞いた。

聖が淋しそうな声で謝っている。

私はドアノブを開けようとしたが、手にはグローブがはめてある。

取ればいいのだろうけど、そんなことに頭が回らなかった。


掴めないドアノブを必死に掴もうとカチャカチャとしていると、急にドアが開き目の前に

聖が立っていた。

聖を見たとき、涙が溢れてきて私は大好きな兄・聖に抱きついて泣いた。



☆☆☆☆☆



そしてまた、時々日野くんを無理やり誘ってデートしている。

日野くんと会えば会うほど、切ない気持ちになっていくけど、ただのお友達でもいい、

日野くんと一緒にいると楽しいし…うれしい。


お友達のままでも…いい…。

だけど、叶うはずのない恋をしている自分に、時々泣きたくなる…。




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